(お部屋の和)




僕の恋心は。


あの日、玄関で智さんを見送ったまま





ラインが来ては舞い上がり


ときめくままに返事をして


だけど


こちらから近況を送る勇気はなく


既読から一日経ってしまうと


電池が切れたみたいに


ショボショボと


自信もなくて


上がったり下がったり


めんどくさい気持ちを持て余して・・・






桜はとうに散ってしまった・・・






草木は生い茂り


初夏の日差しにその緑を映しても


寂しい気持ちはブルーに染まったまま・・・





智さんの着物の襟あたり・・・


クンクンと匂いを嗅いでは


こっそりと・・・うっとりと・・・


あの日のキスを思い出していた。





こう・・・


腰を抱かれて・・・


ちょっと強引に・・・


だけど


優しく・・・


ちゅ・・・って・・・重なった・・・///





思い出すだけで


頬は紅く染まり


この胸はドキドキとうるさいのに





次の瞬間には


逢えない寂しさを連れてきた・・・





逢いたくて


逢いたくて


夢じゃないホンモノの智さんに・・・





僕・・・情緒不安定・・・





爺さん「和くん。元気ないねぇ」


婆さん「折角のゴールデンウィークだ。


京都にでも遊びに行っておいでよ。


父さん母さんも喜ぶだろう」




京都に、遊びに行く・・・///




和「だけど。


バイトを入れちゃってて・・・」


爺さん「問題ないぞ。


代わりにワシが入ってやろう!」


婆さん「爺さんでもよいか


女将さんに聞いてみようね」





松兄にはちょっと叱られたけれど。


ゴールデンウィーク。


休みをもらえた・・・///


爺ちゃん、婆ちゃん、感謝。🙏






高速バスが何故だか新幹線並に高くて。


往復、学割で新幹線を予約した。


全席指定席。


京都までほんの二時間の、贅沢。





ドキドキが


ドキドキを連れて来るから


駅弁どころじゃない。


新横浜を過ぎて・・・


名古屋を過ぎて・・・


次は、いよいよ京都。





智さんには、まだ言ってない。


僕の訪問を喜んでくれるだろうか・・・





烏丸通を一歩一歩、北に歩いて


五条のGallery OHNO*.。. .。.:*・゜゚・*へと


カランカランとあのカウベルを鳴らしたい。


そろそろお昼時。


お腹も空いてきた。


あのカレー・・・食べたい。




だけど。


久しぶりのその店の前には。





長い長い列が出来ていて・・・





「マスターに今日こそ告白する!」





見事に綺麗な女性ばかり・・・


京都の女の人って


どうして綺麗なのかな?


皆、鏡を出して


自分のことを整えている・・・


クルンとカールした髪に


綺麗に塗られた爪💅


可愛いリップ👄


白やピンクのサンダルに


淡いブルーのスカートが・・・




「マスターはダメよ」




その中でも一番キラキラの人が


自信たっぷりにそう言った。




「マスターはダメよ」





それ・・・どういう意味・・・?


あなたの立ち位置・・・どこ・・・?




一番後ろに並ぼうとした僕に


その親切なお姉さんが言った。




「限定50食だから。ここまで、なの。


もうお終いでーす。ごめんなさいね」




「あ、僕・・・え、と。はい・・・」





預かっていた着物を


Galleryの入り口傍の宅配ボックスに


そっと入れて・・・


ダイヤルを回した。


番号は・・・0038・・・で、いいかな。


その番号だけをラインで送って


僕は嵐山の両親のところへ向かった。





戦わずして


負けた気持ちなのは。


・・・心のどこかで。


自分よりも


あの女性達の方が


智さんにいつでも会えるって事実に


嫉妬したから・・・





さっきまでのドキドキは・・・


何処かへ行っちゃって・・・


モヤモヤが・・・この胸をくすぶる・・・





ゴールデンウィーク・・・





始まったばかりなのに・・・


勇気が出ないまま・・・


ふにゃちんのまま・・・





「マスターはダメです。


その人は、ダメです。


その人は・・・僕の・・・」




・・・まだ。


僕の、じゃない・・・?


キス・・・一回じゃ、まだ・・・ダメ?


それじゃあ、何回してもらったら


僕の・・・智さんになる・・・?





胸に澱んだ想いは


声に出来ないまま・・・


溜め息にそっと包んで


ブルーな気持ちのまま・・・





♬淡いブルーのスカートが


夕暮れの丘にたなびく・・・






この続きは、確か・・・





♬恋はいつか終わるよと・・・💧





何故だか。


智さんの声で脳内再生される。





逢いたくて


逢いたくて




京都まで来たというのに・・・


僕・・・何をしているんだろう・・・





まだまだ恋に初心者のまま


次の一手をどう打てば良いか


わからないまま・・・




それでも


ため息を吐いた次の瞬間には


やっぱり・・・


智さんを恋しく想っていた・・・