(愛の釣り人)




東京タワーの真横を通り


地下鉄の駅に近いところで


連れ立ってバスを降りた。





私人系YouTuber「君、ちょっと。


撮影に協力してくれないかな?」




なんだ?こいつ。


撮影って何だ?


俺の和に、厚かましいぞ?





智「知り合い?」


和「ううん。知らない人」





だよね。





智「失礼」





俺のに、馴れ馴れしく話しかけんな。


キッと睨みを効かせて


地下鉄の駅へ降りようとした時


背後からパトカーの音が聞こえてきた。





ほらな。


お前ら、揃ってブタ箱行きだ。


お上はちゃーんと見てるんだ。


そう思いながら


和の手をくぃ、と引いた時。





お巡りさん「君、ちょっと」





・・・え?


まさかの、こっち?


なんで?





お巡りさん「職業は?」





職務質問ってやつか。


こういう時。


黙秘・・・とかしたら


余計に面倒なのかな・・・?


何も悪いことをしていないんだ。


まだ・・・キスとハグくらいしか・・・


それも。


悪いことじゃないぞ。


堂々としていよう。





智「私は、こういうものです」





ギャラリーオオノの名刺を出す。


ムっとしているのを隠して


穏やかにポーカーフェイス。





お巡りさん「喫茶、画廊の・・・個人経営。


住所・・・京都府京都市・・・


何か公的な身分証明書をお持ちですか?


あー、マイナカード、ね。


番号を控えさせていただきますよ。


こちらへは、ご旅行ですか?」





智「はぁ。まぁ・・・」





お巡りさんの不躾な目線は


俺の和に移った。


舐め回すみたいに、ジロジロ見てる。


・・・ムカつく。






お巡りさん「・・・君は。


その制服。この辺の、高校生だね。


生徒手帳、拝見。


・・・私立嵐影高校三年、と。


まだ学校のある時間だろう?」




どこまでも上から、なんだな。




和「あの、僕・・・」




お巡りさん「青少年健全育成条例に基き


ご家庭あるいは学校に連絡します」




和「学校は、早退してきました。


担任は、この先生です」




お巡りさん「確認を取ります」





駅前に停めたパトカーを


さっきのYouTuberがずっと撮影するのを


注意もしないで


俺らばっかり不当に拘束をして


失礼な質問もして


なんなんだよ💢と。


しかも俺の和を変な目で見んなや、と。


キレそうになりながらも・・・





ここでキレたら


公務執行妨害かなんかで


俺、逮捕されるかもしれないし


そうしたら和を無事に送れないし・・・





イライラしながらも我慢をしていた。





その時。





和「・・・ごめんね・・・」




俺の太ももをすーっと


可愛い手が優しく撫でた。




智「・・・いや・・・」




不思議だ。


なんだ、これ。


イライラがおさまっていく。


お前が悪いんじゃ、ねーし。





お巡りさん📱「高校3年生は


自由登校なんですか。あー、はい。


あー、熱っぽくて、早退中。


京都からの旅行者と一緒に居ましてね。


・・・あ、そうですか。


学校でも把握されている、と。


あー、はい。


それは、失礼しました」





別の婦警さんが来て。





婦警さん「ごめんなさいね。


パパ活の高校生を保護する目的で


ずっと駅前をパトロールしているの」





俺たちは解放されたけれど。




なんでさ。


普通に下校途中の高校生が拘束されて


あの無礼なYouTuberは


なんのお咎めもなしなんだ?と


疑問が残りながらも・・・





和「僕ん家、こっち」





僕ん家、こっち・・・の誘惑に


逆らえる訳もなく。


俺は久しぶりの東京で


この三十分後には


まさかの総武線に乗っていた。





それにしても。


パパ活・・・か・・・


それに間違えられた、ってことか・・・