(お部屋の和)




五条から路地裏に入ったところで


人力車が止まった。


細い通路の奥に・・・


古民家の入り口が見えていた。




Gallery〜OHNO*・*・:*・゜゚・*




智「珈琲、飲んでいく?」


ドMのJ!!「どうしよっかな・・・」


智「翔くんに店番させてるの」


ドMのJ!「それじゃ、挨拶に寄るかな。


大文字の送り火以来だから」





人力車のお代を払ってくれているのを


どうにも気まずくて


ぺこり、と頭を下げ




和「すみません。あの・・・


人力車のお金・・・」


智「ふふふ。


モデルになってくれるんでしょ?」


和「あ、は、はいっ」




僕は再び抱き上げられた。


カランカランと


入り口のカウベルが心地良い音を立てて


それからJAZZが耳に流れてきて


珈琲の良い香りが鼻をくすぐった。


壁には落ち着いた絵画が並んでいて


京都の街をスケッチしたものは


葉書サイズに印刷もされて


それは僕でも買えそうな価格だった。






恋文の翔!「おかえりなさい。


お?お揃いで。いらっしゃい」


ドMのJ!「翔さん!こんにちは」


智「どう?少しは進んだ?」


恋文の翔!「いや。それが全然なのよ。


丸善に、新刊チェックに行かないと。


ここ、座る?はじめまして、だよね?」


和「あ、ありがとうございます」


智「珈琲?紅茶?何が好き?」


和「こ、珈琲を・・・」


ドMのJ!「カレーもあるよ?」




ソファーはとてもクッションが効いて


足元のラグは毛足が長く


お品書き、と達筆で書かれたノートには


珈琲豆、紅茶の葉、それに・・・


キーマカレー・・・とあった。





恋文の翔!「カレー、美味しいよ」





喫茶室の一角を陣取って


パソコンをカタカタ言わせているその人は


ぱっちりお目目に撫で肩の


優しそうなお兄さんだった。


僕のことをじーっと見つめて


それからメモを取っている。


どうやら小説の構想を練っているようだ。




恋文の翔!「舞妓さんかぁ。


たしか、すっごく厳しいんだよね?


何処へ行くにも男衆さん付いててさ」




その人は、ブツブツ言いながら


カタカタ打ち込んで




恋文の翔!「あ、気にしないでね。


執筆中にブツブツ言うの、クセなんだ」




ニコニコ笑ってた。




僕・・・舞妓さんの恰好してるけど


ただの高校生で・・・


しかも男子で・・・


それを説明するべきかどうか


悩んでいる間にカレーが届いた。




みんな揃って「いただきます」をして





・・・美味し・・・///





そのカレーを食べながら


それぞれ自己紹介をした。




小説家の翔さん


夜はホストで昼人力車引きの潤さん


それに・・・


ここギャラリーオオノのオーナー智さん


僕は東京の高校生です、と挨拶した。




恋文の翔!「修学旅行中?」


和「はい」


ドMのJ!「ディープな京都へようこそ」





ディープ、なのか・・・





珈琲も抜群に美味しくて


優しい時間が流れていて


このままずっとここに居たい・・・


なんて思ってしまった。






やがて出勤時間だという潤さんが


翔さんと連れ立って出て行くのを見送ると


智さんは入り口のシャッターを


ガラガラと閉めてしまった。


急に店内は薄暗くなり


そして曲調までも変わる・・・








智「本当に・・・描いていいの?」


和「は、はい」




ガバっとシャツを脱ぐから


ドキドキした。


そうか・・・


汚れるから・・・着替えるのか・・・





見事に割れたシックスパック。


僕のポニョ腹とは大違い。




シックで大人な・・・


アルゼンチンタンゴに乗せて・・・





まるで踊るみたいに・・・




筆が


シャッシャと滑り出す。




ギラリ、と光る


その黒い瞳に見つめられて・・・


息をするのが・・・精一杯




僕の瞳は潤みはじめ・・・


身体が熱く・・・熱く・・・




ナニ、コレ・・・





熱っていくのを止められない・・・