(雅)



俺の友達。


高二の修学旅行からちょっと変なの。





聞いてくれる?





そいつとは、同じ帰宅部で。


毎朝同じ総武線に乗って。


帰りもだいたい同じ黄色い電車で。


とにかくゲームしかしないから。


色は真っ白。


なんでも省エネ。


「お部屋の和」ってあだ名を付けたの、俺。




春休みが終わって今日から揃って高三生。


なんの腐れ縁か。


また同じクラスだったんだよ。




雅「進路希望、出した?」


和「うん」




てっきり。


同じようなところを書いてると思ってた。


都内の大学か、専門学校。




それなのに・・・




雅「え?京都?」


和「うん」





わざわざ、京都行くの?


東京に、いっぱい学校あるのに・・・?


お前・・・


真性の、出不精なのに・・・




京都なんて。


高二の秋の修学旅行で


初めて行ったところじゃん・・・




*ララァさんのお写真です*




(和)




桜が咲いた。


やっと・・・




和「今日も帰り、寄るとこあるから」


雅「ふーん」


和「じゃあね」





ひらひらと


手を振って。


熱血漢な幼馴染にバイバイして。


総武線じゃない方へ進んだ。


メトロ東西線に乗って


一駅


二駅・・・





神楽坂、で。


降りた。





和「おはようございます」


女将「おはようさんです」




暖簾をくぐって


店の奥で着替える。


手をよく洗って。




女将「お父さん、この春から 


京都の総料理長になったらしいね?」


和「そうなんです」


女将「一緒に行かなくて、よかったの?」


和「高校、あと一年あるんで」


女将「ここにずっと居てもいいのよ?」


和「・・・・・」


女将「ごめんごめん。困らせちゃったね」





バイト先。


この日本料理の店には。


父さんのお弟子さんもいる。




板前の、松兄だ。




松兄「和くん。


菜の花からお願い」


和「はい」




桜懐石の、一品。


菜の花のおひたしを下拵え。




松兄「お袋さんも、京都?」


和「はい」


松兄「じゃあ、こっちにひとり?」


和「いえ。爺ちゃん家があるんで」


松兄「・・・そっか。


なんか困ったことあったらさ。


なんでも言えよ」


和「はい」




ありがとうございます。




京都へ行くの・・・


もう、迷いはなくなったんで。


平気です。





松兄「今日はちょっと。


でっかいのが来てるんだ」





大きな発泡スチロールが届いてる。


かなりの重さだ。


なんの、魚かな・・・




松兄「アイツ。


どんどん腕をあげてくる」


和「アイツ・・・ですか?」




誰だろう?




松兄「俺の、後輩。


人呼んで、愛の釣り人」






愛の・・・釣り人・・・?


まさかそれが。


同じ人だとは思いもせずに・・・


僕は桜懐石の下拵えを黙々と手伝った。




桜はもう・・・満開だよ・・・






☆*:.。. o(≧登場人物≦)o .。.:*☆





お部屋の和・・・高校生(板前修行中)

両親は日本料理の先生をするほどの料理人


愛の釣り人・・・京都在住、画家


熱血の相葉!!・・・高校生


恋文の翔!・・・京都在住の作家

代表作『南半球の熱いふたり』


ドMのJ!!・・・京都在住のホスト


松兄・・・神楽坂の板前