(風磨)
まだ二月なのに
春一番が派手に吹き荒れる。
高一のバレンタインデーは
僕の・・・
失恋記念日となった・・・
のんのんののん
のんのんののん
のんののんのん のんののんのん
今日は僕の・・・失恋記念日です・・・
「それにしても、なんか甘い」
「バレンタインでくっついたカップル
多過ぎて困るぅ」
「四月まで続いてからマウント取れって」
あー、はいはい。
幸せそうで、何より。
バレンタイン直前になって
チョコレート校内持ち込み禁止令が出た。
だけど皆、チョコレートを持ってきてた。
もちろん。
僕も。
GODIVAのゴールドな包み紙に
黒のリボンを掛けてもらって持ってきた。
和先生に届けたくて。
僕の恋心を・・・届けたくて。
高校の正門前には
二月十四日の朝、長蛇の列が出来た。
道行く人「合格発表？」
違いますよ。
告白場所になっているんです。
まるで『学校へ行こう』の屋上みたいに。
そして大量のチョコレートの置き場問題。
校内持ち込み禁止だけど
車で来ている先生方の愛車が
一時保管場所となった。
もしかしたら。
古典の先生は、ヤバい人かもしれない。
あのエンブレムを傷付けたら
凄い額の賠償金になるぞ、と
父親のボーナス一回じゃ済まないぞ、と
僕ら生徒はビビっていた。
その愛車ジャガーには
マジックで「1A菊池」と書かれた紙袋。
一応。
僕も。
複数の女子からチョコレートもらえた。
「義理です」
これは、朝日さんから。
「愛してる」
「風磨♡」
これは、よしこさん&まひるさんから。
受け取って大丈夫かな・・・と思いつつ
正門前でどどどん！と渡されてしまって
風磨「ごめんなさいっ。
僕、好きな人がいます！！！」
そう大声でカミングアウトした。
シーンとなった朝の登校時間。
正門で荷物検査をしていた和先生に
ドキドキしながら近付くと
和先生「ごめんなさいっ。
僕・・・もう心に決めたパートナーが
いるんです！！！」
和先生も。
ごめんなさいをした・・・
風磨「その人・・・
どんな人ですか？」
半泣きだけど、爽やかに聞いてみる。
まるで形態記憶のような笑顔のままに。
和先生「その人は・・・///」
頬を紅く染めて
ビックリするほどの可愛い顔で
パートナーのことを思い浮かべる和先生。
ピンクのハートまで飛んで見える。
幸せそうに含羞む(はにかむ)笑顔が
これほどまでに・・・残酷だとは・・・
和先生「優しくて・・・///
さりげなくて・・・温かくて・・・///
男前で・・・力持ちで・・・///
どんな時でも味方になってくれて・・・
どこにでもいそうなんだけど・・・
もうその人以外には考えられない・・・
僕の・・・唯一の・・・人・・・///」
もう、いいです。
もう、十分です。
・・・聞くんじゃ、なかった。
この胸の痛み・・・半端ねえ・・・
ちょっと音の外れた曲でも聴いて
ポッカリ空いてしまったこの胸の
和先生専用のスペースを
なんとかしようとするけれど・・・
好きだったから・・・
今でも大好きだから・・・
そんな簡単に次の恋なんて
考えられないよ・・・
恋って苦い。
この胸の痛みが
別のものに代わるなら・・・
行き場を失った恋心に
せめて・・・優しい失恋ソングを・・・
なんて甘ったれたことを思っていた。
事務長👓「菊池くん。
ちょっと、いいですか？」
櫻井先生のホームルームの時間に
教室に現れたのは事務長先生。
リボンのついたチョコレートの包みを
勝ち誇ったように教壇の上に置いた。
つくづくツイテナイ。
和先生に失恋した上に
みんなの前で晒されるチョコレート。
せめて。
贈ってくれた子が傷付きませんように。
風磨「はい」
なんでも無い風を装って
スッと立ち上がった。
憂鬱ついでだ。
僕が代わりに。
ちゃんと、叱られてやるから・・・
失恋の痛みに比べたら
こんなの、どうってことないよ・・・
今なら。
小説でも詩でも
なんでも書けそうなほどに
メランコリックだ・・・
風磨が男を上げるラストまで
あと一話。
最後までよろしくお願いします♡
そして甘い大宮ちゃんのバレンタイン💘
和一話&智一話の短編読切です。↓
ある御方とのコラボになっています(^^)
サトシックで大宮担、スーパーの大宮さん
♬バレンタインデー・キッス😘なお話です。
こちらもよろしくお願いします🙇