side N





祝杯をかわして


お料理が進む。


その一品一品に・・・


親の愛情を感じる。


初めはかしこまっていた幼い弟も


飽きて自由にちょこまかし始めた頃


うちの旅館の玄関先に


全員で移動した。





出席してくださった皆さんでお餅つき。


つきたての餅はその場で振る舞われた。


昼前に「のし餅」にしておいた分と


餅米で炊いたお赤飯は


引出菓子「おいり」と一緒に母親が配った。





お宮でいただいたオリーブの苗木には


出席してくださった皆さんが


帰り際、少しずつ土を被せてくれた。


二本が仲良く並んでいる。


なんだか・・・


照れくさい気持ちのまま


帰っていく親戚連中を見送った。





「かじゅは、いかないよね?」





幼い弟はあれだけ賑やかだったのに


親戚の人たちが帰ってしまって


急に寂しくなったのか




「かじゅ」「さとち」


と、僕らに甘えたかと思ったら


遠く南の島から駆けつけてくれた友人に


「あーばしゃん」


「しょーちゃん」


「じゅんくっ」


と、妙に懐いて楽しそうにしていた。





僕は片付けを手伝おうとしたけれど


旅館の従業員さん達が


「ご両親のお相手を」


と言ってくださり


この日ばかりは素直にお言葉に甘えた。


明日。


智さんと旅立つ。


だから家族の時間を大切にしなさい


ということだ。






このまま旅館に泊まる南の島のお三方は


島の宿泊施設について


señoritaのピクルスについて


うちの父さん母さんと意気投合していた。


どうやら瀬戸内二宮旅館と


業務提携することになり


リゾート型宿泊施設でありながら


大浴場を併設するなど


人々が求めるリラクゼーションを


追求していくことで


大いに盛り上がっていた。





和父「自分の幸せを大切にしなさい。


それがやがてみんなの幸せになる」




酒に酔って赤い顔をした父親は


この旅館を継げとは言わなかったけれど


いずれ継いで欲しくて


大阪の料理専門学校に行かせてくれたこと。


厳しい顔を見せて


僕を戦力外にしていたのも


自立に向けて


「急いてはことを為損じる」という


父親らしい考えがあってのこと。


そういうの、ちゃんと分かっていた。





家族の縁が切れる訳じゃない。


この先もずっと親子だ。





和父「和を、どうぞ宜しくお願いします」


智父「智を、どうぞ宜しくお願いします」





両家の酒盛りは延々と続いた。






ふたりきりになれたのは


智さんのご両親との「はじめまして」を


終えてから。


大野家には旅館の特別階をあてがわれた。





「可愛い可愛い」といっぱい褒められて


淡路の玉ねぎでseñoritaのピクルスを


なんて盛り上がって


僕はホッとして・・・


本当にホッとして・・・


涙が再びポロポロ溢れてた。





智母「サプライズにしてごめんなさいね」


智父「今の若者は簡単に済ませるだろう?」


智母「結婚式は私たち親の夢。


やりたかったの。


というか・・・


あなた達の幸せを見たかったの」


智父「気持ちよく受け取ってくれて


ありがとう」





智さんと一緒になれるだけで嬉しい。


僕を智さんのパートナーと


認めてくれるだけで嬉しい。


祝ってもらえるのは、もっと嬉しい。






和「ありがとうございます」




智「いい場面・・・なんだけどさ」





ずっと僕を支えてくれていた智さんが


大野家だけになると途端に自由になった。





智「和も疲れただろうから


もう休んでもいいかな?


いいよな?


じゃっ。おやすみ」





そう言うや


僕をヒョイと抱き上げた。






ここでスルの・・・?


僕の実家だよ?


隣の特別室にはお父さんお母さんいるよ?


と、ドキドキしながら。





僕もふたりきりになりたかった///





花婿の新床は


綺麗な花で溢れていた。


良い香りに包まれたシーツの上に。


バスタオルを広げて用心した。


お布団を汚さないようにしなくちゃ。


抱かれる気まんまんで


僕はいそいそ準備した。





智「すげえ部屋だな。


内風呂も付いてる」


和「ほんとだね。


いつもはこんな部屋 


僕には無縁だけどね」





*ララァさんのお写真です*





ふたりで贅沢なお湯に浸かる。





智「やっと・・・ふたりきりになれた」


和「・・・ん・・・」





見つめあっただけ。




それだけで




Z・・・La La La・・・




トクントクンと心臓がうるさくなる。




指の先が触れ合っただけ。




それだけで


Z・・・La La La・・・





どうしようもなくこの身が疼く。




熱い血汐があなたを求めて


駆け巡る・・・






次回アメ限です。