side N





智さんの帰りを待つ間に年が明けた。




島のお正月に


ちょっとお煮しめを作ってみた。




翔「和くん!美味いよ」


雅「黒豆とか小豆とか安くであるよ。


年末、ちょっと仕入れ過ぎたんだ」


翔「食材なんでも持ってきてよ。


買い取るからさ」


雅「お餅も?魚卵も?いいの?」


翔「うんうん。


だって。こんなに美味くなるんだぜ」





そうして届けられた食材を


ひとつひとつ丁寧に調理した。




潤「なんでも作れるんだなぁ」


和「お節をひと月作り続けたことがあって」


潤「ひと月?」


和「うん。


出来たものを小分けにして冷凍するんだ。


黒豆も栗きんとんもお煮しめも。


田作り、昆布巻、魚卵の醤油漬、卵焼き」


潤「へーーーー」




翔さんの店で


お正月料理が食べられるという評判は


島民だけでなく旅行者にも伝わり


それがseñoritaのピクルスと結び付いて


食べに来てくれる人が絶えず


冷凍で送って欲しいという人もいて


それこそ全国から注文をもらって


ついに。




翔「もう、さ。


このビジネス、行けるとこまで行こうよ」


雅「行けるとこまでって、どこ?」


翔「うーん。そうだな・・・


俺らの中にある可能性の限り」


潤「面白そう。俺も乗っかる」


雅「置いていかないでよ。


もちろん俺も、一緒に行くよ!」


翔「和くんの中にあるもの、教えて」


和「僕の中にあるもの・・・ですか?」





それで考えた。


自分という人間の資質について。




和「調理師の免許を持っています。


それから・・・」


翔「うんうん」


和「実家が料理旅館をやっているので


それっぽいことなら・・・


子どもの頃からずっと見て育ったから」


翔「潤!裏のリゾートマンション!」


潤「俺の実家の経営なの。


俺が跡継ぎだから好きに出来るよ」


雅「ってことは」


潤「もうホテルにしちゃう?」


翔「俺のバーは上層階がいいな。


こう、落ち着いた感じで」


潤「結婚式もできるようなのにすれば


俺の美容室も大繁盛!」


雅「南の島でウエディングだね!」


翔「あ!それ!いいね」


潤「結婚式の料理、作れる?」


和「やってみます!」





こうして。


島野菜のピクルスから


お節料理


そして宴会料理へと


どんどん広がって大きくなり


智さんを待つ間


僕は翔さん、相葉さん、潤くんと


毎日をワクワクしながら過ごしていた。





・・・だけど。




翔「島の観光課さんが


俺らの顔写真、載せたいってさ」


和「それは・・・ちょっと・・・」




どうしてデパートの人も


観光課の人も。


顔写真を載せたがるんだろ・・・


味で勝負じゃいけないの?


いつまでも。


「雄一」を探しているのではないか


という恐れがつきまとっていて


写真を載せることに抵抗があった。




雅「人の顔って安心するんだろうな」


和「僕がここにいると知られたくなくて」


潤「それなら。


señoritaに変身しちゃえば?」


雅「いいね。絶対バレないよ」


翔「うーん・・・いや、ちょっと待って。


女装させないでって、言われたんだ」





・・・女装は。


智さんに「やっちゃダメ」って言われた。






潤「でもさ。


こんなにワクワクするプロジェクト


成功させたいもんな」





それは、そう。


そうなんだけど・・・




うーん・・・




自分のありのままを


表に出せないって・・・


なんというか・・・寂しいな。




それが。


自分を守るためであっても。





寂しいな・・・