(和)


颯と詩をお願いして


私達は明け方に東京を出発した。


こんな早朝でも働く人達の車やトラックが


東京の街を出入りする。





智母「運転、気をつけて」


智父「次は蓮を連れてきて」


ペコリと頭を下げて


角を曲がるまで手を振った。


工場を開けないといけないから


渋滞に遭いたくなかった。


もちろん時間になれば母さんが開ける。


だけどそういうことじゃ、ない。


智「最近さ。ちょっと治安が悪くなっているような気がするんだ」


和「工場のまわり?」


智「それで防犯カメラを街灯ごとに取り付けようと、お母さんが自治会や商工会に提案してくれてる」


それは、大賛成だ。


うちの子ども達も工場には出入りするし


うちの工場で働いてくれる若い人達や


ご近所さまの安心・安全に繋がる。







無事に早めに到着して先に家に送ってくれた。


和「暑いから、気をつけて」


智「ん。いってきます」


いつもは賑やかな家にひとり。


洗濯をして掃除をして


冷蔵庫の中をちょっと整理すると


・・・


・・・・・


自由時間だ。





それは新鮮な時だった。


智は夕方まで帰って来ない。


颯と詩は夫の実家に


蓮は臨海学校に


それぞれお世話になっていて・・・


携帯に届く子ども達の様子に安心すると


なんだか解放感を味わった。


だけどいつもと違うことって


あまり思い付かなかった。






段ボールの中の通信添削を


一枚一枚片付けはじめた。


蓮が医学部に行くなら・・・お金がいる。


智は充分に稼いでくれるけれど


自分も出来ることをしたかった。


集中して段ボールいっぱいの添削を終えると


身体を横にして目を閉じた。


自由時間だから・・・


ちょっとお昼寝を・・・


*ララァさんのお写真です*





リビングで休んだ筈が


目覚めた時には寝室に運ばれていた。


薄いタオルケットを掛けられて


エアコンは除湿になっていた。


・・・しまった。


快適過ぎて寝過ごした。


洗濯物を取り込まなきゃ。


そう思って起き上がると・・・


智「あ。休んでて」


夫が洗濯物を取り込んで


夕飯も用意してくれていた。


智「ごめん。カレーでもいい?」


和「ありがとう」


智「しかもさ。分量、5人分でやっちった」


・・・わぉ。


和「ありがとう」


智「ま、いいか。明日もお前、休めるから」


明日は3食カレー食べるよ。


智「いつも有難う」


・・・


・・・・・


自分もお礼を言いたいのに


照れてしまって言えなかった。


ふたりきりの夕食。


ふたりきりの夜。


この甘い時間はいつまで続くのかな・・・


智の両親は今も仲良しだから


まだまだ仲良くいられるかな・・・


智に大切にしてもらって


変わらず愛してもらって


・・・幸せだった・・・








遅くなりました。