(雅紀)
幕張本郷からJRに乗って東京まで出てきた。
有楽町の駅で降りて銀座の街を歩く。
劇場やホテル、有名デパートが並び
皇居にも東京駅にも近い。
ジーパンにスニーカーを履いた自分の姿が
綺麗に磨かれたガラスに写り
場違いなところに来てしまったと
ちょっと落ち着かなかった。
和くんが襲われたらしい料亭大野庵の前には
多くのカメラが来ていた。
正面玄関というか入り口が分からなくて
料理人の俺はお勝手からピンポンを押した。
板前「はい。・・・なんでしょう?」
相葉「あ、すみません。僕、相葉といいます。こちらに二宮さんはいらっしゃいますか?」
板前「・・・少し・・・お待ちください」
そのまま5分くらい待たされた。
お勝手が開いて出てきた人に見覚えがあった。
🌼もえこさんの絵です💛
翔「・・・こんにちは」
🎧智母「櫻井。中にお通しして」
その人はインカムマイクで何かやりとりして
翔「はい。・・・どうぞ・・・」
お勝手から靴のまま入ろうとすると
綺麗なスリッパが出されて慌てて履き替えた。
すげー店だ。いい香りがする。
座敷に通されて、お茶をいただいた。
襖が静かにスーッと開いて
和服を着たマダムが綺麗にお辞儀をしたから
慌てて姿勢を正して頭を下げた。
そのすぐ後ろからさっきの黒スーツの人が
入ってきた。
智母「和さんはうちの大事な従業員です。
どのような御用件でしょうか」
相葉「急にお邪魔してすみません。
僕は、和くんの幼馴染で相葉といいます。
出来れば和くんに会いたいのですが」
智母「和さんはちょっと怪我をして・・・
今はこちらにはおりません」
相葉「大宮の方におられるのですか?」
黒スーツの人の目が光った。
翔「・・・何処まで知ってる?」
智母「櫻井。黙って」
三人しか居ない座敷には緊張が走り
自分はなんらかの失礼を働いてしまった
と、分かった。
相葉「いえ。何も知りません。店に来てくださった時の黒いワゴンが、大宮ナンバーでしたので、ただそれだけです。失礼をお詫びします」
智母「・・・店をなさっているの?」
相葉「はい。中華屋をしています」
翔「昨日、智さんと潤と伺いました」
智母「・・・そう。折角だから、お昼を食べていってちょうだい」
黒スーツの人が奥へ下がった。
智母「貴方、和さんの、幼馴染と仰ったわね」
相葉「はい。連絡が取れなくて心配していたんです。和くんがアメリカへ行って・・・しばらくして音信不通になって・・・もうそれから二年近くになります。昨日ニュースで和くんが怪我をしたと知って、たまらなくなって」
智母「和さんを心配してくださったのね」
相葉「はい」
智母「お昼をこちらで召し上がってちょうだい。それからご案内します」
そのマダムは一度下がって、それから盆に凄いご馳走をのせてきた。
払えるかな・・・カードなら・・・
俺はもじもじして様子を見ていると
智母「お代は頂戴しないのでね」
え?いいんですか?
相葉「いただきます」
うめ。
お造り、お浸し、サラダ、茶碗蒸し
「失礼します」
襖が再び開いて、またお盆がきた。
さっきのお盆が下げられて、給仕してくれる。
焼き魚、野菜の炊き合わせ、天麩羅
ヤバイ。ヤバすぎる。一万円くらい?
どれも熱々だ。美味い。
「失礼します」
え!👀!!まだ来るの?
すげー。どれも上品な分量だから
まだいける。
釜で炊いたおこわ。香のもの。鯛汁。
それから温かいお茶。
おおお。マスクメロン。
ご無沙汰しております。🍈
一万円じゃ、足りないな・・・
いくらするんだろ。
和くん、こんなところで働いているんだ・・
智母「お食事はお済みですか?」
相葉「はい。ご馳走さまでした」
俺はぺこぺこ頭を下げた。
お勝手にはタクシーが到着していて
そのマダムと二人で和くんが入院している
病院へ向かった。
俺の知らない世界だ・・・
華麗なる一族だ・・・