(智)

イベント会場は多くの人で溢れていた。

和也のプレゼンの番になり

俺は話し掛けてくる人に黙礼をして

カラダを和也のプレゼンに向けた。

言葉を慎重に選びながら

ニューモデルの説明をしている。

部長「若手の中でも二宮は将来が楽しみだ」

智「新人の時からよく出来ました」

部長「二人は、、、そうか。二宮の新人研修のコーチ役は大野だったな」

智「・・・はい・・・」

プレゼンが無事に終わり、労いの言葉を掛けてやろうとして

俺は色んな人に捕まってしまった。

和也は和也で、直属の上長・・・課長は

櫻井翔くん、俺の同期だ。

翔くんに肩を抱かれていた。

他にも、長身の爽やかなイケメン。

それから眉毛の濃いモデルみたいなヤツ。

髪をくしゃくしゃに撫でられていた。

・・・見たくない・・・

会えない日々にも、例の交換日記には

毎日のように俺へのメッセージがあった。

その全てが愛おしくて

俺はその通知だけはいつでもONにしてあった。

俺が大勢の人と歓談している間に

和也を見失った。

携帯📱が震える。

・・・和也かな・・・

俺は周りの人を避けて、例のページを開いた。

💛📧・・・寂しい・・・

トクントクン トクントクン

脈が耳の鼓膜を破りそうだ。

「お前、どこ?」打ち込もうとして

💚📧僕でよかったら聞きますよ

・・・誰だ?

無視して書き込もうとして送信ボタンを

押すと「エラーが生じました」

・・・え・・・?

俺のメッセージは宙に浮いてしまった。

和也がもとのメッセージを消したんだ。

綺麗な女性「大野さん、この後って」

智「失礼」

今、俺に話し掛けないで。

俺は煙草を吸いに外へ出た。

冷たい風が頬をさす。

・・・和也・・・

まだ新人だったお前を

愛知県の大きなカーメーカーに仕事で

連れて行った時のことを

俺は思い出していた・・・


🌼もえこさんの絵です💛


まだ大学を出たばかりだというのに

聡明で、もの静かで

和也「僕はひとりが好きなんです」

と言ってはランチも食堂の隅っこで

ひとりで食うようなヤツだった。

俺は放っておけなかった。

ランチどころか、ちょっとの休憩でも

飲みの席でも、会議でも出張でも

智「俺のすることは全て覚えろ」

そう言って、同伴させた。

素直になんでも言うことを聞いて

可愛くて

いつだって和也を気にしていた。

愛知県までは新幹線でほんの1時間半。

智「おい、駅弁を買ってやる」

和也「僕はおにぎりで大丈夫です」

俺はおにぎりとお茶を二人分買って

智「俺も同じもん食うからな」

お前は可笑しそうにクスクス笑った。

仕事を終えて、名古屋のホテルに行くと

シングル二部屋が手違いでツイン一部屋に

なっていた。

和也「僕、静かにしてますね」

そう言ったくせに

何時間も何時間もお喋りをした。

楽しくて俺も笑った。

やがて眠ってしまった和也が・・・

月明かりに浮かびあがった和也が・・・

あまりに麗しくて・・・

俺はこっそりとキスをしてしまい

酷い罪悪感に囚われて

それからすぐに

逃げるようにして

デトロイトへ飛んだ。






いつか秒針のあう頃 4は日付が変わる頃にUPします。

その前にMステですね😊