大学を卒業して和の実家の家業を継いだ俺は

人生の次の目標に向かっていた。

茨城県のユニバーサルデザイン推進委員の

方々と、インフラの改善事業を進めるに

あたり、工場の廃材が生産性を帯びる

リユースとリディースの両面から資源を

リサイクルすることの一助を担えていた。

世間知らずの坊ちゃんと笑われたが

俺のベビーカー補助道路のアイデアは

無償で提供した。

その代わりに、お金を払って廃棄していた

うちの工場の廃材に、経済的価値が生まれた。

蓮や颯の時代がやってくる。

子どもは未来からやってきたと思うこの頃

だった。我が子達の為にも未来に続く商売を

心掛けていた。誰にも何も言わせない。

新しい土地でやっていくには、まず信用を

勝ち取らねばならなかった。



和の産後のひだちが良いことから

ゴールデン・ウィーク明けには家族四人

鹿島に戻っていた。

蓮の幼稚園送迎だけをお母さんにお願い

して、その他の育児は和が中心にやった。

蓮は急に言葉も増え、読む本や遊びも

変わってきていた。

身体を使う遊びも好きで、机によじ登っては

ぴょーんと飛んだり、じっとしていなかった。

颯は蓮がいる間はおとなしいくせに

蓮が幼稚園へ行ってしまうと

アイアイ訴えて、抱っこをせがんだ。

和のお父さんの飲み薬は、朝に服用する5種類

昼の3種類、夜の6種類と複雑さを極めていた。

小さなものが常にリビングにあり、

まだ分からない子の誤飲など、気を付けねば

ならないことが山とあった。

子育てに於いて、しばしば和は母親と対立した。

和は自分の親だと容赦なく噛みつく。

だけど和を育ててくれた大事な人だ。

人生の先で笑い合う日も必ず来る。

そう思って二人が朝から口を利かなくても

俺は関係を壊さないように気遣った。

和が俺の両親を大切にしてくれるように

俺も和の両親を大切にしたんだ。

和母「幼稚園のお迎えは、ママのほうがいいわね。蓮もお友達とお約束したいでしょう」

颯の首がすわるのを待っていたように

お迎えに行くことになった和は

蓮のお友達の家に寄ってくるようになった。

鹿島の工業団地には、幼稚園のお友達が

大勢住んでいた。


蓮は引っ張りだこで、お友達から声をかけて

貰って、嬉しそうだった。

夕方までたくさん遊んで、おうちでも遊んだ。

だけどしばらくして

「蓮くんはお受験しないの?」

蓮「なに?それ」

教育熱心な家庭が多くて、周りの子達は

幼児教室に通いはじめた。

子育てには意思の選択が何度も訪れる。

小学校は近くの公立校がいいと

夫婦で話し合った。

自分達の家も買いたかったんだ。

幼児教室に行かなくても、普段の遊びの中で

文字も数字も覚えられる。

野山や海、豊かな自然こそが先生だぞー。

仲良しのお友達がお受験に忙しくなって

図書館で借りられる絵本をマックス10冊まで

借りても、蓮はその日のうちに読んでしまう。

和「新しいおうちに、図書のコーナーを作りたいね」

俺はアトリエを作りたい。

それで蓮と新しい家の模型を作り出した。

1700万円か・・・

工場と取引のある銀行も農協も信金も

貸してくれると言ってくれたけど

両親に、まず話してから・・・

と、悠長に構えているうちに

はじめに気に入った家は売れてしまった。

隣にはうっとり模型を見つめる和。

・・・やべー。やらかした・・・