2024年の元日に発生した能登半島地震から10日超が経過しました。

被災された方々に心からお見舞い申し上げますと共に、一日も早い復興と生活の回復を心から願っております。

 

 

今回の能登半島地震において被害拡大の一つの要因となっているのが、『道路の寸断』です。

能登半島地震で道路寸断、救助・支援阻む 孤立2300人超 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

https://www.bing.com/search?q

 

 

 

日本を将来に亘って守っていくためには、という観点から今回のブログでは『道路』について書いてみます。

 

さて上記記事によれば

ー 被害の大きかった地域につながる主要道路が寸断された。緊急車両や救援物資を運ぶ車が通る「緊急輸送道路(緊急道)」も多く含まれ、救助活動や物資輸送が滞る要因となった。緊急道の寸断リスクは過去の災害でもみられ、全国で路線強化や代替ルートの確保が急務だ。

 

とあります。

この『緊急道の寸断リスク』については対策が訴えられていたことでもありました。

 

次に挙げるのは内閣官房が令和2年12月に発表した『防災・減災、国土強靱化のための 5か年加速化対策』の冒頭部分です。

 

『近年、気候変動の影響により気象災害は激甚化・頻発化し、また、南海トラフ地震、 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震などの大規模地震の発生も切迫している。』

 

『また、高度成長期以降に集中的に整備されたインフラが今後一斉に老朽化することか ら、インフラの維持管理・更新を確実に実施する必要があるが、未だ予防保全型のメン テナンスサイクルは確立できておらず、適切に対応しなければ、中長期的なトータルコ ストの増大を招くのみならず、我が国の行政・社会経済システムが機能不全に陥る懸念 がある。』

 

『 このような国家の危機に打ち勝ち、国民の生命・財産を守り、国家・社会の重要な機 能を維持するためには、防災・減災、国土強靱化の取組の加速化・深化を図り、災害に 屈しない強靱な国土づくりを進める必要がある。』

 

 

実は能登地方を震源とする地震は2020年末から続いており、22年6月には震度6弱、23年5月には6強の地震が起きており、石川県内に住む人によると「ここ数年、大きな地震が続いていたし、今後も起きる可能性があると言われてはいた」ということでした。

「能登半島地震」半年前に指摘されていた危うさ 地元テレビで識者が注意喚起した内容 (msn.com)

https://www.msn.com/ja-jp/news/other/

 

 

確かに、令和6年の元日にここまで甚大な大地震が能登半島で発生するなどとピンポイントで予測できる人間はいません。

それでも日本列島の「どこでも」、そして「いつでも」こういう震災は起こるものであり、いざそれが起きた時に『災害に屈しない強靱な国土づくりを進める必要がある。』と政府筋も言っていたことです。

 

地震が発生することは人間の力ではどうすることも出来ません。

 

ただ地震で発生した際に『被災された方々を守る』と言う事に関しては政治の力で対処できるものです。

しかし今回の震災において発生した『緊急道の寸断』それに伴う『被災者の孤立』に関しは、対策が必要との認識が政治にあったものの、それが不十分あるいは間に合わないものであった、と言うことが出来るのです。

 

 

そしてここからが本ブログの本題となりますが、

このような事はこれからも起こります。

 

 

そもそも日本は国土に対する道路網の整備が不十分なのです。

 

 

 

『高規格幹線道路』というものがあります。

高速道路を中心に一般国道の自動車専用道路と本州四国連絡道路を加えた全国的な自動車交通網を形成する自動車専用道路のことをいうのですが、この要件には

 

・全国の都市、農村地区から概ね1時間以内で到達し得るネットワークを形成するもの。

・災害の発生等に対し、高速交通システムの信頼性の向上に資するもの。

 

というものが含まれており、

高規格幹線道路 - Wikipedia

災害対策用道路としての意味も有しています。

 

 

しかし日本が有する高規格道路については、国土交通省より以下の問題点が指摘されています。

 

・諸外国に比べ、日本の都市間連絡速度は10km/h以上低い

 

 

・規制速度80km/h以上の道路ネットワークを比較した場合、日本の約7,800kmに対し、ドイツは約4倍、 フランスは約2.4倍の延長となっており、日本の都市間連絡速度が低い一因と考えられる。

 

 

80k以上の速度で走れる道路がドイツ・フランスは国土中に張り巡らされているのに対し、日本のそれはやはりスカスカである印象を受けますし、特に今回被災した能登半島にはそのような道路がないことも分かります。

それが今回緊急部隊の移動や救援物資の輸送の遅れに繋がっている事は否定できないでしょう。

 

 

・日本の高速道路は約4割が暫定2車線であり、諸外国にも例を見ない状況。

 

 

ただでさえ高速道路が少ないにもかかわらず、車線が少ないので渋滞が発生しやすくスピードも出しづらいです。

地元ネタになりますが、東北自動車道よりも新潟市内を走る新新バイパス(片道3車線の6車線)の方が余程走りやすくスピードも出せます。

 

 

こうしてみますと、やはり日本の高規格道路は『日本全国どこでも災害が発生した場合に緊急車両が即座に現地に駆け付けることができる』ものになっている、とはいい難い状況にあります。

 

私はよく『ヒト・モノ・カネ』の動きは人体における血流と同じ。という言葉を使用しますがその例えでいうならば幹線道路は血管・大動脈そのものです。血管が体内に十分に張り巡っていてこそ、人も国も健全さを保つことが出来ます。

 

改めて整備が必要ですし、必要であると、内閣官房も国土交通省も言っているのです。

 

 

 

 

ではそれに対し、その整備をするための予算は十分なのかを見てみます。

 

既出の内閣官房の『防災・減災、国土強靱化のための 5か年加速化対策』は予算に関しても言及しています。

これは道路整備だけに限らず老朽化したインフラ整備に要する予算も含まれてはいますが、要は日本を絶え間なく襲う災害から国土と国民を守る『防災・減災、国土強靭化』ためには5年で15兆円を要する、とされています。年間では3兆円ですね。

 

 

そして実際その通りに予算も集められています。

 

 

しかし、おそらくこれは十分なものではない、私は考えています。

と言いますのも国交省は2018年に今後30年で必要となる道路や河川などインフラの維持管理、更新費用の推計をまとめて発表しており、そこでは2019年度から48年度までに必要な費用は最大195兆円であると見込んでいたのです。

 

インフラ補修、30年で195兆円 国交省推計 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38391690Q8A131C1EA4000/?fbclid

 

 

これは年間で直せば6.5兆円ですから、今付けられている予算では全く足りません。

 

そして実際に地方において老朽化したインフラが放置されている現状が報じられてもいます。

 

老いるインフラ、地方で放置深刻 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

修繕必要な橋、6割未着手 脆弱な予算・職員響く

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77562860Q4A110C2EP0000/

 

修繕が必要な橋に関して、国が管理するもので4割、地方自治体が管理するもので6割が未着手とあれば、地方で大地震が発生した際に被災地が孤立することになるのは、もはや『当たり前』だとさえいえます。

 

国の公共事業費の推移を見ても

 

 

令和に入ってからは補正込みで7-9兆円予算が付けられていますが、やはり老朽化されたインフラをキチンと整備し、尚且つ時速80km以上で走れる4車線以上で高規格道路を全国に張り巡らせるためには、平成10年頃の10兆円を超える予算が必要なのではないでしょうか?

 

 

 

かつて日本では高騰する社会保障費を賄うため、公共事業を「税金の無駄使い」と呼びカットを続けてきた経緯がありました。

しかしそのことの弊害が今生じています。

 

震災から日本人を守り、将来に亘って国を守っていくためには、やはり今一度公共事業にかける予算を増やす必要があります。

 

そして今後30年に亘って国が公共事業に高いお金を出し続けるというコミットメント(公約)を出したならば、建設業者も設備投資や人材確保のためにお金を使います。

今までは「昔に比べ仕事が減っている」ことが、企業に設備投資や人材確保にお金を投じさせることを躊躇させていたのです。

企業が設備投資、人材へ投資を行うようになれば、それが日本の経済成長にも繋がります。

 

ここで必ず問題視されることになるのが『財源』ですが、『建設国債』以外にはありえません。

『建設国債』は財政法でさえ認められている財源調達方法です。

将来に亘って恩恵をもたらすものですから、現在の人達が税でそれを担う必要などないのです。

 

 

それでも、絶対にいかなる名目であれ国債発行がどうしても嫌だというのなら、

他の国では計上されていない、日本でしか予算に組み入れていないお金、『債務償還費』16兆円を使えばいいのです。

 

少なくとも先進国と呼ばれる国家で、債務償還費は計上されていません。それは財務省の資料においても言及されています。

なぜなら自国通貨を発行できる国家は国債の債務償還を『借換債』で行っているからです。

 

公共事業費は日本人の命を災害から守るため、国家を将来に亘って維持するために必要な金なのですから、

どちらに優先してお金を使うかは、もはや議論の余地もない、悩む必要もない話です。

 

 

震災が発生する日本だからこそ、それを前提にした「日本列島の『再』改造計画」。

それこそが今の日本に必要不可欠なことなのです。