12月4日の朝日新聞の一面トップから。

 

この『アンチアベノミクスキャンペーン』はもはや「病的」と言っていいと思います。

来春の黒田総裁の任期終了と、その後任が恐らく財務省に近い人になるであろうことから、完全にアベノミクスを全否定しにかかっています。

 

 

それでも書かれている主張が正しいのならともかく、まるでお話にならない記事です。

突っ込み所があまりに多いので困惑さえするのですが、まず

 

・外国人労働者にとって日本の労働市場が魅力的でないのは確かだろうが、わざわざ特老ホームで働く外国人女性のコメントを情緒的に用いることによって円安批判を行っているのは悪質な『プロパガンダ』と言えるものである。

 

・今年ノーベル経済学賞を受賞したベン・バーナンキは「デフレ克服のためにはヘリコプターからお札をばらまけばよい」などの発言から「ヘリコプターベン」とあだ名され、そして実際にアメリカFRB議長(日本の日銀総裁に相当)時代にリーマンショックへの対応として「無制限の金融緩和」を行っている。このように「適切なインフレターゲットを達成するために金融緩和を継続すること」は世界のアカデミックによって認められていることであるが、それをこの新聞は理解出来ているのか?

 

・円安が一方的に悪いことであるかのような書き方だが、円安で利益を受けている者も確実に存在しており、実際財務省の企業法人統計調査によれば日本企業全体の経常利益は過去最大である。これに触れないのは公平さを著しく欠いている。

 

・円安の要因があたかも日銀の金融緩和のためであるかのような論調だが、それならばこの10年間一貫して円安になり続けなければならないが実際は昨年まではそのようなことはなかった。現実は今年に入ってからの円安は米国の金融引き締め政策による「ドル高」のために起こっていることであり、だからこそ記事にある通り「米国の利上げペースが鈍化するとの見方から足元では134円になった」のである。この為替変動も日銀の政策とは関係ない。

 

・為替相場は短期には機関投資家のトレードに左右されるものであり、日銀の金融政策の変更が決定的な作用を及ぼすものではないし、そもそも為替相場をみて国内の金融政策を変更するなど論外にも程がある。

 

・実質実効為替レートというのは為替レートに「物価上昇率」を加味したものである。これが1970年以降で最低水準になっているのは日本の物価上昇が他国に比べ低いからに他ならない。円相場とは関係なく他国の製品は昔よりも高くなってしまったのである。

こんなものは50年前の方が現在よりも円安なのをみれば当然分かることなのに、敢えてそこを無視し「悪い円安論」へと話を持って行っている。あまりに悪質なプロパガンダであるし、もしこの新聞が実質実効為替レートの意味を分かっていなかったのであるならば、それはもはや報道紙には値しないほどのレベルの低さである。

 

・2面では日銀の金融緩和によって「経済の好循環」が起こっていないことを批判的に書いているが、そもそも経済政策というのは『政府の財政政策』と『中央銀行の金融政策』が両輪となって実現されるものである。政府の財政政策が十分でなく、それどころが真逆の増税まで行っことはまさに政府と日銀で『アクセルとブレーキを同時に踏んだ状態』であった。この状態で『経済の好循環』など起きるはずがないので、この批判はただ単純に矛先が間違っているだけである。

 

この新聞は過去に安倍元総理が最初に消費増税延期を決定した時、2014年11月16日の一面トップに「大手6割『予定通り増税を』」という記事を掲載し、社説に「景気が振るわないなら、必要な対策を施しつつ増税に踏み切るべきではなかったか」と書くほどの経済音痴です。

https://ameblo.jp/kazunari-itoh/entry-11964848109.html

 

それでも世の中の人は「大手メディアがここまで書くのであるからやはり異次元の金融緩和は弊害が大きく、それを止めない黒田総裁は余程意固地になっているのだろう。」とうい誤った認識を持たざるをえないのです。

 

完全に間違った経済知識を大体的に報じ、読者からカネを取った上で誤った認識を植え付ける。

それはもはや国民によって有害なことと言わねばならないでしょう。