5月31日の日経新聞の一面トップから。

 

 

これがいつにもまして呆れかえるような内容で、今朝一読した時には何とツッコミを入れたものなのだろうかと悩まずにはいられませんでした。

 

しかしこれが今の日本社会が抱えるドグマ(宗教上の教義)なのだから仕方ないのだと考えるよりありません。

 

政府が国債の償還や利払いに充てる「国債費」。

予算編成時にはこれを余裕を持って組みのだけど、年度の途中で余りそうになるのが分かると「減額補正」し、余った分を景気対策の補正予算に充てている。

 

ということなのですが、

 

ハア?それが何?なんか問題あるの?

としか感じません。

 

因みに今日の高橋洋一チャンネルがこの記事に関するものでしたが

489回 日経新聞がスクープした「国債利払い費1割転用。それスクープじゃないよ - YouTube

 

 

 

「そんなことは10年どころか30年以上前から行われていることで、『国債費』が毎年余計に計上されていることは担当したことのある者なら誰もが知っていること。スクープでもなんでもない。」

 

と歯牙にもかけられていません。

 

 

記事に関するツッコミどころとしては

「特定の目的で確保した予算が余った場合、(略)国庫に戻すのが基本だ。国庫に戻したお金は借金の返済などに使われる。」

←国債の償還は借換債によって行われるので、国庫に戻したお金が借金の返済に使われることはありません。

 

「最近は毎年繰り返されたのが利払い費の減額補正と呼ばれる措置だ。」←最近の話ではないらしいですね

 

「『隠し財源』が膨らんだ背景には日銀による金融緩和がある。」←もともと予算編成時に余裕を持って組んでいるだけで金融緩和は関係ありません。

 

「12年度末に就任した黒田東彦総裁は異次元金融緩和を打ち出し、16年にマイナス金利に踏み切った。過去10年ほぼ一本調子で市場の金利が下がった。」

 

←これもいつも気になっているのですが、日銀が「政策金利をマイナスにする」ことと、市場において「政府が発行する長期国債の利払い金利が下がる」ことは本来別のことです。

しかしこのように一つの文中において二つの違うモノを同じ「金利」という言葉で語ると、

書いている側はともかく読み手としては二つの「金利」を同じものと混同するでしょう。書き方を改めるべきです。

というより私は書いている側からして「日銀による政策金利」と「政府発行の長期国債の金利」の区別がついているのか疑問に感じています。

 

 

「足元の10年債利回りは日銀が上限と位置付ける0.25%近辺に張り付いた。(略)今後、さらに金利が上がれば利払い費の増加に結び付く。」

←まず日経の記者さんには『何故、市場で決まるはずの長期金利が、日銀が上限と定める値で張り付いてそれ以上は上がらないのか』に意識を向けて欲しいのです。

現在日銀はイールドカーブコントロールといって、日銀が市場の国債を買う(『買いオペ』)ことによって国債の買値、ひいては金利を操作しているからのです。

 

そして「今後、さらに金利が上が」る時というのは、日銀がこのイールドカーブコントロールを行う必要がなくなった時ということになりますから(誰かの邪な横やりによって途中で金融政策が変更させられない限りにおいては、ですが。)

景気が上向き、「政府と日銀が定める物価目標を超えた時」ということになります。

 

その時は、経済対策のための補正予算自体が必要のないものとなっているのです。

おのずと政府の税収も上がっている事でしょう。

 

つまり

「金利が下がるから利払い費の余りが増える恩恵ももう期待できなくなる。」

心配など、わざわざ日経新聞にしてもらう必要などなくなっているのです。

 

 

要するに詰まる所、今回の記事は

安倍―黒田ラインによって行われた『アベノミクス』、つまり『財政均衡を無視した積極財政路線』に反感を抱いている層が、積極財政論者を全面否定したいがために書いた「嫌がらせ」なんです。

 

 

 

金融緩和。それは日銀が政府の発行する国債を市場を通して間接的に購入することで、これを続ければ確かに「政府負債残高」は増えることでしょう。

 

しかし同時に、日銀が国債を購入した代金は市場銀行に渡り、そこから民間への貸し出しが行われることによって世の中に貨幣が流通します。

 

そして政府は国債発行を財源にすることによって、国民の経済活動に必要な政治を行うことが出来るようになります。

 

つまり金融緩和政策とは、社会に貨幣を流通させる行為に他なりません。

何故それを行うのかといえば「景気を良くするため」「経済を成長させるため」なのです。

そして識者が殊更に問題にしている「政府負債残高」とは、政府が国民のために流通させている貨幣量と言い換えることが出来ます。

 

だからこそ、金融緩和を止める、政府は緊縮増税によって借金を返済すべきである、という理屈は上記の真逆、社会に流通している貨幣量を減少させ、国民を貧しくさせるための方策に他ならないのです。

 

 

 

 

直近のブログでも書いた通り、

日銀の利益は『通貨発行益』、つまり日本銀行券を発券(実際は数字を変えているだけだが)し購入した各種債券からの利払い費によって生じます。

日本銀行の利益はどのように発生しますか? 通貨発行益とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)

 

そして日銀が最終的に上げた利益は国庫に返納されます。

日本銀行の利益はどのように使われていますか? 国庫納付金とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)

 

つまり金融緩和(日銀が市場から国債を購入する行為)によって、日銀が持つ国債の比率が上がれば、日銀にとっても政府にとっても、実は利益になっているのです。

 

 

大体日銀は、つい最近マスコミが散々騒いだように「手段の独立性」を有しており、政府が定めた経済目標に対してそれを実現させるための手段を「独立して判断し実行する」権能を有していたはずです。

 

これに文句をいう輩は一体如何なる了見なのでしょう?

ちょっと考え違いも甚だしいのではないでしょうか?