明けましておめでとうございます。2022年も宜しくお願い致します。

「人間の行動の原動力は『怒り』である。」という人は多いですが、元日の夜になってこのブログを書いた理由がまさに『怒り』でした。

 

 

 

日経新聞の一面記事からですが、

確か昨年の元日も日経新聞は『資本主義が危機にぶつかっている』という内容の記事だったかと記憶しています。

 

今年の冒頭記事でも

『戦前の大恐慌期、戦後の冷戦期と度重なる危機を乗り越えてきた資本主義は再び輝きを取り戻せるのか。』

と書かれていますが、私はこの表現に極めて強い違和感を感じずにはいられません。

 

あたかも資本主義を擬人化しそれが『至上の制度』であるかのように書いていますが、

そもそも幾度も危機に陥ってはそれを乗り越えてきたのは『人類社会』なのであって、資本主義というのは人類社会において多数の国家が政治的に選び採ってきた『経済制度』に過ぎません。

 

戦前の大恐慌期にアメリカが採った『ニューディール政策』は「国家による市場統制」という社会主義的な要素を持っていましたし、戦後高度成長期の日本は資本主義陣営に与していながらもソ連のゴルバチョフ書記長をして『最も成功した社会主義国』と言わしめたほどでした。

【日本は最も成功した社会主義国】『絶海の孤島』の社会学 (blogos.com)

 

こんなことは改めて言う程の事ではないですが、経済制度というのはその時々の社会経済・国民経済を考慮しながら国家が柔軟に舵取りすべきものであって、「この制度こそが至上」などと決めてかかるものではないのです。

 

確かに学者は自分の思想信条から「この経済思想こそが正しい」と主張するかもしれませんが、それをマスコミが記事に書くなど間違っています。

 

何故ならマスコミとは「情報を人々に伝える媒体」に過ぎず、そこに主観を込めてはならないからです。

しかし日本の新聞社は本当に不愉快極まりないことにそのことを忘れ、「我こそが良識と見識の象徴である」という顔をし、時に他の媒体で情報を発信している人物を見下し、貶めようとさえするのです。

 

 

で、

本題の元日の日経新聞の記事です。

日経新聞によれば、資本主義は現在「3度目の危機」にぶつかっているらしいです。

最初の危機は1929年の米株価暴落を引き金とする大恐慌。ケインズ理論に沿って『大きな政府』が需要を作り景気を刺激する方法で乗り切った、とあります。

 

2番目が冷戦期、財政膨張や過度な規制など「大きくなりすぎた政府」が経済の活力を奪い、ベトナム戦争など共産主義勢力に対抗するコストが資本主義の疲弊に拍車をかけた。新自由主義が登場し、レーガノミクスやサッチャリズムの「小さな政府」が民間の競争を促して成長力を取り戻すとソ連は崩壊し民主主義に勝利をもたらした、そうです。

 

そして現在は「第3の危機」で、過度な市場原理主義が富の偏在のひずみを生み、格差が広がり、人々の不満を高め、国家の分断を生み出した、ということです。

 

これに対し、

「日本はバブル崩壊から30年、日本経済は低空飛行が続く。雇用の安全を重視しすぎた結果、挑戦の機会を奪われた働き手はやる気を失う。行き過ぎた平等主義が成長の芽を摘み、30年間も実質賃金が増えない『国民総貧困化』という危機的状況を生み出した。

それなのに民間企業を縛る多くの規制が温存され、社会保障改革の遅れで財政膨張にも歯止めがかけられない。日本は世界から周回遅れで「第2の危機」に嵌まり込んだままだ。」

 

それに対する日経新聞の提示する解は「フレキシキュリティー」というもので、柔軟な労働市場(要するに企業が労働者をクビにしやすくする)と、手厚い失業支援と就労支援によって

 

『競争→再挑戦→成長の好循環』

 

を生み出せば、利益を出せない企業は淘汰され、仕事の出来ない人間はすぐにクビになり、だけど再挑戦の機会を設けるので、優秀な人間は生き残り、国民の生産性を上げることでGDPも上がり、格差は拡大し国家は分断するけれど社会は成長することができる。

 

という何とも言えない「弱肉強食理論」を振りかざしているわけです。

 

 

まず、何処から突っ込んでいけばいいのでしょうか?

 

私は就職氷河期ど真ん中に成人期、青年期を過ごしましたから、ここで書かれている日本社会が『雇用の安全を重視しすぎ』だとか『挑戦の機会を奪われた働き手はやる気を失う』とか、『行き過ぎた平等主義が成長の芽を摘み』とかが、

 

ゲロ吐くほど胸糞悪い駄文、現実を知らない勘違い野郎共の勝手な妄想に過ぎないことを知っています。

 

大学を卒業した成人の半分が正規労働出来ない。

夢はおろか結婚さえも出来ない。

やりたい仕事を目指す所か「働けるだけ有難い」と言い聞かされ、そう思わされ。

終身雇用・年功序列は過去の遺産となり、営業成績が上がらなければ数か月でクビになる企業で働き。

その後は10年務めても賃金は上がらずボーナスは出ない企業で働き。

『成果主義』とは企業側の給料を下げるための方便であることを学び。

苦しいのは自分がクソだからだと、ただひたすらに己を呪い続けてきたのですから。

 

働き手がやる気が出ないのは給料が安いからで、真面目に働いても給料が上がらないからですよ。

逆に、給料がちゃんと出る会社にだったら労働者はそこで働くことを望み、やる気を出して働き続けるでしょう。

 

今だって企業は社員を守ることなんて考えないくせに、忠誠心だけは求めてくるような所なのに、

そこに更に「雇用の流動性」とか「柔軟な労働市場」とかが必要なんですか?

結局パソナが儲かるだけでしょう?

 

くっだらねえ。こういう記事が嘘でも書けるなんて、新聞記者さんて本当に幸せなんだなと感じずにはいられません。

 

 

とまあ、愚痴が過ぎましたが

日本は「第2の危機」にあるということですが、私はこれは間違っていると思います。

実際の日本は『需要不足によるデフレ』状態にあるので、30年間「第1の危機」の状態にあります。

だから、ケインズ理論に沿って「大きな政府」が需要を作り出し、景気を刺激する方法で乗り切る必要があるのです。

 

それはどこで分かるのか。

日本のインフレ率は12月23日発表の時点でも0.6%で、政府が目標としている2%の物価目標に全然足りていないからです。

日本 - インフレ率 | 1958-2021 データ | 2022-2024 予測 (tradingeconomics.com)

 

巷では、ガソリン価格や食品価格の上昇などで、日本もインフレになったとか、

実際にアメリカがインフレ率6.8%になったためにFRBが利上げを行ったことから、日本も金融緩和をやめるべきだとか、

悪ふざけなのか無知なのかアホなのか何なのか、全く意味分からない事を言う「自称専門家」が跋扈していますが

 

マジで現実をよく見てくださいよ。

何を素っ頓狂なこと言って国民を不幸に導こうとしているんですか?

単体で値上げが進んでいる品目を取り上げているだけで「日本もインフレがー」とか言っている人は猛省してください。

モノ言うレベルに全然なっていません。

 

この記事ではサッチャリズムやレーガノミクスを引き合いに出し、日本も「小さな政府」を目指し競争力を強化せよ、と日経新聞は主張していますが、

サッチャー時代のイギリスも、レーガン政権のアメリカも高インフレが起きていたので政府支出をカットする必要があったことが考慮されていません。大体レーガン政権は「小さい政府」を目指す代わりに減税を行っています。

レーガノミクスってどんな政策?背景・内容やアメリカに与えた影響をわかりやすく解説! - レキシデセカイ (flowhistory.net)

 

サッチャーは消費税を増税していますが、それ以前のイギリスの所得税は最高税率が83%もあり、そこの減税を行っていることも注意が必要です。またサッチャーは「格差を広げ弱者が自助努力に追い込まれる厳しい社会を創り出した」と、後年批判されています。

【サッチャリズムとは】具体的な政策や社会への影響をわかりやすく解説|リベラルアーツガイド (liberal-arts-guide.com)

 

日経新聞は本当に日本をそんなに弱者に厳しい社会にしたいのでしょうか?

そしてなぜ日経は「小さな国家」を推奨しておきながら財務省の増税路線を批判しないのか?

公共のための新聞であることを放棄し、財務省の代弁紙に成り下がっているからでしょう。

それと全くの勉強不足です。

こんな新聞から一体経済の何を学べというのでしょうか?

 

過去のブログで散々書きましたが、

日本のGDPが伸びないのは、企業の努力不足でも、個人の生産性が低いからでもなく、『緊縮増税』政策のためです。

政府が支出を減らし、増税によって国民からカネを巻上げれば、国民が貧しくなるのは自明の理です。

 

そして政府支出の伸び率と、GDPの伸び率、賃金の伸び率、には明確な相関関係が「世界中の国々」で確認されています。

 

 

 

 

そして自国通貨建ての国債がデフォルトしないのは財務省自身が認めている事であり、

外国格付け会社宛意見書要旨 : 財務省 (mof.go.jp)

 

インフレ率2%を超えない限りにおいては、日銀が国債を買い取ることに(財政法で規制されているが)制限がないことは日銀総裁が認めています。

現在は金本位制と異なるが、無制限に国債買えるわけでない=日銀総裁 - ロイターニュース - 経済:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

そしていわゆる「国の借金」である国債も、その48%が「政府の子会社」で「統合政府」である日銀が保有しているのです。

1067兆円、海外保有率7.6%・中央銀行48.1%…日本の国債の保有者内訳(最新) - ガベージニュース (garbagenews.net)

 

国民の生産性が上がるからGDPが上がるのではなく、GDPが上がるから国民の生産性も上がり、賃金も上がる。

これは「スペンディングファースト(国が最初に国民のためにカネを流通させた後、国民から税収が上がってくる。従って国が国民から富を集めて財源にしているのではない)」の考えからも明らかです。

 

 

そして「頑張って働けば賃金が上がる。」

この当たり前の前提が成立していなければ、働き手のやる気だって出ないのです。

 

「成長の好循環」もそもそも景気が悪く、需要が不足していれば、何をどうやったって起こるわけがないのです。

 

従って、結論になりますが

全ては『インフレ率2%の物価目標が達成されるまではプライマリーバランス黒字化目標の凍結』。

ここが始まりになります。

というか、プライマリーバランス黒字化目標なんていらないんです。

放漫財政を抑えるための財政規律については、『インフレ率を2%前後に抑える』。これでいいんです。

 

『管理通貨制度』という言葉があります。

ネットで検索すれば、このような説明から始まるはずです。

『通貨の発行量を通貨当局が調整することで物価の安定、経済成長、雇用の改善、国際収支の安定などを図る制度』

管理通貨制度 - Wikipedia

こ れ が ま さ に 『 答 え 』 な ん で す 。

 

日本においては高橋是清が20世紀初頭の世界恐慌において、通貨の発行量を増やして日本を最初に世界恐慌から脱しさせたのです。

な ぜ そ れ に 倣 わ な い !

 

1971年のニクソンショックによって「通貨の発行量は国家が保有する金の量に制限される」という金本位制度の時代は終わりました。

そこから実に50年、半世紀もの間、世界は管理通貨制度によって動いています。

つまり、『国家は経済状況に応じて通貨の発行量を調節できる』のです。

だから財政赤字なんて本当は関係ないんです。本当に真面目にそうなんです!

 

毎年、日経新聞は元日になると資本主義の存続について心配されているようですが、

それよりも日本経済についてもう少し真摯に考えてみては頂けないものでしょうか?『日本経済新聞』の名前が泣きますよ。

 

あと7面の読者アンケート。

「20代以下『親よりも不幸』3割超」ということですが、社会においてこんなに悲しいことがありますでしょうか?

こんなの本当にもう終わりにしましょう。今年こそ終わりにしましょう。

若者が未来に幸せな期待を持てる社会を創らないと、この国に未来はありません。

本当に心からそう思います。

 

 

それとその読者アンケートにある「金利上昇期待若年層ほど薄い」。これなんですか?金利上昇期待って何?なんでそんなアンケート取った?

 

金利については過去にブログ書きましたが、

212.「『長期金利』とは何ですか?なぜ変動するのですか?どんな影響があるのですか?」 | 伊藤和成『庶民が天下国家語って何が悪い』ブログ (ameblo.jp)

213.「『利上げ』は『金利上昇』とは違うの? & 政策金利が他の金利や景気に与える影響とは。」 | 伊藤和成『庶民が天下国家語って何が悪い』ブログ (ameblo.jp)

 

現在日本においては日銀が「イールドカーブコントール」といって、国債の売買を行うことによって金利を調整しています。

また国債の金利というのは結局の所インフレ率に連動して決まるものなので、日本がディスインフレにある以上上昇は考えられません。

 

「インフレ期待」についてアンケートを取るのなら分かるのですが…。

あれですか?「国債の金利が上昇するとデフォルトがー!高齢者ほど心配しているのに、若者はそれを知らないのだー」とかそういうことですか?

 

もしそうなら、呆れてモノが言えません。