31日は一日外出しブログを更新できないであろうという事と
今朝は全紙一面トップが同じ―それだけ29日は大きなニュースがあった―ことから
1日前倒して30日の朝刊からブログを書きます。

「日銀、初のマイナス金利」
日銀は29日、金融政策決定会合を開き、追加金融緩和策として、民間銀行が日銀に新たに預ける預金に年0.1%の手数料を課す「マイナス金利」の導入を初めて決めた。
とあります。
昨日のfacebookでも書きましたが、29日の為替市場・株式市場はこの日銀の発表を受け大荒れの展開となりました。


まず、「マイナス金利って何?」という話になるのですが、
これについては下に挙げた動画が5~8分程で分かり易く説明しています。
誤解しやすいところの、一般の人が銀行にカネを預けると預けたカネが減ってしまうというものではありません。


アゴラチャンネル【Vlog】マイナス金利ってなに?
https://www.youtube.com/watch?v=DJDGk4OCABA

【三橋貴明】欧州のマイナス金利を詳しく解説 なるほど!
(これは2014年6月の動画で欧州の話をしていますが、今回の日銀政策にも通じます)
https://www.youtube.com/watch?v=ofCRrvRuBB8



そもそも政策金利とは、
日銀が民間の銀行にカネを貸し出す際の金利のことです。
これが安ければ銀行は資金調達が容易になり、企業や個人にカネを貸し出しやすくなります。
その結果世の中にカネが出回るようになり景気が良くなる。
逆に高ければカネは市場に出回りにくくなり、景気の過熱を抑える役目を果たす。
というのが従来の金融政策でした。

所が
この政策金利(=公定歩合)、もう大分前から限界まで安く設定されているというのに
一向に景気が良くならなかった。

そこで
安倍政権が誕生し、日銀の総裁が黒田氏になってから
日銀は過去二回「追加緩和」を行いました。「黒田バズーカ1号.2号」なんて言われました。
これは簡単にいうと、
「銀行にとっての銀行」たる日本銀行が、日本銀行券(つまり紙幣=カネ)を刷り
それで民間銀行が保有する長期国債を買い取る事で、その代金として民間銀行にカネを卸したのです(厳密に言うと各銀行の口座の預金額を増やした)。

本来の目的であれば、このカネを民間銀行が企業に貸し出すことで、
世の中にカネが出回り、これが経済を活性化させるはずでした。

ところが、
いくら日銀がカネを刷ってそれを民間銀行に卸しても、それによってカネが回り物価が上昇したという結果が得られませんでした。

何故か?
企業としてはそこまで新規の仕事があるわけではないので、銀行に利息を払ってまで新たな設備投資のためのカネを借りなかったからです。

カネを貸して利息をとることで儲けている銀行としては貸出先がないというのは困ります。
それで少しでも利益を上げるために民間銀行がどうしていたのか、というと
日銀から卸されたカネで再び国債を買うか、日銀が0.1%の利息をくれることから
卸し元である日銀にカネを預けたままにしていたのです。

つまり今までは、カネの量は増えどもそれが日銀と民間銀行とで、国債を媒介して往復していただけだったのです。

日銀としては、それではいつまで経っても目標とする物価上昇率に到達しないし
2016年年明けからの金融市場の混乱から景気が冷え込む事態を打開するため、

今回、日銀は民間銀行の新たな預金については、
0.1%「逆に手数料を取っていく」事にしたのです。

 

要は鞭を振るいながら
「ホラホラ、カネを眠らせてないでもっと企業にカネを貸し付けて回りなさい!」
と、そう言っているのです。

これがマイナス金利です。


マイナス金利はユーロ圏の欧州中央銀行(ECB)をはじめデンマークやスイスといった国で既に導入されていますが、必ずしも景気刺激として効果を上げているわけではないようです。
(2番目に挙げた三橋氏の動画がこの時の事を語っている)
報道を読んでいても、行き場を失ったカネは再び国債買いに向かうか
株式や不動産投資に充てられ、それがバブルを誘発するのではないかと不安しされています。
この場合、株を持ってる人には良いかも知れませんね。

私個人の感想を言えば
元々企業の資金需要がないからカネが回らない、という所に原因がある以上
今回の日銀政策が景気を良くするか、物価上昇を促すかというと、
それは難しいと思います。
というか、ないと思います。

デフレが単なる貨幣減少(つまり世の中のカネが不足している)などではなく
需要不足(仕事がない)でカネが回らないことが原因、というのは真実であると思っています。

民間がカネを回すことが出来ないのなら、
国が大規模な財政出動を行い、市場にカネを流し、回す必要があるでしょう。

財源は国債発行、と書くと
「国の借金がー」という話になる思いますが
現在日銀が市場から長期国債を買い取ることで民間企業に卸しているカネが年間80兆円です。
これは政府が発効する年間の国債の額とほぼ同等なのです。
この時点で「国の借金」(この表現自体が既に間違っているのだが)は増えていません。
なぜなら日銀は政府の関連会社だからです。

(「国の借金は減っている
アベノミクスに増税は必要ない」(井上 智洋/早稲田大学政治経済学部助教)
http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/gover-eco_141222.html
を参照)

増税・緊縮財政による財政再建策は
国民の経済活動に悪い影響しか与えられないと思います。
官邸と財務省との認識のズレは大きいと思うのですが
今年は参議院選もありますし(衆議院選もあるかもしれないし)
アベノミクスとは何だったのか、もう一度見つめ直し
日本の成長のためにあるべき経済政策とは何かを示し
国民に信を問うべきだと思います。

黒田総裁としても、何もしないわけにはいかないということで
今回の決定だったのだと思いますが、
正直、出口の見えない迷宮に迷い込んだ感を私は受けています。