29日は毎日新聞の一面トップから。
「政府は2016年度当初予算編成で、防衛関係費を今年度(4兆9801億円)より増額し、
過去最高の5兆円台とする方向で調整に入った。
(略)
防衛費の増加は4年連続。安倍晋三政権の発足以降、一貫して増えている。防衛費が5兆円を超えるのは初めて。」

ということです。

ラスト2行がこの新聞の性格を現していると言えて、
「財政健全化のもと他の政策経費が抑えられる中で、防衛費が増加し続けるのはけしからん。アベは戦争をしたがっている。」
とまあ、読者にこんな印象を持たせたい所なのでしょうか。
偏見混じっていたらすいません。

増え続ける防衛費が財政を圧迫している。なるほど、これは確かに由々しき問題であると言えるかもしれません。
ただ下のグラフも見てもらっていいでしょうか。





これは、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)という所が発表している日本と中国との軍事費を比較したグラフです。
横線はドルベースによる金額ですから、日本円で5兆円なら1$=120円と計算して415億ドル。
1$=80円台だった2000年代をベースに考えても約620億ドル。つまりほぼ横ばいです。

一方、中国はというと、二次関数曲線みたいですね。
2014年でいくらあるか、ちょっと解像度の問題で読みづらいのですが
約1900億ドルです。

既に日本の3倍強で、ちょっと信じがたい水準です。
これが公表値で、この他にまだ公表されていないモノもあるというのです。

軍事と言うのは相手がある事ですから、
日本一国の中で比較論評しても意味がないのです。


こういう事を書くと、
「また中国の脅威を煽って、日本の軍拡を正当化しようとしている。アベは戦争をしたがっている」
とか
「日本の防衛費増大は周辺諸国の緊張をもたらし、東アジアの軍拡競争をよぶ」
という人が出てきますが、
グラフをちゃんと見直してください。

日本の防衛費の伸び率なんて、全然中国のそれに追いついてませんから。
軍拡「競争」なんて起きようがありません。
現時点で一方的に突き放されているのですから。
そして今後もその差は開き続けるのです。
それでどうやって日本から戦争を仕掛けるんですか?
本来、隣国の脅威に対処しようにも仕切れてないのが現実なのです。


日本にはアメリカの基地があるから、中国は今以上の事が出来ない。
だから沖縄から米軍を追い出すために、中国は本土と沖縄の離間工作をしているんです。
それが日本の置かれた厳しい現実なんです。

そして多くの日本人がその事実を、程度の差こそあれ
感じ取っているからこそ、現政権は相応の支持を得て存在しているのです。

アベが危険な軍国主義の独裁者だから
国民が騙されているのではないのです。


因みに防衛費が、実質GDPと比較すれば「過去最高ではない」と指摘している面白いブログを発見しました。
http://blog.livedoor.jp/blackwingcat/archives/1891891.html

しかし、記事を読んで見ると
やっぱり日本の防衛費なのに、アメリカのために結構使ってるみたいですね。
一世代前の兵器を高価で卸されている割に、米軍に敵対した場合は使えなくなったりするんですからね。

毎日新聞が(まあ、その他にも沢山いますが)日本の財政における防衛費の増大について懸念を持つのであれば、
まず集団的自衛権に反対してはいけません。個別自衛権のみで日本を護るのは不可能です。
それだとせめて中国並に日本の防衛費は必要となります。
つまり今の3倍強、約16兆円です。

それから兵器の国産を奨励すべきです。
国内で大量生産し、余った分を他国に輸出することで防衛費は抑えることが出来ます。

…と、新聞が世論を煽るのは間違いでしたね。

ただ、他国との比較なしに「防衛費が増えるのはけしからん」で済ませる記事は
私は無責任だと思っています。