(このブログは5月31日のfacebookへの書き込みを転載したものです。)

昭和45年、三島由紀夫は割腹自殺する前に、...
日本という国がやがて滅び「無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済大国が極東の一角に残るであろう」と書き残したそうです。

今から45年前の話です。
独立回復後もアメリカからの支配を受け、自立自存出来ない日本に絶望した言葉と理解したのですが、
その三島由紀夫もまさか現在の日本人がそれ以上の惨状を迎えることになろうとは思わなかったかもしれません。

 
私が思う限り、日本は「富裕」でも「抜目がない」国でもなくなりましたし、
三島由紀夫の時代では考えられなかった、アメリカの庇護下にあっても日本国が護れない事態が起きようとしているからです。


しかも、それを伝える日本のメディアには全くそれについての危機感が感じ取れません。

 
画面は読売新聞。
南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島の7か所の岩礁を一方的に埋め立てそれぞれ軍事基地化している中国に対し、日米豪の防衛相が「深刻な懸念」を盛り込む共同声明を発表した、というもの。

 
記事では、
「日本政府が中国に対し『深刻な懸念』を表明するのは異例だ。(略)(米国は埋め立てについて)中国を強く非難、即刻中止を改めて求めており、共同声明への『深刻な懸念』明記は、日本政府としてこうした米国の姿勢に同調したものだ。」
とあり、あたかも米国がそう言うから日本もそう言うのだという書き方です。

 
因みに読売はまだ一面トップで大きく扱っているのでマシな方で
朝日は1面の端と3面で、
「南沙埋め立て 正面対決 『米 危機感強める』『中 正当性を主張』」
と完全に他人事のような書き方です。

 
当事者意識というものがありません。


ですが先日も書きましたが、この問題は日本にとっても安全保障上の深刻な懸念なのです。

 
今まではそうでなかったにもかかわらず、
岩礁を埋め立てて人工島にし、そこを自国領土に出来るならば
そこからの12カイリが領海、200カイリが排他的経済水域というように
いくらでも海洋上を自由に使用できることになります。

 
中国は今回、それを世界的な海運路の要所で行っているのです。


さらにここに滑走路や軍事基地まで作られ、一昨年のように防空識別圏など一方的に設定されて、「あーだこーだ」と言って来た日にはどうなるでしょう。

 
東南アジア諸国は今後、中国の軍事的脅威と向き合いながらでなければ、ろくに経済活動が出来なくなるでしょうし、
米国がそれを抑えてくれないのなら、中国の政治的傘下に下るよりなくなるでしょう。

 
日本も同様です。中国の思惑次第でシーレーンが封鎖されるような可能性があるのなら、石油入手が断たれる事はないにしても経済は大変な混乱を起こすことになるでしょう。
必然的に日本は中国の顔色ばかりを窺う羽目になります。


そうならない為の、今回の日米豪共同声明なのです。

 
非常に事態は深刻で、日本にとっては全く他人事などではありません。
メディアがそれを理解していないのなら
日本人の自立自存の意識はここまで低下しているのかと驚かなくてはいけません。


しかもです。
今回、米国は中国に対し「埋め立ての即時停止の要求」という厳しい態度に出ています。
中国がこれを無視しスプラトリー(南沙)諸島の軍事基地化をさらに進めたらどうなるでしょう。
米国は実力行使にでるしかなくなります。つまり戦争になります。

 
戦争を懼れ米国の方が引いたら事態はもっと酷いことになります。

 
中国としては米国の圧力を退けたわけですから、もう恐れるものはありません。
尖閣でも沖縄でも、その他日本の近海でも
同様な行為を行うでしょう。


そしていずれ本気で日本を戦場に設定した米国との覇権戦争を始めることでしょう。


そうならないときはどういう時か


米国が日本を見捨て太平洋の西側半分を中国にくれてやって
世界の覇権国家から自ら降り中国との共存を考える時です。


2012年に米国の「国家情報会議」が公表した「グローバル・トレンド2030」の内容が10年以上早く実現することになるわけですが、


どちらにしろ日本に未来はありません。

そのような海外で起きている現実を見えているのかいないのか

或いは見えていて日本の将来よりも、党利党略が大切なのか


国会における野党の見当外れな総理批判や
大手メディアの国会審議の報道のやり方などを見ていると
絶望感にも似た気持ちになります。

 
確かに不安を煽るばかりなのは良くないことではありますが、
もう少しなんとかならんものなのか、と
思わずにはいられません。