先週から 私の中で寝ていたのを 起こして 仕上げている おはなし


【 テイザン 】   『魔法のオレンジの木』(岩波書店)


魔法のオレンジの木―ハイチの民話/岩波書店
魔法のオレンジの木―ハイチの民話


 この『魔法のオレンジの木』も絶版です。『ゲド戦記』を翻訳された 清水真砂子氏の翻訳。


 テイザン というおはなしは、北陸おはなし交流会の福井会場(6年前)で、石川県の語り手さんが


 語られたのを 初めてお聴きしたのですが、聴きながら このおはなしを 私は語る と確信したおはなし。


とても とても 好きになったおはなし



毎日 泉に 水を汲みに行く 姉と弟。姉の名前は ベリーナ。(いい名前ね)


ある朝、ベリーナは 水を汲む時に、水の中に指輪を落としてしまったの。


どうしましょう!!と思っていたら、水の中から 金銀にきらめく魚が顔を出したので、


「あたしの 指輪をみなかった?」と 魚に聞くと、魚は 水に潜り、指輪を咥えて戻ってきたの。 


ベリーナは礼をいって、自己紹介すると、魚は、「私は テイザン。泉の深いところに住んでいる」


「よかったら 桶においしい水を汲んできてあげるよ」というので、


ベリーナは 水を汲んできてもらったの。


何日かして、ベリーナの母親は、息子の汲んでくる水よりも、ベリーナの水の方が いるも澄んでいることに


気がつき、息子に 水を汲む時に気をつけるよう注意したの。


それでも やっぱり 息子の水は濁っているので、母親は 姉さんに負けない水を汲んでこい!と


息子を叱りつけたので、息子は、明日は ベリーナのあとを付けて行き、水を汲む場所をつきとめて

やると決心したの。


翌朝、姉さんの後を つけていくと、ベリーナは 泉のふちに立ち、歌い始めたわ。


その歌を聞くと、魚が現れ、桶を渡して 水を汲んできてもらうのを見たの。


息子が母親に 見たとおりのことを話すと、母親は、その魚は 悪魔だ!と話し、


その夕方には、ベリーナの後をつけて、母親もその光景を見たの。


母親は ベリーナと魚を引き離すために、翌日、ベリーナには野菜を売ってこい と市場へ送り出し、


夫と息子と一緒に 泉に出かけて行ったの。


そして、ベリーナの声に似ている 息子に歌を歌わせて、魚をおびき出し、


父親が捕まえ、殺してしまったの。


ベリーナは ずっと憂鬱で 午後からは 胸元が濡れている気がして、見てみると、


真っ白なブラウスに 血が3滴ついていたの。それは テイザンから聞いていた、母親がテイザンを


殺した証。


ベリーナは大急ぎで家に帰って、台所に入ると、母親は大きな魚を料理しているところだったの。


ベリーナは泉に駆けていき、歌を歌った・・・けれど 魚は 現れない。


ベリーナは家に帰り、外の椅子に座って、鏡を見ながら髪をとかしたの。


髪をとかしながら テイザンを呼ぶ歌を歌ったわ。歌いながら泣き 泣きながら歌ったの。


歌声を聞きつけた弟が、飛び出してきた時に 見た 光景。それは 椅子が ベリーナを座らせたまま


どんどん地面に吸い込まれていくの。ズズッ ズズッ。


弟は ベリーナに歌うのをやめさせるように叫ぶけれど、ベリーナには聞こえない。


弟は 母親を呼んで 母親が出てきた時には、ベリーナの両肩が スッと地面に吸い込まれたところ。


母親は駆け寄って、ベリーナの髪の毛を掴んだけれど、


その他は もう 全部 地面に吸い込まれていまっていたの。


母親は ずっと そこを動けず、息子も立ち尽くしていたわ。


地上に残っているのは・・・ベリーナの髪の毛だけ





テイザンは 精霊というか この世のものではないのね。


あちらの世界に 自ら 望んでむかったベリーナ。


テイザンの先を見通す力も 盛り込まれていて、不思議な力を感じる おはなし。


夏の夜に このおはなしを聴くと ひゃー 冷やーとなります。なので なるべく


夏の昼間(それも 特別な会)で 語ります。



この『魔法のオレンジの木』の中では、他にも 【馬とひきがえる】【名まえ】を持っています。


ハイチの民話 不思議なおはなしが いっぱいですよ。