10月も半ばですね。久しぶりにドドドドギマギしながら筆を取る、ではなく人差し指と親指をスライドさせています。お元気ですか。私は今月も元気よく働き、酒を飲み、ひとの彼氏とか夫とかを値踏みしたりこき下ろしたりしています。

 さて、今朝も冷えます寒いですと布団の中でスマホをいじっていると「恋しちゃったかも」と友人A子からLINEがあり、ハイハイとなりながら読み進めているとどうやら、乳幼児にかかりきりの妻に相手にされなくなった男から「タハハ…おじさん、キミとは、もっと早く、出会いたかったナ😅🤚💔💦」とか言われてそれに浮かれたA子が、しかもエッチ中私のことを下の名前で呼んでくれたの!って浮かれてて、私が、ハイハイとなっただけだった。A子によれば、男は「妻とは離婚する」と言っているらしい。ハイハイ。

 経験人数は3人とか、彼氏も好きな人も今はいないよとか、年上の男の人が好きとか散々な嘘を散々ついてきたし、妻とはうまくいってないとか、キミを愛してるとか、好きだとか散々な嘘を散々聞き流してきたから「妻とは離婚する」くらいではキュンともスンともしないのだけれど、可愛いA子はそうではないみたい。不倫が悪いとは思わないけれど、妻とは離婚すると話した男が実際に離婚したケースって確か2件くらいだった気がするし、既婚者だったおじさんが離婚して晴れてただのおじさんになった途端に、女たちは興味をなくすのか?だいたいそのあとすぐに破局している。

 土曜の夜と日曜の貴方がいつも欲しいから、と恋焦がれている期間が恋って1番楽しくて、土曜の夜と日曜どころか平日の5日間の貴方まで手に入ってしまうと、なんだか胃もたれがするものなのか。

 若い女の子たちが欲しい欲しいと恋焦がれるのは何も既婚男ばかりではなく、その多くは画面の中にいるイケメンたちだ。アニプレックスとウォルト・ディズニージャパンが手がけるアプリ「ディズニー・ツイステッドワンダーランド」は今や社会現象となりつつある、というのが小売店アルバイターである私の所感。ディズニー・ツイステッドワンダーランド、公式略称「ツイステ」はディズニー作品のヴィランズ(悪役)に焦点を当てたアドベンチャーゲームだ。登場するヴィランズはもちろんイケメン。声優も豪華(らしい)。でも、絵じゃん…という突っ込みは一旦横に置くとしても、関連グッズのアルカナカードとかいう一箱¥8,000近くするただのプラスチック製カードを女の子たちが夢中になって買い漁る様はなかなかに迫力がある。

 画面の中にいるイケメンといえば私も、見ず知らずのチャイニーズイケメンのインスタを小1時間も眺めていたことがある。小1時間後に「いや、これ角度補正かも」ってなったのだけれど。

 そのまま画面をスクロールしていくと、歌舞伎町か宗右衛門町か中洲でホストが「バースデーありがとうございます」ってシャンパンタワーを背景にピースサインをしていた。令和2年も手に入らない男のために財布の紐を緩める女の子は後を絶たないらしい。

 口説き落とせないホステスのためにおじさんたちがせっせと同伴したり、高額シャンパンをおろしたり、車やタワマンを買ってあげるのは、恋焦がれるという状態よりは、パチスロに5万スった客が、あともう1万突っ込めば当たるんじゃないかと錯覚し、当然に外し、ではもう5万、いや当たるまで突っ込まなければ今までスってきたうん万円が無駄になるといよいよ焦り、金をドブに捨て続けるシステムと似ている。どうせ男たちは「恋はゲーム」だとか「釣った魚には餌をやらない」とか言って踏ん反りかえっているので、私たちは口説き落とされないほうが賢いし、そうしたほうがより多くの経済効果を生むのです、と確か日本学術会議も同様の見解を示していたはず。

 という冗談はさて置き、やはり「手に入らない」ことが肝心な気がする。不倫も、画面の中の男たちも、ホストも。手に入ってしまえば、高血圧で薄毛で物忘れのやや多いおじさんでしかないし、画面からどうにか取り出してみたらやっぱり角度補正かよってなりそうだし、ホストなんて収入は不安定だし眉毛は細すぎるし歯は白すぎるし。それでも手に入らないからこそ、一方的に、無邪気に、そして無責任に愛せるものだけれど、手に入ってしまえば高血圧にも薄毛にも物忘れにも寄り添い、振り回されてやるほかないのだ。

 「手に入らない」ことが有料である場合はまだいい。ツイステもホストクラブも少しは日本を豊かにしたはずだから。では、不倫は?おじさんの自尊心を増長させただけな気がする。その結果、「タハハ…おじさん、キミとは、もっと早く、出会いたかったナ😅🤚💔💦」などという寒いLINEを独身の27歳に送る羽目になっただけな気がする。

 安定も、家庭も、子を持つ喜びも与えることなく、20代を棒に振らせるなら、夜中に自宅マンションのチャイムを連打されたり、会社に電話されたり、夜道をつけられて刺される、くらいのことは覚悟して欲しい。それが嫌なら、キャバ嬢を相手に有料の片想いをしていることだ。

 不倫も有料ならば文句はない。実際に、囲っている女に月々のお手当を欠かさない男はうん万といる。女たちも女たちでプロとしての自覚を忘れず、吐息を白い薔薇に変えて会えない日には部屋中に飾るし、ダイヤル回して、でもちゃんと手を止めてる。「結局はオレの金目当てかよ」などというセンチメンタルはこの際捨てて、男たちにも有料の不倫をして欲しいものである。


終わり




シリーズ〜いつかの晩ごはん〜
カツオの竜田揚げ