単身赴任かずモンのお弁当アーカイブ ☆彡(0048) 天麩羅

私の大好物のひとつに天麩羅があります。天麩羅には基本的に何でも使えます。春は蕗の薹に始まり蓬の天麩羅、秋は松茸の天麩羅や紅葉の葉も天麩羅になります。

 


京都大学前の「かふう」の山菜の天ぷら(撮影:高橋安世)


干し椎茸の天麩羅がとりわけ好きです。どんこを戻しておいて甘辛く煮付けます。それだけで1つの保存食で、お弁当のおかずの定番ですが、それを硬い衣でしっかり揚げると、以前の紹介したように、数日後でも美味しく食べられます。

玉葱と甘藷も天麩羅にします。牛蒡と人参の掻き揚げ、榎茸の平焼き、するめの天麩羅も大好きです。味付けした鶏肉も、唐揚げよりも天麩羅にした方が好きです。


高校生の時、とても好きだった友だちの家に行くと、するめの天麩羅が山盛りにしてあって、いつまでもそれを囓りながらおしゃべりをしていました。

ソフトなするめ、とくに土佐のお多福するめの天麩羅は最高級の味になります。するめは硬くならないようにうわっと揚げなければなりません。

天麩羅は、長崎天ぷらが起源で、東に伝わり、江戸の三味の一つとなり、江戸の郷土料理となりました。元は屋台で食べられた江戸庶民の大衆的な食べ物でした。

16世紀、南蛮料理を祖とする「長崎天ぷら」が誕生しました。衣に砂糖、塩、酒を加え、ラードで揚げる強い味の衣でした。17世紀、関西に渡り、野菜を中心としたタネをごま油などの植物油で揚げる「つけ揚げ」に発展しました。そして、江戸幕府開府とともに天ぷらは江戸に進出し、日本橋の魚河岸で商われる魚介類をごま油で揚げる「ゴマ揚げ」として庶民の間に浸透しました。

今は全国の料理です。揚げ油の処理が面倒な人は外食です。しかし一般的な家庭料理にもなっていて、日本の代表的な料理として高く評価されています。

揚げ油に椿油を使ったものを「金ぷら」と呼ぶ場合があります。伊豆大島では名物です。湯川秀樹さんはノーベル賞になった論文の発表で東京へ行ったときに「金ぷらを食べた」と日記に書いてありました。

食用油は空気に触れると酸化して変質します。料理の後に適度に交換する方が良いのですが、使用後はなるべく空気に触れない状態で冷蔵庫で保存します。自治体は水質汚染など生態系への悪影響や、下水道の詰まりを避けるため、廃油を排水口に流さないよう指導しています。廃油を固化させて捨てやすくする凝固剤が市販されています。

魚のすり身でできている練り製品を「天ぷら」と呼ぶのは高知などで見られます。高知市大橋通りの松岡の「天ぷら」がとても美味しく、高知で必ず立ち寄る店の1つです。鹿児島の薩摩揚げのように甘口ではなく、飽きることがありません。

高知市の松岡かまぼこ店のウェブサイトより




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