電磁波を消す男

カーボンマイクロコイル

元島栖二 Seiji Motojima（1941～）

岐阜大学工学部

宇宙の大渦巻きに始まり、地球の動き、そして遺伝子を構成しているDNAに至るまで、森羅万象の基本構造になっているのが「らせん」である。たとえばDNAは、二重らせん構造をとることにより、初めて遺伝子としての機能が発現できる。もし、この構造がなければ、遺伝子としての機能は発現されず、したがってこの世に生物は存在しない。

テクノマエストロ 1999 - ”電磁波を消す男”

ところがこれまで、人の手によって作り出された材料の中に、この構造を持つものはひとつもなかった。

一方、医療機器の誤作動や、航空、鉄道などの運転障害などをもたらす電磁波。電磁波から逃れるために、多くの電磁波吸収材が生み出されたが、いまだに決定的な解決方法は見つかっていない。

元島はらせん構造を持つ吸収剤を開発した。それはアセチレンを微妙なバランスで熱分解することによって生み出された。彼はこれを「カーボンマイクロコイル」と名づけた。

…しかし、なぜこの構造が電磁波を吸収するのか、それは、電磁波もらせん構造を持っているからだ。

らせん構造を持つもの同士は、電磁誘導を起こすという特性がある。電磁誘導とは、電磁波と物が触れ合った時に、ファラデーの法則にしたがい、誘導起電力による誘導電流が流れるという現象だ。この現象により、電磁波がコイルに触れると、そこに電流が流れる。つまり、カーボンマイクロコイルは電磁波を熱に変えて吸収してしまうのだ。