image
 

《愛そのものが生きている。》

 

男は遠くを力強く鋭い眼差しで見つめていた。

まるで未来を見ているような目で。

それは赤子の眼差しとも似ていた。

彼は未来について考えていたのだ。

 

深い思慮深い眼差しは、

どんな未来も見通していた。

 

先見の眼は、

未来に起こるであろう事案を感じていたのだ。

 

彼の目には、様々なものが映った。

 

匂いでさえも、

それは感覚の世界で視ることができたのだ。

 

目の前に広がる光景と、

未来に広がっている景色、

同時に二つの世界を捉えていた。

 

心は未来を、眼は目の前の景色を。

 

彼が心の眼に意識を強く置けば、

次第に目の前にある景色は消失していき、

彼の心に未来のイメージを見せた。

 

その力は、人間が心の気持ちを整理する時や、

空間を調和させる力そのものであった。

 

彼がその現象を起こそうとした時、

当然のように宇宙の大意識たち、

自然に在る意識たちは、エネルギーを送った。

 

彼の創造に協力することが、

すべてにとって心地よかったのである。

 

彼は、それらの愛を感じていた。

また、彼にはすべてのものの愛を感じ取る器量があったのだ。

 

木は豊かな自然の生命のエネルギーを彼に送り、

宇宙の愛の本質は、彼に盛大な愛のエネルギーを送った。

 

彼はそれらに創造することで応えていた。

本質たちは彼の創造に沸き、歓喜した。

 

ある時、彼は未来ではなく、

一つの魂を見つめていた。

 

地上に存在している、美しい魂。

 

その魂は、女性だった。

 

女性の中では相反した赤と蒼のエネルギーが、

調和を奏で、

勇壮なハーモニーが彼女の肉体からは溢れていた。

 

彼は彼女に見惚れていた。

 

彼の意識はとてつもなく速く動くことができた。

 

しかし、

彼の周りは彼の意識や考えを理解することができず、

彼は独りだった。

 

集団の中の個というものは、

一層独りであるという自覚を助長させ、

彼は感情を次第に消していった。

 

彼は、多くのものを感じることができたが、

多くのものへと喜びの眼差しを向けることができなかった。

 

彼はそれをほんの少しだけ寂しく想っていた。

 

そんな時、彼は彼女の纏っていた雰囲気を眼で見たのだ。

彼の眼は、エネルギーの匂いも感じ取る。

 

彼は生まれて初めて歓喜した。

 

心の底で生まれた。

 

彼の中の宇宙で生まれた愛は、

彼女へ向かおうと、彼の愛を彼女に伝えようと

とても興奮していた。

 

しかし、

彼には、

 

彼女へどんな眼差しを送っていいのか分からなかった。

 

そんな戸惑いの視線を、彼女は空間の中に感じ取った。

「誰かが私を見ているわ、きっと素敵で賢明な人に違いない。

私は彼に会わなくては。」

 

彼女の中の愛が湧き上がった。

 

彼女の中の愛が、彼の中の愛を場所を感じ取り、

お互いの愛は、お互いの魂を会わせることに成功した。

 

「あなただったのね。」

 

最初に言葉を発したのは、

彼女だった。

彼女は優しい眼差しを彼に送った。

 

 

彼の眼に入った力は次第に緩んでいき、

 

無駄な力は、、無駄な重荷は一切消えた。

 

「私はおまえ探していた。

 

おそらくずっと長い間おまえを探していたのだと思う。

 

愛している。

 

わたしはおまえへそう伝えねばならない。

 

伝えたかったのだ。」

 

 

一滴の涙が彼の頬を伝った。

 

彼の中で内包されていたすべての感情が解き放たれた。

 

 

「大丈夫よ、感情を解放することを恐れないで。

 

あなたの意識の速さ、

 

あなた自身を恐れないで。

 

わたしはあなたを理解することができるわ。

 

あなたのことのすべてが不思議とわかるの、

 

誰よりも優しい賢明な賢人よ。

 

私はあなたを愛しているわ。

 

私の中の愛が、あなたを探していた、

 

そう愛が私に教えるの。

 

私を見つめてくれてありがとう。」

 

 

 

彼は、彼女に抱きしめられた。

 

彼女の器量は、彼の感情の全てを包みこむことができた。

 

 

彼は、彼女とお互いのことを永遠に話し、

 

愛のある空間を創造したのである。

 

《愛そのものが生きている。》

 

image