「〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと」坂井律子 岩波新書を読んで | え!今度は膵臓癌!?〜印環細胞癌 (signet ring cell cartinoma)

え!今度は膵臓癌!?〜印環細胞癌 (signet ring cell cartinoma)

55歳の時に胃鏡手術寛解後、その7年後62歳でまさかの膵臓癌に罹患し、抗がん剤治療、膵頭十二指腸切除手術を受けた癌サバイバーです。

またまた、どこまで書けるかわかりませんが、出来る限りリアルタイムに
記録を残して行こうと思います。

坂井律子さんの
『〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと』
を読みました。
膵臓がん患者としての経験を通して、生命や病気、医療、そして人間関係について深く考えた内容を綴った本でした。

特に、mFOLFIRINOX (フォルフィリノックス) 
療法での副作用で、味覚障害を発症したときの
食事の取り方など非常に具体的な内容が書かれて
いて、腹落ちし易い内容でした。


1. がん患者のリアルな声

坂井さんは、自分ががん患者として感じた不安や恐怖、そして時折感じる希望について、とてもリアルに書かれています。
特に、がんと診断された瞬間の衝撃や、その後の治療過程での心の葛藤についての描写は、多くのがん患者が感じるであろう感情を率直に表現していて、深く共感できる部分が多かったです。
医療従事者とのコミュニケーションや、治療の選択に対する不安、家族や友人との関係の変化など、がん患者が直面する現実が赤裸々に描かれていて、心に響きました。

2. 〈いのち〉の再考

坂井さんは、がんをきっかけに〈いのち〉というものについて考え直すことになります。
がん患者として過ごす中で、彼女は自分の生命について、そして「生きる意味」や「死」といった大きなテーマに直面し、これまでの考え方が揺さぶられる経験をしています。
彼女の視点を通して、自分自身の〈いのち〉
について深く考えさせられました。

3. 医療システムへの提言

坂井さんが現代の医療システムに対して抱いている疑問や批判が率直に語られています。
医療従事者との距離感やインフォームド・コンセントの不足、治療の選択肢についての情報提供の不十分さなど、患者の立場から見たときの医療現場の課題が浮き彫りにされています。
ただ、坂井さんは批判するだけでなく、患者がより良い医療を受けるための具体的な提案や、自分自身ができることについても触れており、その姿勢に共感しました。

4. 人間関係の見直し

がんを経験することで、坂井さんは人間関係についても深く考えるようになったようです。
家族や友人、医療従事者との関係が、病気を通じてどのように変わったのかが描かれています。
特に、病気によって生まれる孤独感や、それをどう克服していくかについての考察は、多くの患者
さんやその家族にとって参考になる内容だと思います。
また、病気をきっかけに見直された「本当に大切な人間関係」の重要性についても触れられていて、私もこれまでの人間関係を考え直すきっかけになりました。

5. 未来への希望

この本は、がんという重いテーマを扱っていながら、坂井さんが未来への希望を持ち続けている姿勢が印象的です。
彼女は、がんとの闘いを通じて新たな価値観や生き方を見出し、それをどう未来に生かしていくかを考えています。
その前向きな姿勢には、単なる悲観ではなく、未来への希望が感じられ、大きな励ましを与えてくれます。




『〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと』は、がん患者としての体験を通じて、生命や病気、医療、人間関係について深く掘り下げた一冊です。
この本を通して、私は自分自身の〈いのち〉について考え直す機会を得るとともに、がん患者さんやその家族の想い対する理解を深めるヒントを貰えた気がしました。
坂井律子さんの率直な語り口と、未来への希望を持ち続ける姿勢は、多くのがん患者さん達にとって大きなインスピレーションとなるのではと感じました。



〈坂井律子さんのプロフィール:Wikipediaより〉

1960年生まれ。1985年東京大学文学部卒業後、NHK入局。札幌放送局、東京の番組制作局のディレクター、プロデューサーとして、福祉、医療、教育などの番組に携わる。特に出生前診断の問題については、番組制作のみならず、共著を含む数冊の著作を執筆。NHK放送文化研究所主任研究員などを経て、制作局青少年・教育番組部専任部長。2014年6月より山口放送局長、2016年4月より編成局主幹(総合テレビ編集長)。

2016年に膵癌への罹患が判明、2018年11月26日逝去。癌患者として、またジャーナリストとしての自らの経験と知見を書き綴り、逝去後の2019年2月、岩波新書『〈いのち〉とがん』として出版された。