旧来の風邪を「5類感染症」に格上げへ 武見厚労相が明言

2024/07/28

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旧来の風邪を「5類感染症」に格上げへ 武見厚労相が明言

旧来の風邪を「5類感染症」に格上げへ 武見厚労相が明言© theLetter

厚生労働省が従来から日常的に流行していた風邪を、季節性インフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などと同様に、感染症法上の「5類感染症」に位置付け、流行状況を監視する方針であることがわかりました。7月26日、武見敬三厚生労働大臣が記者会見で、筆者の質問に答えました。

厚労省は、「急性呼吸器感染症」(ARI)を新たに「5類感染症」に位置付ける省令改正を行う方針を示し、パブリックコメントを実施しています。

ただ、公開資料では、この「ARI」に従来の「風邪コロナウイルス」が含まれているとは明記しておらず、メディアもそのように報道していませんでした。

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従来の「風邪コロナウイルス」は感染症法で指定されておらず、監視対象となっていませんでした。「風邪」を「無類」から「5類」に格上げするのはなぜなのか、それはどういうことを意味するか、解説します。

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旧来の風邪を「5類感染症」に格上げへ 武見厚労相が明言

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コロナウイルス(国立感染症研究所より

新たに「5類」に位置付けられる感染症とは?

感染症法では、従来から知られている感染症を「1類」から「5類」まで分類しています。最も危険度の高い感染症とされる「1類」にエボラ出血熱など、次に危険度が高い感染症とされる「2類」に結核や鳥インフルエンザなどが分類されています。

2020年から新たに確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、当初未知だったこともあり「指定感染症」と位置付けられ、2021年から「新型インフルエンザ等感染症」という「2類相当」のカテゴリーに位置付けられていました。

2023年5月に、季節性インフルエンザ等と同じ「5類」に移行したことは、まだ記憶に新しいでしょう。

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旧来の風邪を「5類感染症」に格上げへ 武見厚労相が明言

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厚生労働省・感染症部会の資料より

この「5類」に今回、「急性呼吸器感染症」(ARI)という耳慣れない感染症が追加されようとしています。ARIの定義は次のとおりです。

(以下引用)

急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)あるいは下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群の総称。

(以上引用)

厚生労働省・感染症部会の資料より

この「ARI」と称される呼吸器の症状には、従来「5類」に位置付けられていた、季節性インフルエンザ、COVID-19、RSウイルスなどによる症状も含まれます。

今回は従来「5類」に位置付けられていなかった病原体による症状も広くカバーするということのようです。下の図でいうと、新たに「5類」に入るのは、黄色の部分に当たります。

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厚生労働省・感染症部会の資料より

この黄色の部分に従来の「風邪コロナウイルス」も含まれることを、今回の武見厚労相が明らかにしたのです。

「風邪のコロナウイルス」とは?

そもそも「風邪」とは何か。「風邪」と言うのは私たちがよく使う日常語ですので、その原因となるウイルスがあるわけです。それは、新型コロナと同様「コロナウイルス」の一種です。

国立感染症研究所は、これまでに7種類の「コロナウイルス」が知られていると解説しています。以下の表は、感染研の記事からの抜粋です。

風邪のコロナウイルスは4種類あり、それぞれ名前がついています。そのほかに、SARS(サーズ)、MERS(マーズ)、そして2019年末に確認された新型コロナの計7種類があるわけです。

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国立感染症研究所より

感染研はこのように説明しています。

(以下引用)

1. 風邪のコロナウイルス

ヒトに日常的に感染する4種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1である。風邪の10~15%(流行期35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とする。冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子供が6歳までに感染を経験する。我々はこれらのウイルスに生涯に渡って何度も感染するが、軽い症状しか引き起こさないため、問題になることはない。HCoV-229E、HCoV-OC43が最初に発見されたのは1960年代であり、HCoV-NL63とHCoV-HKU1は2000年代に入って新たに発見された。

(以上引用)

国立感染症研究所

この風邪のコロナウイルスについて、感染研は「これらのウイルスに生涯に渡って何度も感染するが、軽い症状しか引き起こさないため、問題になることはない」「風邪のウイルスHCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1は特に危険な病原体ではないため、感染症法での指定は無く…」と説明しています。

このような「風邪のコロナウイルス」をインフルエンザ、新型コロナ、RSウイルスなどと同じように、感染症法上の「5類」に位置付けようとしているのが、今回の改正案です。

位置付け変更の目的は?影響は?

「5類」に位置付けられると、発生動向、流行状況を把握し、公表する対象になります。「定点医療機関」を受診した患者数が週ごとに把握されます。「サーベイランス」と言われるものです。

厚労省の資料に「COVID-19を含む急性呼吸器感染症(ARI)サーベイランス体制を整備することについて了承得られた」と記され、その目的について次のように説明しています。

(以下引用)

・インフルエンザ、COVID-19、RSウイルス感染症等の感染症のほか、その他感染症を含む感染症について、流行中の呼吸器感染症を把握するとともに、検出された病原体分離株の解析を行うことで平時より呼吸器感染症の包括的なリスク評価を実施すること

(以上引用)

厚生労働省資料(2024年7月8日・感染症部会)より

監視の対象となる症状も「発熱の有無」も問わないとされています。

風邪を含むARIは、5類感染症に位置付けられると同時に「特定感染症予防指針」にも盛り込まれます。現在「インフルエンザに関する特定感染症予防指針」というものがありますが、これを廃止して、風邪を含むARI全体の予防指針が作られる、つまり風邪は予防の対象として位置付けられるということを意味します(現在の特定感染症予防指針にはワクチン供給についても触れられていますが、将来、風邪を予防するワクチンの開発・供給も検討対象になるのかもしれません)。

こうした改正方針は、7月8日の感染症部会で了承され、その際の資料議事録は公開されています。

5月27日の議事録も含め、「風邪」という表現は出てきませんでしたが、「急性呼吸器感染症というくくりだとコモンディジーズも入る可能性がありますので、医療機関が判断しやすいように、指針やQ&Aなどをお示しいただきたい」(日本医師会、笹本委員)という発言がありました。

「コモンディジーズ」とは、「日常的に高頻度で遭遇する疾患、有病率の高い疾患」のことを指し、その中に「風邪」も含まれています。

議事録には、医療機関の負担を懸念する声が出たものの、基本的に改正の方針自体は了承されたようです。

先ほど感染研が解説したような4種類の「風邪のコロナウイルス」の検査・検出も、発熱の有無に関わらず、実施される可能性があります。少なくともそれを否定する材料は今のところありません。

筆者は、武見大臣に今回の改正による影響についても尋ねましたが、新たな「特定感染症予防指針」を作ることも含めて、明確な回答はありませんでした(後掲の文字起こし参照)。

「風邪を含む」と説明せずにパブコメを実施中

新型コロナを5類に変更する際もそうでしたが、今回、風邪を含む「ARI」を5類に位置付けるには「省令改正」という手続きで可能となります。省令改正とは、大臣の職権で決められるルール変更手続きなので、国会を通す必要はなく、内閣一致の閣議決定も不要です。

そのためのパブリックコメント(意見募集)が始まっており、8月16日まで実施されます。

改正案の内容は「省令案(概要)」と書かれた2ページのファイルで説明されていますが、「2.改正の概要」のあたりにポイントがまとまっています。

ただ、「風邪のコロナウイルス」が含まれることは明記されていません。そのため、メディアの報道も従来の「風邪」が5類に格上げされるという報じ方はしていません。

先週、筆者は厚労省の担当者に問い合わせて、ARIに「風邪のコロナウイルス」が含まれることを確認していました。

ならば、きちんと国民に向けて説明すべきだと考え、武見大臣の会見で問いただしたわけです。なかなか明確に回答しませんでしたが、3回目の質問でようやく回答しました。

かつての新型コロナのように、「5類感染症」は新型インフルエンザ等特別措置法の適用対象ではなく、外出自粛・営業制限などの行動制限措置が取られることはありません。ただ、この変更がどのような影響をもたらすのか、注視していく必要がありそうです。

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旧来の風邪を「5類感染症」に格上げへ 武見厚労相が明言

旧来の風邪を「5類感染症」に格上げへ 武見厚労相が明言© theLetter

省令改正のパブリックコメント

厚生労働大臣記者会見 文字起こし

7月26日午前の定例会見

筆者 急性呼吸器感染症(ARI)を感染症法上の「5類感染症」に追加する方針についてお尋ねしたいと思います。

現在、省令改正のパブコメが行われてまして、そこで明確には説明されていないようなのですが、 従来の風邪コロナウイルスによる感染症を5類に位置づける変更だというふうに理解してよろしいのでしょうか。そうだとすれば、風邪を今回、5類に格上げする目的はなんでしょうか。

また、これによってですね、他の感染症と同じように、今後はその風邪の流行状況をいちいち発表したりですね、 あるいはその医療機関や国民生活に影響が出ることも予想されます。今回の位置付け変更によってどのような影響が出るのか、教えてください。

武見大臣 今月開催をいたしました感染症部会におきまして、この季節性インフルエンザ、 それから新型コロナウイルス感染症など、個別に把握している感染症以外の急性呼吸器感染症の発症、発症時状況を把握をし、平時より呼吸器感染症の包括的なリスク評価を行うために、感染症法等の「五類感染症」に位置づけました。

これは、平時より呼吸器感染症の包括的なリスク評価を行うためであります。国際基準に準じまして、急性呼吸器感染症を一体的に把握する体制を整備する方針もそこで了承されております。

今後は、報告を求める具体的な症例について検討することとされておりますけれども、この定点医療機関が報告すべき対象が追加されることになるため、 詳細が決まり次第、定点医療機関における報告に関わる事務負担についても配慮をしつつ、定点医療機関に対して、ご理解、ご協力を促していきたいと考えています。

筆者 今の答えですと、従来の風邪のコロナウイルスは入ってるんでしょうか、入っていないんでしょうか。今回パブコメで付されている案ですね。

大臣 従って、これ平時より呼吸器感染症の包括的なリスク強化を行うためと、平時よりの包括的な感染症のリスク評価という点がその基本的な考え方であります。

筆者 今、国民に意見募集を求めてらっしゃるわけですので、そこは明確に、 今回の改正によって従来の風邪が「五類」に入ることになるのか、入らないことになるのか、そこは明確にご説明いただけないでしょうか。でないと、意見募集をされてる意味が、ちょっと意図がわからなくなってしまうんですが。

大臣 あの、急性呼吸器感染症とはですね、急性呼吸器感染症は、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)あるいは下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群を総称を総称してこの急性呼吸器感染症と言います。 新型コロナウイルス感染症とは異なる、風邪の原因となるコロナウイルスもここに含まれます

筆者 はい、ありがとうございます。「含まれる」というふうにお聞きしました(注:武見大臣うなづく)。ありがとうございます。(文字起こしここまで)

 

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