マイナンバーと口座の紐付けを拒否するなら、2つのリスクに備えよう

2024/05/16

 政府としては2024年12月2日に、現行の健康保険証の新規発行や再発行を停止し、マイナ保険証(健康保険証の登録を済ませたマイナンバーカード)に一本化したいようです。

そのため最近はニュースサイトを見ていると、マイナ保険証に対する医療関係者などの不安の声を取り上げる記事が、だんだんと増えている印象があります。

こういったマイナ保険証のニュースに隠れて、あまり注目されていないのですが、銀行、信用金庫、信用組合などの口座を、マイナンバーと紐付けする動きが進んでいます。

例えば2024年4月からは口座を開設する際に、口座にマイナンバーを付番するのかを、銀行などが顧客に確認するようになりました。

あくまでも任意になるため、拒否しても問題はないのですが、拒否する方は次のようなリスクに、備えておいた方が良いと思います。

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マイナンバーと口座の紐付けを拒否するなら、2つのリスクに備えよう

マイナンバーと口座の紐付けを拒否するなら、2つのリスクに備えよう© マネーの達人 提供

口座にマイナンバーを付番する「預貯金口座付番制度」

預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律、いわゆる口座管理法が2024年4月に施行されました。

これを受けて銀行などは口座を開設する際に、口座にマイナンバーを付番するのかを、顧客に確認するようになったのです。

また将来的にはマイナポータルを通じてスマホやパソコンからも、口座にマイナンバーを付番できるようになるそうです。

このように口座に対してマイナンバーを付番する制度のため、預貯金口座付番制度という名称になっていますが、実質的には口座とマイナンバーの紐付けだと思うのです。

それなのに付番制度という名称にしたのは、紐付け制度にすると国民からの反発が大きくなって、目的を達成できないからだと推測します。

いずれにしろ制度は始まっているため、銀行などは口座を開設する際に、マイナンバーを付番するのかを顧客に確認しますが、強制ではないとデジタル庁のウェブサイトに記載されています。

またデジタル庁のウェブサイトには、付番した場合のメリットが記載されています。

それは例えば災害時や相続時に、一つの金融機関の窓口に行くと、マイナンバーが付番された別の金融機関の口座の所在を特定できると共に、それに関する情報提供を受けられる点です。

これにより被災して亡くなった家族が、どの銀行で口座を開設していたのかを調べやすくなります

また自身が被災した場合には、避難先の近くにある銀行で、別の銀行の口座にある現金を引き出すことが可能になるため、確かにメリットではないかと思います。

年金受給者は公金受取口座が自動的に登録される

預貯金口座付番制度と勘違いされやすい制度として、公金受取口座登録制度があります。

こちらは国からの給付金などが振り込まれる口座を、1人につき1つだけ登録して、マイナンバーと紐付けしておくと、事務手続きがスムーズに進むため、早期に振り込まれるというものです。

年金受給者は登録に同意しないと意思表示した場合を除き、自動的に年金の受取口座が公金受取口座に登録され、その口座がマイナンバーと紐付けされるようになります。

日本年金機構は年金受給者の意思を確認するため、書留郵便で書類を送付しますが、これに対する返送を忘れた場合にも、登録と紐付けが自動的に実施されます。

一方で預貯金口座付番制度の方は、銀行などから送付された書類に対する返送を忘れても、口座にマイナンバーは付番されません。

つまり付番しても良いという意思表示があった時だけ、付番される仕組みなのです。

通帳がないと口座の所在を調べるのが難しい

災害救助法が適用された地域で、家族が被災して亡くなったり、行方不明になったりした時に、その方が契約する生命保険の所在を、一括で調べる方法があります。

それは生命保険契約照会制度であり、2021年7月からは平時に病気で亡くなったり、認知能力の低下が見られたりした家族が契約する生命保険の所在も、一括で調べられるようになりました

また損害保険については自然災害等損保契約照会制度、各種の共済については災害時共済契約照会制度という同様の制度を、災害時に限って利用できます。

このように生命保険、損害保険、各種の共済には、契約する保険の所在を一括で調べる制度があるのです。

一方で銀行などの口座の所在を一括で調べる制度はないため、亡くなった家族が口座を開設していた可能性のある銀行などに、個別に問い合わせる必要があります。

その時に大きな手がかりになるのは、銀行などが発行する通帳になりますが、ネット銀行では基本的に発行されません。

また他の銀行では通帳の有料化を進めているため、今後は通帳を持たない方が増えていく可能性があります。

こういった点から考えると災害時や相続時に、一つの金融機関でマイナンバーが付番された別の金融機関の口座の所在を特定できるのは、意外に便利だと思うのです。

口座の一覧表を作って家族と共有しておく

銀行などの口座の所在を一括で調べる制度はないため、口座にマイナンバーを付番しなかった場合、将来的には災害時や相続時に不利になる可能性があります。

そのため付番を拒否する場合は次のような2つのリスクに、自助努力で備えておく必要があるのです。

・通帳を持っていない、または災害で手がかり(通帳、郵便物、税金関係の書類など)が消失したため、自身が亡くなった後に家族が口座の所在を特定するのが難しくなるリスク

・いくつかの口座の所在がわかっても、すべてを見つけられなくて漏れが生じるリスク

もっとも簡単な方法としては、口座を開設している銀行名、支店名、口座番号、口座の種類などが記載された口座の一覧表を作って、家族と共有しておくことです。

一覧表を作る時には口座情報に加えて、契約している生命保険会社や損害保険会社の情報、口座を開設している証券会社の情報なども記載しておくと、さらに便利になると思います。

また通帳の発行が有料化されたり、未利用口座に管理手数料が徴収されたりしているため、口座の一覧表を作る前には使っていない口座を整理しておくのです。

このような口座の一覧表をきちんと作っても、災害で消失するリスクがあります。

そのため家族に対する遺産の配分が決まっているのなら、公証役場で公正証書遺言を作ったり、自筆証書遺言を法務局で保管してもらったりするのです。

いずれについても手数料がかかりますが、災害で消失するリスクだけでなく、遺言書が偽造や書き換えされるリスクも回避できるのです。

 

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