不記載の自民議員ら巡りやまぬ告発、高額議員は「検審」判断が焦点…決着に「数か月から一年超」の見方も2024/05/01

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 自民党派閥の政治資金規正法違反事件を巡り、派閥からのキックバック(還流)分を政治資金収支報告書に記載していなかった所属議員らの刑事責任追及を求める告発状が相次いで検察に提出されている。同法違反(虚偽記入)で在宅起訴された安倍派の松本淳一郎・会計責任者(76)の初公判を10日に控える中、政界に影響を及ぼしかねない「火種」がくすぶっている。(萬屋直、小野寺経太)

■これまでに13人

 「国会議員が長年にわたり『裏金』をつくってきたのに、議員の摘発はわずかだ」。事件の端緒となる告発をした神戸学院大の上脇博之(ひろし)教授は、東京地検特捜部の捜査についてそう語る。

 特捜部は昨年以降、派閥側や所属議員側を捜査し、今年1月に刑事処分を発表した。派閥側では松本被告と二階、岸田両派の会計責任者を在宅起訴や略式起訴としたが、いずれも事務職員で、国会議員である派閥幹部の共謀はなかったと判断。議員側は安倍派だけで元議員含め約100人を捜査したものの、議員本人は不記載が4000万円を超えた同派3人の起訴(在宅、略式含む)にとどまった。

 派閥や議員側は特捜部の認定に沿って収支報告書の訂正を届け出たが、「議員側が自ら訂正した範囲内では、少なくとも不記載の罪は成立するはず」と上脇教授。既に不記載が高額だったケースを中心に議員13人や秘書らに対する告発状を東京地検に提出し、今後も順次告発するという。

 このほか市民団体からも告発が出ており、▽同法が原則禁じる政治団体から議員個人への寄付▽議員個人の所得を申告しなかった所得税法違反――に当たるとしている。

■刑事処分を左右

 刑事告発は、犯罪にあたる事実を特定し、根拠資料を添えて行う必要がある。いったん捜査を終えた検察当局だが、告発要件が整っていれば受理し、再捜査することになる。ただ、検察幹部の一人は「新事実がない限り、再捜査で判断が変わることは想定できない」としており、既に立件が見送られた議員への告発は不起訴となる公算が大きい。

 一方、自民党の調査では、安倍派議員11人が不記載を「認識していた」と回答した。こうしたケースでは、同じ不起訴でも犯罪の疑いがない「嫌疑なし」ではなく、犯罪は認定するが起訴は見送る「起訴猶予」や、犯罪を認定する証拠が足りていない「嫌疑不十分」となる可能性がある。上脇教授は起訴猶予や嫌疑不十分の場合には市民で構成する「検察審査会」(検審)に審査を申し立てる考えで、検審の判断が焦点になる。

 過去には小沢一郎衆院議員の資金管理団体を巡る事件で、小沢氏の不起訴(嫌疑不十分)に対して検審が2度の起訴相当の議決を出し、小沢氏は強制起訴された(後に無罪確定)。2019年参院選の大規模買収事件では、検審の「起訴相当」を受けて検察が不起訴の判断を一転させ、買収された地元政治家を略式起訴するなど刑事処分が左右されたこともある。

■遠い決着

 自民党は安倍、二階両派の元幹部や不記載額500万円以上の議員ら39人を離党勧告や党員資格停止などとする党内処分を決定したが、検察の再捜査や検審の審査が続く見通しで、「決着」とはなりそうにない。

 先月28日に投開票された衆院3補選では、自民党は候補者を擁立できなかった選挙区を含めて全敗。一連の「政治とカネ」の問題がいかに有権者の不信を深めているかを印象づけた。

 元東京高検検事の粟田知穂(ともほ)・慶応大教授は「告発を受けた捜査で収支報告書の作成に関わった国会議員がいると判明すれば、検察が起訴猶予とし、さらに検審が刑事責任を問うべきだと判断することは考えられる」と指摘。「事件関係者が多く、再捜査や検審の審査には数か月~1年超かかるだろう。政治への影響はしばらく続くのではないか」との見方を示している。

 ◆派閥の政治資金規正法違反事件=安倍派と二階派ではパーティー収入のノルマ超過分を派閥側から所属議員側に還流するなどして裏金化し、岸田派では収入の一部を派閥の収支報告書に記載しなかった。検察が認定した不記載額は安倍派が計約6億7500万円、二階派が計約2億6400万円、岸田派は計約3000万円。自民党は起訴された3議員以外に85人(議員82人、支部長3人)に記載漏れがあったとの調査結果を公表し、30日現在、84人が収支報告書を訂正した。

 

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