国会で「もう詰んでいるんです!」マイナンバー流出の「週刊現代」記事は国会でなぜ問題にされたのか 2024/04/09

流出「実行犯」の告白記事

「将棋で言えば、もう詰んでいるんです。詰んでいるのに、詰んでないと強弁している。どうなんですか」

「参議院インターネット中継」に録画されている4月2日の参議院厚生労働委員会において、無所属の上田清司議員は「週刊現代」の記事(‘23年7月29日&8月5日合併号) をかざしながら、年金局と日本年金機構の「欺瞞の隠蔽行為」を厳しく追及している。

追及する上田清司参議院議員

追及する上田清司参議院議員© 現代ビジネス

6年前、厚生年金受給者の個人情報やマイナンバーが、中国のネット上に大量流出しているとの「通報メール」が、年金機構の「法令等違反通報窓口」に届けられたことがあった。年金局と年金機構は、情報流出の事実を隠蔽し、国民と国会を騙し続けている、として上田議員はこう質した。

「『週刊現代』には、年金個人情報やマイナンバーを中国に流出させた張本人のインタビュー証言が掲載されています。厚生年金受給者の個人情報の入力業務を請け負っていたSAY企画の切田精一社長の証言です。このインタビューで切田社長は、年金機構から請け負った入力業務を全部、中国に再委託したと言っている。

年金局も年金機構も、これまでSAY企画が中国に再委託したのは「氏名とフリガナ」だけで、個人情報やマイナンバーは中国にわたっていないとしてきた。矛盾する証言であり、国会答弁です。あきらかにおかしい。どういうことなのか」

答弁に立った年金局の巽慎一年金管理審議官は、事前に準備したペーパーを棒読みしながら、過去の国会答弁に問題はないとして、その根拠をあげていた。

「『氏名とフリガナ』しか中国にわたっていないということは、日本IBM社の調査で結論づけられております。また、この『IBM報告書』を検証したTIS社(銀行系システム会社)の報告書でも、IBMの結論は妥当と考えると書かれています」

本人は、とんと気づいていないようだが、その口調といいその身振りといい、ウソがバレながらも必死で強弁しているということが自然に滲み出ていた。

「つぶしたのはあなたたちだ!」

「バカなことを言っているんじゃない」と上田議員は一喝。さらにこう追及している。

「日本IBM社にしろTIS社にしろ、年金機構から業務を請け負っている利害関係者じゃないですか。日本IBMは、過去14年間で年金機構から累計約73億円もの支払いをうけており、TIS社も過去8年間で累計約1億6000万円もの支払いを受けている。

ズブズブの関係じゃないか。普通は、利害関係者には調査させないものです。調査から外すのが常識です。これは誰が見てもおかしい。おかしいと思わないのは、あなただけですよ。将棋で言えば、もう詰んでいるんです。詰んでいるのに、詰んでないと強弁している。どうなんですか」

巽年金管理審議官は、大きなため息をつくだけで、何もまともに説明できないでいた。

この日はじめて、SAY企画による情報流出を知った武見敬三厚労大臣は、憮然たる表情で答弁に立った。

「結果として見れば、SAY企画との契約にもともとの間違いがある。このような疑念を抱かれないよう、年金機構に関しては情報管理を徹底してやっていく」

質問の最後に、上田議員はこうも詰め寄っていた。

「社会保障審議会年金事業管理部会でも、当時、この問題を調査し、『中間報告書』をまとめている。両論併記だが、情報流出の可能性が高いと書かれている。本来なら、この『中間報告書』を公表し、国民に注意喚起すべきだった。そのチャンスはあった。なのに、あなたたちがつぶした。つぶしたのはあなたたちだ」

ウソをついていることを自覚していた巽年金管理審議官は、審議終了後、逃げるように議場をあとにしている。おそらくは、武見大臣にも本当のことを説明することなく、これまでのウソをつき通すのだろう。

近くこの「現代ビジネス」上で再開する連載第二弾においては、年金局と年金機構が隠し続ける入札にまつわる不正工作や、年金事業管理部会の「中間報告書」がつぶされた経緯についても、詳細明らかにしていくことにしよう。