コロナ禍で梅毒 なぜ増え続けた? 今も感染拡大中…マスクや手洗いでは防げず 治っても再感染 2024/04/09

コロナ禍で梅毒 なぜ増え続けた? 今も感染拡大中…マスクや手洗いでは防げず 治っても再感染

コロナ禍で梅毒 なぜ増え続けた? 今も感染拡大中…マスクや手洗いでは防げず 治っても再感染© ヨミドクター(読売新聞) 提供

 性感染症の「梅毒」の感染者数が、3年連続で過去最多を更新しています。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年以降、人との接触が減ったことで、インフルエンザを始め、さまざまな感染症の患者が減りました。ところが、梅毒は逆に増え続けています。なぜなのでしょうか。

3年連続で過去最多を更新中

 国立感染症研究所(感染研)によると、梅毒の感染者は21年に7978人(男性5261人、女性2717人)と現在の統計方式になってから最も多くなり、22年には1万人を突破。23年は1万4906人(男性9608人、女性5298人、暫定値)になりました。今年もすでに、3053人(3月31日までの集計)と3000人を超え、このうち約4人に1人に当たる751人が東京都の患者です。

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コロナ禍で梅毒 なぜ増え続けた? 今も感染拡大中…マスクや手洗いでは防げず 治っても再感染

コロナ禍で梅毒 なぜ増え続けた? 今も感染拡大中…マスクや手洗いでは防げず 治っても再感染© ヨミドクター(読売新聞) 提供

 年齢別でみると、男性は20~50歳代と幅広く、女性は20歳代が中心です。

 コロナ禍では、人との接触を極力避け、手洗いやマスクの着用を徹底するといった感染予防策が強化されました。それにより、インフルエンザをはじめとする多くの感染症は流行しませんでした。

 コロナ禍でも梅毒が広がった理由について、日本性感染症学会理事の 渡會(わたらい) 睦子さん(東京医療保健大教授)は、「性風俗産業を介した感染に加え、年上の男性と金銭目的で交際する『パパ活』などと呼ばれる活動が中高年男性と若い女性に広まっていることが、要因の一つとして考えられます」と説明します。こうした行為の実態をとらえるのは難しいですが、渡會さんは、全国的に減っている15~24歳の中絶率が、東京都ではあまり減っていないと指摘します。

「SNSでつながる」が増加の一因か

 コロナ禍では飲食店など多くの接客業が閉店に追い込まれましたが、警察庁の統計では、19~21年の全国の性風俗店の届け出件数はほぼ横ばいでした。感染研によると、新型コロナの影響がなかった19年の感染者のうち、直近6か月以内に性風俗産業に従事した女性は740人(女性全体の33%)でしたが、コロナ禍の21年には、1010人(同38%)に増加しました。風俗産業を通じての感染が抑えられていないことが分かります。

 風俗店以外を通じた広がりを懸念する声もあります。風俗店では、従業員に定期的に性感染症の検査を実施している店舗もありますが、SNSやアプリなどで直接やりとりして性的サービスを提供する場合は、互いに検査をしているかどうかの確認がより難しく、気がつかないうちに性感染症を広げている可能性があります。感染者が突出している東京都では、保健所などでHIVと梅毒に感染していないかを名前を明かさず無料で調べられますが、コロナ禍で検査を受ける人は減りました。

 渡會さんは、性風俗店に勤務する女性や経営者に啓発活動を行うだけでなく、「未成年に対して、学習指導要領に沿って性教育を徹底するだけでも効果があります」と訴えます。

治ってもまた感染することも

コロナ禍で梅毒 なぜ増え続けた? 今も感染拡大中…マスクや手洗いでは防げず 治っても再感染

コロナ禍で梅毒 なぜ増え続けた? 今も感染拡大中…マスクや手洗いでは防げず 治っても再感染© ヨミドクター(読売新聞) 提供

梅毒トレポネーマ(国立感染症研究所提供)

 梅毒は、「梅毒トレポネーマ」という細菌に感染することで発症します。手洗いやマスクでは防げず、主に感染者と粘膜や皮膚の接触を伴う性的な接触でうつります。2~3週間すると、性器や肛門、口など、細菌が侵入した部位にできものができますが、痛みはほとんどありません。いったんは症状がなくなることが多いため、この時点では感染に気がつかないこともあります。

 治療をしないで3か月以上たつと、体に赤い発疹が現れます。さらに長い期間が経過すると、心臓などの臓器や血管、骨などに重い症状が出ることもあります。

 感染した場合は、抗菌薬を使って治療します。一度治っても、何度でもかかることがあります。

妊婦が感染すると赤ちゃんに重い障害も

 妊婦が梅毒に感染すると、死産や流産をしたり、おなかの赤ちゃんが「先天梅毒」になったりする恐れがあります。赤ちゃんが感染すると、難聴や知的障害などを引き起こすことがあります。

 日本産婦人科医会は23年、妊婦への感染の広がりを調査しました。 分娩(ぶんべん) を取り扱う全国2005か所の医療機関を対象に、22年に出産した妊婦について尋ねたところ、67.1%の医療機関が回答。全体約45万5700人のうち、感染していた妊婦は376人で、その割合は、前回調査(16年)の3.3倍でした。調査を担当した東邦大産科婦人科准教授の早田英二郎さんは、「赤ちゃんに感染させないためには、早期に治療を始めることが重要です。『自分は大丈夫だろう』と過信せず、少しでも気になることがあれば検査を受けてください」と呼びかけています。(読売新聞メディア局 道丸摩耶)

 

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