知らぬは客ばかりなり 外食産業実はこんなふうに作ってます 生姜焼きから、ネギトロ、クリスマスケーキまで こんなの食いたく
http://www.asyura2.com/13/health16/msg/253.html 2014 年 1 月 17 日

知らぬは客ばかりなり 外食産業実はこんなふうに作ってます
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/37893

一覧表付き 生姜焼きから、ネギトロ、クリスマスケーキまで

食用に向かない材料をくっつけて美味しくしたり、新鮮さを保ったり……最先端の技術を使えば、ほら、できあがり。外食に出掛けた先で知らないうちに口にしている「製品」、こんなにあるんです。
家庭料理とはまったくの別物

大きな赤身の塊肉。それが台に載せられ、機械に吸い込まれていく。上から剣山のような何十本もの針が降りてきて肉に突き刺さった。針の先から液体が注入された瞬間、ボワッと肉が膨張し、ひとまわり大きくなる。針の抜き刺しが何度も繰り返され、その肉の「加工」が終わる。

加工後の肉をスライスすると、そこには以前の姿からは想像もできないような美しい霜降りが現れた―。

これが、「インジェクション肉」の作り方だ。肉に注入されたのは、液状化させた牛脂。同時に軟化剤なども添加されるため、あっという間に脂がのって柔らかい高級霜降り肉のような味わいに変わる。

ホテルや百貨店などの食材偽装問題で話題となって初めて、このような肉が存在することを知った人も多いかもしれない。しかし、こうした手法は以前から外食産業では当たり前のように使われていたもの。食品加工技術は目覚ましい進歩を遂げているという。

「外食をする場合、自宅で料理して食べるものとはまったく別の〝食品〟を食べていると思ったほうがいい」

そう話すのは、食品問題に詳しいジャーナリストの椎名玲氏だ。外食産業では、インジェクション以外にも、一般の家庭料理からは考えられないような〝調理法〟が施されている。今回、本誌はさまざまな食品の作られ方を取材した。

椎名氏によると、加工肉には、冒頭で紹介したインジェクション肉の他に2つの種類があるという。

「細かな肉を集め、結着剤でくっつけて形を整える『結着肉』と、硬い肉の筋を抜いて酵素添加剤などを加えて柔らかくした『柔らか加工肉』です。とくに結着肉は相当な量が流通しています。サイコロステーキなどは、内臓や脂身、すね肉などの細かい端肉を結着剤で固めてカットした結着肉。激安の焼き肉店などで提供されるカルビやハラミなどにも多い。結着肉を焼いてみると、脂分が多いため異常に火が上がったり、肉がばらけるという特徴が見られます」

肉に使われる結着剤は、リン酸ナトリウム、カゼインナトリウム、増粘剤などの食品添加物。こうして作られた肉も「ステーキ」などと表示されていたことは、一連の食材偽装問題で話題になったわけだが、気持ち悪いと思うかどうかはともかく、きちんと調理すれば安全性にはかかわらないという。

そもそもの始まりは、消費者を騙して店舗が儲けるためではなく、利用法が限られていた牛肉を活用するために生まれた技術だった。

「業界で言う『ババ牛』、つまり乳の出なくなったホルスタインの経産牛は、硬くてそのままでは食べられないような肉質ですが、インジェクションの技術によって、食肉として利用する価値が出てきたのです」(「食の安全・安心財団」事務局長・中村啓一氏)

「柔らかい」「脂がのっている」ということが美味しさの条件になっているいま、それを安価に実現できる加工技術が急速に普及していった。それは魚介類にも広がり、こんなメニューにも最新の〝調理〟技術が駆使されている。

回転寿司店やスーパーなどで販売されるネギトロの軍艦巻きだ。マグロの中トロを叩いたものに刻んだネギが載ったもの―なんて思ったら大間違い。

安価なものの場合、キハダやカジキといったマグロの「赤身」が使われる。口に入れたときの滑らかな食感は、ショートニングという人工油脂や精製ラードが混ぜられているためだ。

「安いネギトロは全体の2割が、魚ではなく脂です。ただし、それだけでは味が薄くなってしまうので、化学調味料なども入っていて、美味しいと感じるように味が調整されているのです」(食品安全教育研究所代表・河岸宏和氏)

ネギトロを醤油に付けたら、あっという間に醤油皿全体に脂が広がる、なんて経験はないだろうか。その理由はこんな製法にあったというわけだ。
カットサラダは嫌かも

脂は、食感を滑らかにするだけでなく、うま味を出すためにも使われる。たとえば、レトルトカレー。通常、カレーは野菜や肉などさまざまな具材を入れて煮込まれるため、食材から自然なうま味が溶け出す。しかし、美味しいカレーを安価で提供しようと思うと、具材は最低限の量に抑えて作らねばならない。そこで活躍するのが「牛脂」だ。

肉のうま味をもっとも手軽に出せるのが、この牛脂。だが、ルーの中に入れると分離してギトギトになってしまうので、脂をルーと一体化させる乳化剤が投入される。カレーの場合、安いものほど牛脂や乳化剤が多く含まれる傾向が強い。

価格を安くするために、「カサを増す」という手法も多用されている。

「ハンバーグや肉まんの具、ミートボールなどでも、植物性たんぱく質、要は大豆などから作られたたんぱくが半分以上入ったものが普通です」(前出・河岸氏)

とくに顕著に表れているのがエビフライだろう。冷凍食品のものに多いが、エビパウダーで風味づけしたタラのすり身などでエビを覆い、衣をつけて揚げている。本体のエビにも「カサ増し」がされているものもあり、筋を切ってまっすぐにし、長く伸ばす加工が施されているという。中国など海外の工場で製造され、「のばしエビ」として輸入されている。安価なうえに、油の吸収も非常によく、高カロリーなフライが完成する。

美味しさや安さだけではない。「新鮮さ」の演出も可能だ。食品ジャーナリストの岩館博人氏が解説する。

「野菜は普通、切ってから3時間もすれば切り口から黄ばんできますが、カット野菜やカップに入ったサラダなどは、何時間たっても変色せず新鮮なままです。これは、殺菌剤のプールに浸してからパックされているためです」

食品に使われるのは、次亜塩素酸ナトリウム。高濃度だと漂白剤として使われる薬品だが、薄めれば殺菌効果のみで安全性は問題ないとされる。食材そのものではなく、たとえばパックされた刺身を新鮮に見せるための業務用ラップや照明など、見せる技術も普及しているという。

今の時期に出回り始めるクリスマスケーキは、12月23~25日に需要が集中するため、管理が難しい商品の一つだ。クリームを使った生ものではあるが、直前に作っていたのでは間に合わない。そこで力を発揮するのが、冷凍技術だ。

「事前に作ったものを冷凍して保存し、店頭に並べる前日に解凍します。ショートケーキなどの場合は、スポンジの状態で冷凍し、販売前日にデコレーションを仕上げる方法もあります」(前出・岩館氏)

売れ残った場合、翌日に安売りされるのが常だが、それでも売れなかったケーキは、上に載ったトッピングなどは再利用に回され、残りは家畜のエサにされることもあるという。
表示を見てもわからない

素人には加工しようがないと思われる食材にも、鮮度を保つための見えない技術が隠されている。たとえば米。加工食品用に米を炊く際は、炊飯添加剤が入れられており、冷めても柔らかくてうま味があり、時間が経っても黄色く変色しないご飯ができあがる。こうしたご飯は、おにぎりや弁当だけでなく、外食チェーン店でも使われている。

おにぎりや弁当の場合、添加物が入っているか否かは、表示されている原材料名を確認すればいいと思うかもしれないが、ここに食品表示の落とし穴がある。

「原材料に添加物が使われている場合、その量がわずかであれば『キャリーオーバー』として表示しなくてもいいことになっているのです」(前出・椎名氏)

つまり、おにぎりの原材料のご飯は表記する必要があるが、そのご飯が炊かれる際に添加された物質は記載の必要はない。農林水産省が規定している現在の表示基準では、消費者は隠れた材料を知ることはできない。飲食店の場合は、そもそも表示義務がない。だからこそ、あの手この手で、商品をより安く、より見栄えよくする方法が編み出されてきた。その結果、知らぬは客ばかりなりという状況になっているのだ。

ファミリーレストランや居酒屋、スーパーなどで提供される食品の作られ方について、左ページの表にまとめたので、併せて参考にしていただきたい。すべての食品がこのように作られているわけではないが、業界では常識的に使われてきた技術ばかりだ。

「外食で使われている食品は、『食べもの』ではありますが、工業製品のように作られている」(前出・岩館氏)という実態がおわかりいただけるだろう。もはや、おにぎりは「おにぎりのような食べもの」、エビフライは「エビフライ風の食べもの」と考えたほうがいい。

こうした食品を「偽装」と言えるかは意見が分かれるところだが、今回の偽装問題を受けて、外食産業各社は、次々とメニュー表示の変更を始めている。たとえば、ファミリーレストラン『ガスト』は、「豚肉の生姜焼き和膳」というメニュー名を「生姜だれ和膳」に変更した。理由は、「店舗で肉を焼いていないから」。『ガスト』を経営する、すかいらーくの広報に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「豚肉の生姜焼きは、確かにセントラルキッチン(企業の調理工場)では焼いているのですが、各店舗では加熱調理(レンジでチン)して提供しています。『店で焼いていないのでは』というご指摘を受けないようにメニュー表記を変更しました」

いまや、ファミリーレストランや居酒屋などの外食チェーン店では、冷凍食品を電子レンジで加熱して提供するのは常識だ。

「入ったばかりのバイトでも、焼き鳥はチンするだけ、サラダも切ってあるものを器に盛るだけでできてしまう。職人がいないからこそ、あんなに安く提供できるのです」(前出・河岸氏)

産地が異なっていたり、実際とは違う材料を記載したりという偽装は正すべきだが、他にも「店舗で作っていないので自家製ソーセージの『自家製』を削除した」「工場で作られた『手巻きロールケーキ』の『手巻き』は消した」などの例は、そこまで神経質にならなくても、という気がしないでもない。前出の中村氏はこう指摘する。

「消費者にとっては、どこで焼いていようが『生姜焼き』には変わりません。『生姜だれ』では、いったいどんな料理なのかわかりにくい。本来、消費者目線で見直さなければならないのに、『取り締まられないように』と行政のほうを向いてしまっていて、本末転倒ではないでしょうか」

どんな工程を経て作られているか、どんな材料を使っているのか、ただでさえ知ることが困難なのに、企業が自己防衛に走るあまり、消費者はますます混乱してしまう。

外食に「本物」が少なくなってきた背景には、消費者が安くて旨いものを求め続けてきた結果という側面もあるだろう。「安くて旨くて健康にいい」なんて都合のいいものは存在しえないということを肝に銘じておくべきかもしれない。

「週刊現代」2013年12月28日号より

 

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