「保守王国」熊本で薄めた自民色 知事選初当選・木村敬氏の作戦

2024.3.24

熊本県知事選で当選が確実となり、支持者の拍手に応える木村敬氏(右)。生まれつき左手に障害がある=熊本市中央区で2024年3月24日午後8時、平川義之撮影

熊本県知事選で当選が確実となり、支持者の拍手に応える木村敬氏(右)。生まれつき左手に障害がある=熊本市中央区で2024年3月24日午後8時、平川義之撮影© 毎日新聞 提供

 24日投開票された熊本県知事選は、いずれも無所属新人で自民、公明両党が推薦した元副知事の木村敬氏(49)が、野党各党の県組織からの自主的な支援を受けた前熊本市長の幸山(こうやま)政史氏(58)ら3人を破った。自民派閥の政治資金パーティー裏金事件で逆風が吹く中、県選出の国会議員を自民が独占する「保守王国」の組織力と、自民色を薄める戦略で事実上の与野党対決を制した。

「永田町のスキャンダルに負けない」

 「自民の推薦について厳しい声ももらった。ただ、『この選挙は熊本の未来を決める選挙。永田町のスキャンダルに負けてはいけない』という訴えが通じた」

 24日夜、熊本市内で開かれた集会。当選確実の報が伝えられた木村氏が強調した。生まれつき左手に障害がある木村氏は、両腕で花束を抱えて喜んだ。

 蒲島郁夫知事(77)の今期限りでの引退表明を受け、木村氏に立候補を要請した自民県連は「公認以上の推薦」(県連幹部)とフル回転で支持固めに奔走。知名度不足を補おうとしたが、「政治とカネ」の問題で自民への批判が強まる中、苦戦を強いられた。

 そこで木村陣営が選択したのが、自民色を薄める作戦だった。

 木村氏は街頭演説などで「永田町の問題と熊本の未来は別だ」と強調。県内各地に張られていた自民議員らと木村氏の2連ポスターは、選挙戦終盤には「投票へ行こう」と書かれたポスターに差し替えられた。

 更に「後継指名はしない」と明言していた蒲島氏も、応援のマイクを握る機会が増加。終盤の22日には、蒲島氏が報道陣の取材に「今こそ私が出て行って、この『強き良き流れ』を止めないで大きくしたい」と木村氏への肩入れを露骨に語る場面もあった。

 ある自民関係者は「自民が前面に立つのではなく、蒲島氏が表舞台に出ることで政党色が薄められた。それらが奏功して木村氏の知名度不足を補え、集票にもつながった」と振り返る。

 対して、立憲民主、共産、国民民主、社民各党の県組織から自主的な支援を受けた幸山氏は「国政に緊張感を与えるためにも勝つしかない」などと自民批判を強めた。元々自民県議だったこともあり、支持の幅を広げようと自身は「オール県民党」であると訴えた。

 24日夜、熊本市内での集会で幸山氏が静かに語った。「ひとえに私の力不足だった」【山口桂子、中村園子、野呂賢治】

 

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