いよいよこの国は無法地帯 脱税・裏金集団が「死の商人」にはシャカリキ(日刊ゲンダイ)
http://www.asyura2.com/24/senkyo293/msg/565.html 2024 年 3 月 08 日


※2024年3月7日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大


紙面抜粋


※2024年3月7日 日刊ゲンダイ2面

※文字起こし


納税義務を果たさない巨額裏金集団に「個人の問題」、予算自然成立確定でもはやニヤニヤ答弁(岸田首相=参院予算委、6日)/(C)日刊ゲンダイ

 自民党派閥の裏金事件をめぐる国会審議は、案の定の堂々巡りに入った。先週末のドタバタ深夜国会を経て新年度予算案が参院に送付され、年度内の自然成立が確実になったものだから、岸田首相は余裕綽々。「消化試合」と言わんばかり。1億総激高でなけりゃおかしい。みな何らかの形で税金を納めている。

 6日の参院予算委員会の質疑で野党のトップバッターに立った立憲民主党の小西洋之議員は、派閥パーティー券の販売ノルマ超過分の還流の経緯や税務上の扱いについて追及。「個人で管理、使用したならば、脱税が生じている可能性がある。確認してみてはどうか」と迫られた岸田は、「個人で受領したものではないと認識するが、詳細は本人が説明すべきで、必要ならば党として必要な実態把握に努める」とのんべんだらり。「自民党の報告書では、個人のお金として使ったとの議員が10人強、個人の銀行口座で管理したとの議員が12人いる」と畳みかけられても、「調査でさまざまな質問をする中で、口座管理などについてさまざまな発言があった。しかし、個人が受領した案件は確認されていない」とスットボケた。

 国民民主党の舟山康江議員からも「個人所得として捉えるべきで、申告納税を促すべきではないか」と指摘されたが、「個人で受け取った例を確認できない以上、納税等を促すという行為は今は考えていない」と馬耳東風。議員が関係する政治団体を通じて派閥から受け取ったカネは、非課税の政治資金との一点張りだった。

 立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏(税法)がこう指摘する。

「裏金事件は大脱税事件でもある。利益率8割前後の派閥パーティーは法人税法が規定する収益事業の興行業に該当し、利益に法人税、法人住民税・事業税が課されて当然。消費税も納めなければならない。議員にわたった裏金は全額が雑所得にあたり、所得税と住民税を課されるべきもの。いずれも所得隠しを承知の上で長年やってきたことですから、偽計行為として過去7年分の課税が筋です。脱税に対する刑事罰は〈10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこれを併科〉で、非常に重い。国税庁はなぜ税務調査に動かないのか。不作為の違法性が問われます。自民党はシラを切って逃げ切ろうという算段なのでしょうが、許してはいけません。政治不信が高まれば投票率が下がり、組織票を固めている自公与党に有利になる。巧妙にそこまで先読みしているとしたら、納税者をとことんバカにしています」

底なしの「政治とカネ」

 猿芝居だった衆院の政治倫理審査会(政倫審)に続き、参院でも14日に実施される予定だ。野党は自民党参院議員31人と、在宅起訴されて離党した大野泰正参院議員の計32人の出席を求めている。8日の審査会で対象を議決し、対象者に出席して弁明するかどうかの意向を確認する運びだ。参院選のある年にキックバックが多かった安倍派議員に経緯などを追及するのが狙いだが、新年度予算案の衆院通過をにらんだ衆院政倫審ですらグダグダだった。お呼びじゃないのにラスボス感を漂わせて出席した岸田に引っ張られる形で、安倍派5人衆の一部や二階派幹部が出たが、全容解明には少しも近づけなかった。事情を最もよく知るとされる森元首相からパージされ、恨み骨髄の下村元文科相が「党判断に任せる」と言い出し、衆院政倫審出席をにおわせたが、「本人の判断」(森山総務会長)、「自分で手を挙げて手続きしてほしい」(浜田国対委員長)などと突き放され、宙に浮いている。

 そうでなくても、自民党の「政治とカネ」をめぐる問題は底なしだ。岸田の闇パーティー疑惑はくすぶり続けているし、党ナンバー2の茂木幹事長には逆マネーロンダリング疑惑が持ち上がっている。関係政治団体から使途公開基準の緩い政治団体に14年間で約4億4000万円を移し、巨額資金を潜らせた疑いだ。茂木派事務総長の新藤経済再生相も同じ手口で10年間で約2億6000万円を付け替えていた。党を挙げたのらりくらりで時間を稼ぎ、ドサクサに紛れて臭いものにフタをしようという魂胆である。

あの敗戦を持ち出し「戦闘機は不可欠」

 いよいよこの国は無法地帯だ。組織的に裏金をつくり、脱税が常態化した犯罪集団が「死の商人」への道をシャカリキに突き進む。防衛装備移転三原則の骨抜きである。岸田政権は昨年末に運用指針を見直し、殺傷能力のある武器輸出解禁に踏み切った。解禁第1弾はライセンス生産する地対空ミサイル「パトリオット」の米国への供与だ。新指針は殺傷能力のある武器について「現に戦闘が行われていると判断される国」を除外するとしているものの、なし崩し。米国を通じ、武器・弾薬不足に苦しむウクライナへの間接供給が懸念されている。それに飽き足らず、日英伊3カ国で開発中の次期戦闘機を含む国際共同開発品を第三国へ輸出しようというのだ。

 5日の参院予算委で公明党の西田実仁議員が「第三国へ輸出できないと共同開発の交渉上、不利になるのか。わが国の防衛にどのような不都合が生じるのか」と問われた岸田は、「直接移転を行う仕組みを持たなければ、国際共同開発・生産のパートナー国としてふさわしくないと認識されてしまう。わが国が求める性能を有する装備品の取得、維持が困難となり、わが国の防衛に支障をきたす」などと答弁。島国である日本への攻撃は「必ず空または海を経由して行われる」と強調し、「戦闘機による防衛能力が徐々に失われた第2次世界大戦で国土全域で甚大な被害が発生してしまったことからも分かるように、戦闘機は平和と安定に不可欠な装備品だ」ともっともらしく言っていたが、なにが「甚大な被害が発生してしまったことからも分かるように」だ。なぜ大規模な戦闘に巻き込まれる前提で話が進んでいるのか。戦後最長の外相在職日数をやたら誇っているくせに外交努力はポイ捨てか。

 三原則の現行ルールは開発相手国への移転しか認めていない。自公は昨年4月にルール緩和に関する実務者協議に着手し、7月には「容認」の方向で論点を整理したが、内閣支持率が急落した11月あたりから政権の足元を見た公明党が慎重姿勢に転換。協議が停滞していたが、岸田答弁を聞いた山口代表は「かなり丁寧にできるだけ分かりやすく説明をしようという姿勢で答弁をされていた」と高評価し、みるみる態度を軟化させた。週内にも3回目の政調会長協議に臨み、着地点を探るとみられている。

存在してはいけない政権

 憲法30条で定められた納税義務を果たさない連中が、これまた平和憲法をなきものにして軍拡ビジネスに動くさまには戦慄が走る。この国は果たして法治国家と言えるのか。

 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。

「主権者国民からすれば、岸田内閣は存在してはいけない政権です。防衛装備移転三原則が骨抜きになれば、同盟国である米国の意向に沿った武器輸出を強いられ、紛争を助長するのは目に見えている。戦争放棄と戦力不保持を明記した憲法9条は捨て去られてしまいます。一方で、国内の軍需産業にとっては金儲けのチャンス到来。主要国と軍事的にも肩を並べたいという自民党政治家の大国願望を満たし、自民党を支援する財界を潤す。岸田首相が新しいことに手を出すごとに、この国は悪くなっていく。平和主義も民主主義も風前のともしび。防衛費倍増による増税に加え、子育て支援で社会保険料引き上げ。国民は負担増ばかりです」

 ドロボーが縄をなうがごとく盗人が政治資金規正法改正を議論する倒錯についてもそうだが、政権に無批判の大手メディアも共犯と言っていい。

「連座制導入、企業・団体献金や政治資金パーティー禁止、政策活動費開示など、自民党に都合の悪いことは付則に盛るのが関の山でしょう。4月実施の衆院3補選で自民党政権を懲らしめ、終わらせる一歩にしなければいけません。大義を前に野党はまとまる必要があるし、メディアも野党分裂を誘う不要報道を抑えて政府の圧力を断ち切らないと、お先真っ暗です」(金子勝氏=前出)

 暗愚暗黒政治の出口を見たい。
 

以下コメント略