中国電力、山口県上関町の3町道整備肩代わり 総工費は数十億円 原発計画の維持狙いか 2024/02/19

中電が整備した蒲井四代線の「長島トンネル」

 中国電力が2008~22年、山口県上関町の求めに応じ、同町の肩代わりをする形で3本の町道を整備していたことが18日、中国新聞の情報公開請求で分かった。総工費は数十億円に及ぶとみられる。大半の用地買収も中電が引き受け、町道一帯の土地約8万7千平方メートルが新たに町の資産となった。巨額の投資や地元優先の工事発注を一手に引き受けることで、同町での原発計画を維持する狙いがあったとみられる。

 電力会社が、公道の大規模な用地買収・整備を直接実施し、自治体に無償で引き渡すのは異例。中国地方整備局用地部は「民間企業がこれほどの公道を整備するのは聞いたことがない」とする。町の要望を受けた「事実上の寄付行為」との指摘があり、電力会社の地域振興の在り方や透明性などについて専門家の見解は割れている。

 同町によると、中電が道路の新設や拡幅、改修などを行ったのは、大河原線・室津志田線(約500メートル)▽四代(しだい)田ノ浦線(約800メートル)▽蒲井(かまい)四代線(約5キロ)。関連する土地も同町に無償で引き渡された。中電が大半の用地を買収し、一部は町が担ったという。

 中電は、3町道の整備費を公表していない。ただ、蒲井四代線内の長島トンネル(396メートル)を含む区間の工事費だけで少なくとも約14億円に上り、総工費は数十億円に達したもようだ。

 町道整備は、上関町が中電に依頼した。町土木建築課は「トンネル工事などに精通した技術職員も足りず、自ら建設すると年月がかかるため中電にお願いした」とする。

 一方の中電は、旧道は狭い上に急なカーブも多く、将来の原発建設に伴う工事用車両の通行のため、拡幅や迂回(うかい)路の整備を検討していたと説明。「地域振興への協力と、建設予定地の維持管理のために必要と判断した」とする。

 中電は、国や自治体などの道路管理者が承認すれば、第三者も公道を工事できる道路法24条を根拠に整備した。ただ、国土交通省は「24条は一般的に、私道と公道が接続する部分の隙間や段差を埋める工事を想定している」と指摘する。

 東京電力福島第1原発事故の後、電力会社による巨額の寄付が「自治体との関係をゆがめる」と批判が高まった。寄付金の電気料金(規制料金)の原価算入は認められなくなり、国は透明性の向上も求めている。

 今回の町道整備について、中電は「地域振興だけが目的ではないため、寄付という会計整理はしていない」と説明。規制料金の原価に含めているかどうかについて「回答を差し控える」としている。

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