小沢一郎氏「大嘘つき」岸田首相が「月額500円弱」と訴えた「子育て増税」のからくりに怒り 2024/02/12

 立憲民主党の小沢一郎衆院議員は12日、自身のX(旧ツイッター)を更新。岸田文雄首相が少子化対策の一環で公的医療保険料に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援金」の国民の負担額を、「粗い試算」とした上で1人平均「月500円弱」と述べたことについて「支離滅裂で意味不明」とバッサリ切った。

「明らかな『負担増』なのに『支援金は負担増には当たらない』と主張する総理。支離滅裂で意味不明。大嘘つき。言葉でごまかし、国民を騙し続ける自民党。許されない」と投稿した。

この国民負担増について、6日の衆院予算委員会で岸田首相を追及した立民の早稲田夕季議員は「ステルス増税」「事実上の子育て増税だ」と、そのからくりを厳しく批判。首相は「歳出改革と賃上げで負担軽減の効果を生じさせ、実質的な負担は生じない」と述べたが、SNSには「おい、事実上の増税じゃねーか、コレ!」「増税を勝手に決めるな」など厳しい批判が相次ぎ、「月額500円弱」はネット上のトレンドワードになったほどだった。

試算では、所得額や加入する医療保険組合によって被保険者の月額の負担額は異なるため、「月額500円弱」ではとどまらず、年間で換算すると、1万円を超えるケースもあるとされる。首相の説明も不十分なままで、小沢氏の指摘にとどまらず、国民の怒りが今後さらに増幅していくのは避けられない。

小沢一郎衆院議員(2024年1月1日撮影)

小沢一郎衆院議員(2024年1月1日撮影)© 日刊スポーツ新聞社

 

 

「子育て支援金」で、ナゼ岸田首相は「負担増なし」と断言できるのか…出てこない「子ども国債」の議論 2024/02/12

財務省の政治家操縦術

今は確定申告で手一杯の人も多いだろう。経費精算のために不可欠なものと言えば、領収書だ。

しかし、政治家は、政治資金と言えば、領収書なしで原則非課税だ。これでは一般納税者の怒りは収まりそうにない。しかも、裏金がバレて政治資金収支報告書で修正さえすれば非課税というのはしゃくに障る。

国税庁は毎年、確定申告前に議員へ向けて「政治資金に係る『雑所得』の計算等の概要」と題する文書を作成しているが、そこには「政党から受けた政治活動費や、個人、後援団体などの政治団体から受けた政治活動のための物品等による寄付などは『雑所得』の収入金額になります」と書かれている。

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photo by gettyimages© 現代ビジネス

であれば、裏金、キックバックは雑所得となるはずだ。もっとも、こうした裏金騒動で、脱税として扱われる案件はあまり聞かないが。

先週の本コラム〈財務省が「自民党大解体」のあとの「ラスボス」だった…!大増税で「デフレ時代に逆戻り」のヤバいリスク〉に関連して言えば、国税庁幹部はほぼ例外なく財務省出身だ。課税処分せずに政治家の弱点を握ったまま財務省の言いなりにさせるのが、財務省の政治家操縦術ではないかと邪推してしまう。

最近、財務省がちょっと乱暴だ。震度7以上の震災では過去に例外なく補正予算で災害復旧費が震災後1ヵ月余りで準備されていたが、今回はないらしい。

その上、「子ども・子育て支援金」も疑問だ。岸田首相は「子ども・子育て支援金」について、健康保険料上乗せ分となり加入者1人あたりの徴収額が「月平均500円弱になる」と述べた。歳出改革と賃上げで実質的な負担増がないとしているが、支援金という方式が妥当なのか。

「負担増はない」となぜ言い切れるのか

かつて自民党若手から子育て支援の財源として「こども保険」の提案があった。

まず「保険」の意味をはっきりさせよう。保険とは、偶然に発生する事象(保険事故)に備えてるために多数の者(保険契約者)が保険料を出し、事象が発生した者(被保険者)に保険金を給付するものだ。

さて、少子化対策はこどもの保育、教育なので、偶発事象(保険事故)はこどもが生まれることになるだろう。保険契約者は公的年金の加入者、つまり20歳から60歳までの現役世代の人になり、被保険者は子育てする人となるだろう。

となると、矛盾がでてくる。子育ての終わった現役世代の人には、偶発事象がまず起こりえない。これらの人は「社会保険」に入るメリットはなく、保険料を取られるだけになってしまう。

いくら保険料でないと強弁しても、今回の健康保険料上乗せ措置はこども保険の別型だ。つまり、負担と給付の関係に齟齬が出てしまうし、現役世代の負担を増やして少子化対策になるわけがない。

子育て支援について本来は税金を財源にしたいが、税金では世間の反発がある。社会保険料では「モロ」で、保険料上乗せと名前を変えて国民から徴収することがバレバレになってしまう。

さらに、国民一人当たりの負担額「月500円弱」はミスリードだ。保険料負担している被保険者一人当たりの負担額について、総理は「分からない」という。歳出改革と賃上げで「実質的な負担増はない」と答弁するが、どうして断言できるのか筆者にはわからない。

「こども国債」の議論は出てこない

各種の試算では、被保険者一人当たり1000〜1500円程度だという。ざっくり現役世代だけで割り算しても同じ数字だ。要するに現役世代の負担をこれほど増やして、子育て支援するというのは冗談にしか聞こえない。官僚機構に吸い上げられて国民に戻す間に中抜きされるおそれもある。

もっとも、政策論からの筋をいえば、少子化対策は、未来への人的投資として考え、国債を財源とするのがもっとも適切であろう。この考え方については、こども国債ということで、かつて本コラムでも解説したが、財務省関係者では知られた考え方だ。

便益が大きく、その効果が長期に及び、十分な資金確保が必要なので、税財源に依存するのは適当でないからで、実は、その考え方は、財務官僚が書いた財政法のコンメンタール『予算と財政法』にも書かれている。

関連するビデオ: 少子化財源 1人あたりの負担は「月500円弱」政府が試算 医療保険料に上乗せ (テレ朝news)

少子化財源 1人あたりの負担は「月500円弱」政府が試算 医療保険料に上乗せ

ただし、投資なので効果が高く、確実なものに絞るべきだ。企業経営の発想からみると、有効な投資であれば借入で賄うはずであり、企業でいえば営業収入である税で賄わないと同じである。支持率が低い政権は何もしないほうが国民のためだ。

もっとも、こども国債という政策論は出てこない。「国債残高が増えると財政が危ない」というプロパガンダがいきわたっているからだろう。

政府は1月22日の経済財政諮問会議で、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の中長期試算を示したが、政府は国と地方の基礎的財政収支の中長期試算で、2025年度の収支について、成長実現のケースでも1兆1000億円の赤字になるとした。この分析が妥当なのか。

財政再建を達成してしまうのがイヤなのか

まず、試算の前提となっているマクロ経済の姿をみてみよう。2022から25年度の名目GDP成長率は、2.3、5.5、3.0、2.8%となっている。それぞれの名目GDPは566.5、597.5、615.3、632.7兆円とされている。

その一方、国一般会計の税収は、それぞれの年度で71.1、69.6、69.6、75.7兆円と不思議な動きになっている。税収は、名目GDPにかなり連動する。23年度について、名目GDP成長率5.5%なのに、税収が69.9兆円と前縁より低下するのは明らかに不自然だ。

しかも、所得税の累進課税などの要因で、名目GDP成長率より高い伸びになることが知られている。経験的には、税収の伸び率は名目GDP成長率の2~3倍程度だ。つまり、税収伸び率と名目GDP成長率の比率を税収弾性値というが、2~3程度だ。ただし、財務省では堅めの見積もりという理由で税収弾性値を1.1とすることが多い。

仮に財務省の言う堅めの税収弾性値を1.1としても、2025年度の税収は中長期試算でも75.7兆円から80.3兆円となり、らくらくPBは黒字化する。もし、税収弾性値が過去の経験則である2.5程度であるとすれば、2024年度にも黒字化になってしまう。

財務省は財政再建が達成できてしまうのがイヤなのか。1月22日、共同通信から「国の債務超過702兆、22年度 15年連続で過去最悪更新」という記事が出た。早速多くの地方紙はこれを転載していた。この記事は、「近く公表する」と書かれており、財務省からの事前リークであると思われる。実際、23日現在で、1年前の2023年1月27日の資料しか公表されていない。

この記事によれば、2022年度末の負債は1442.7兆円で前年度より31.7兆円増加し、債務超過額は702兆円で前年度から15兆円増加と書かれている。

G7トップレベルの健全な財政

この数字は、政府といっても、関連法人を含まない狭義の政府のバランスシートにもとづくものだ。本コラムで繰り返し述べてきたように、政府の財務分析は、民間企業と同様に、連結ベースのバランスシートで見なければいけない。

連結ベースは例年3月末頃に公表される。しかも、IMF等の国際機関で算出されている中央銀行について日本の財務省は除いている。それらを修正すると、連結ベースのバランスシートでは、債務超過ではなく、50兆-100兆円程度の資産超過になる。これは、G7の中でもトップくらいの健全な財政である。

ちなみに、本コラムでは2018年10月15日〈IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する それでも消費増税は必要ですか〉でIMFの分析を紹介したこともある。そこでのデータをアップデートすると、以下の通りで、筆者の試算と同じだ。

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いくら財務省が財政危機と煽っても、国債暴落は起こらなかったのは、客観的な財務分析では健全だとわかるからだ。財務省は、正しい財政の姿を伝えずオオカミ少年になっている。

 

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