自民支持率が“政権交代前”と同水準に…世論調査でわかったいくつもの“異変” JNN世論調査解説 2024/02/10

自民支持率が“政権交代前”と同水準に…世論調査でわかったいくつもの“異変” JNN世論調査解説

自民支持率が“政権交代前”と同水準に…世論調査でわかったいくつもの“異変” JNN世論調査解説© TBS NEWS DIG_Microsoft

今月行われた最新のJNN世論調査で、岸田内閣の支持率は、23.7%。11月に過去最低となった内閣支持率は4か月連続で最低を更新した。不支持率に至っては74.2%でこちらも2か月連続で過去最高を更新。

それだけではない。今回いつもと違う“異変”は自民党支持率も政権発足後、過去最低に。世論調査から見えてくる、いくつもの“異変”を検証する。

(TBS政治部・世論調査担当デスク 室井祐作)

自民党支持率が15年ぶりの低水準 “政権交代前”と同水準に

自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件が発覚して以来、岸田内閣の支持率に上昇の兆しは見られない。

「宏池会(岸田派)の解散を検討している。政治の信頼回復に資するなら考えなければならない」

1月18日。これまで岸田総理を支えてきた麻生副総裁、茂木幹事長に何の相談もなく、総理は自ら率いてきた派閥を解散する意向を表明した。永田町では“岸田の乱”と言う人もいる。支持率が低空飛行を続ける中、“一か八か”の賭けに出たが、結果、それが国民の評価は得られていない。そればかりか、麻生、茂木両氏からの信頼を失い、これまで築き挙げた“三頭政治”は崩壊しようとしている。

内閣支持率が下落し続けていることに驚きはないが、今回の世論調査の“異変”は内閣支持率だけではなく、自民党の支持率も2012年末に自民党が民主党から政権を奪取して以来、過去最低の24.4%となったことだ。自民党の支持率が25%を切ったのは、麻生政権末期の2009年の5月(22.5%)まで遡る。つまり民主党政権へ交代する直前の自民党支持率だ。

ただし、当時と大きく異なるのは、現在、野党第2党の立憲民主党が5%前後で推移しており、自民党を脅かす存在になっていない。当時は自民党と民主党の支持率が拮抗しており、2009年3月に初めて民主党が23.3%で自民党の支持率(22.7%)を抜いた。2009年8月末、政権は交代する。

「青木の法則」“50”を切ったのは3つの政権だけ

内閣支持率が下落しても、自民党の支持率が安定していれば、政権はそれなりに維持できるといわれている。その指標のひとつが、いわゆる「青木の法則」だ。内閣支持率と与党第一党の支持率を足して「50」を切れば、時の政権は危険水域になるという、去年亡くなった青木幹雄元官房長官が提唱した法則だ。

JNN世論調査では岸田内閣発足後、初めて内閣の支持率(23.7%)と自民党の支持率(24.4%)の合計が「50」を切った。

これがどれだけのことか。非自民連立政権後、自民党が政権を奪取した1996年1月の橋本龍太郎総理以降、検証してみたところ「青木の法則」で「50」を切った内閣は、この28年間で3例しかない。

関連するビデオ: 米共和党支持者の半数近く、「法に縛られない大統領」望む=調査(字幕・12日) (Reuters)

米共和党支持者の半数近く、「法に縛られない大統領」望む=調査(字幕・12日)

①1998年10月の小渕内閣(内閣支持率23.2%+自民党支持率25.4%)

②2000年6月の森内閣(内閣支持率22.6%+自民党支持率23.8%)

③2009年7月の麻生内閣(内閣支持率21.6%+自民党支持率27.6%)

そして今回の岸田内閣(内閣支持率23.7%+自民党支持率24.4%)だ。

ちなみに小渕内閣は、政権発足直後の支持率が低く、その後評価が徐々にあがっていくという非常に珍しい内閣で、この「50」を切ったのは政権発足して2か月後の98年10月のたった1回だけだった。「青木の法則」で「50」を切るというのがいかに異例なことかがわかる。

なおJNNの世論調査は過去、携帯電話を調査に加えるなど調査方法を変更したことがあり厳密な比較とはならないことは付しておきたい。

「1時間10万円」支出? 二階氏の「政策活動費」に矛先

岸田内閣の支持率、そして自民党の支持率がともに最低を更新しているのは、今回の「政治とカネ」の問題をめぐる政権と自民党の対応に原因がある。

派閥パーティーにおける収支報告書への不記載に端を発しているものの、とくに5日から始まった本格的な国会論戦で主要なテーマの一つになったのは、それとは直接関係のない「政策活動費」についてだった。「政策活動費」とは政党から直接議員本人に渡される金で、使途を明らかにする必要がない。選挙応援や国会対応などの政治活動に使えば非課税だが、使い切らないと課税対象になるため、野党側は脱税の可能性を指摘している。

とくに歴代最長の幹事長を務めた二階元幹事長が就任していた5年間でおよそ50億円が支出されていたという。現・茂木幹事長も22年におよそ10億円を1年で受けとっていたため、だいたい1年で10億円の支出が「相場」と言えるかも知れないが、あまりに巨額だ。

一般的に政策活動費は「党勢拡大や政策立案、調査研究」のために使用されるということだが、使途公開を迫る野党に対し、岸田総理は「政治活動の自由と国民の知る権利のバランスの中で議論が行われ、現在の法律に至っている」と後ろ向きな答弁を繰り返している。

再三、二階元幹事長に、何に使ったか問い合わせるよう求められても、「確認するまでもなく、適切に使用されているものと認識している」とまるで性善説のような答弁を繰り返す。

「二階(元)幹事長ね、5年間、365日24時間、雨の日も晴れの日も寝てるときも起きてるときも、1時間ごとに10万円。ひたすら政治のためにお金を支出し続けた。あり得ますか。あり得ないですよ」

2月6日。衆議院・予算委員会で答弁に立った立憲民主党の米山隆一議員は、強烈に皮肉った。

5年間で50億円支出することは、平均1時間に10万円を毎日支出し続けなければ到達しないという計算だ。しかし総理は、「全額、政治活動のために支出しているものと認識している」と答弁した。

これほど巨額であっても公開する必要のない「政策活動費」。

今後どうすべきか、今回の世論調査で聞いた。

廃止を求める声は25%にとどまり、使途を公開するよう法改正をのぞむ声が非常に多かった。政策活動費そのものは認めつつ、使い道を明らかにして欲しいというのが圧倒的な民意だといえる。

「塩谷に責任を…」暗躍する森元総理。安倍派幹部の処分の行方は?

収支報告書の訂正作業が一段落し、自民党では安倍派、二階派の裏金疑惑のある議員に対し、党幹部によるヒアリングが行われ、全議員へのアンケート調査も実施されている。

野党、そして国民が求める、いつ、誰が、なぜ、この収支報告書への不記載を指示したのか。その全容解明と再発防止のための法改正が今国会で進むことを期待したい。

疑惑のあった派閥幹部らへの説明を「納得しない」人は89%にものぼる。自民党支持層に限っても81%と、圧倒的多数の国民は納得していない。

派閥幹部らはどう責任をとるのか。

安倍派幹部の責任論が浮上してから、“暗躍”しているのが安倍派のかつてのオーナー、森喜朗元総理だ。

関係者によると、麻生副総裁や茂木幹事長らと会談し、こう要求したという。

「塩谷座長に責任を取らせて辞めさせて、他の安倍派幹部はどうにか許してあげてほしい」

幹部の中には「役職を辞任したのだから…」と、これで責任を取ったのだ、と本音を語る人もいる。安倍派の中堅・若手の中からも「政治家自らが自分の責任について判断すべき」との突き上げが起こるが、彼らが自ら決断する気配はない。

自分たちが判断しないなら、離党勧告処分など自民党が処分を下すべきかどうか。

「処分すべき」と答えた人は65%。自民党支持層に限っても、およそ半数にあたる47%が「処分すべき」だと回答している。

麻生氏の発言の真意は? 上川外務大臣が“ポスト岸田”に急浮上

今回の調査で興味深かったもうひとつの“異変”は“ポスト岸田”レースだ。「自民党の中で岸田総理の次に誰がのぞましいか」について不定期で聞いているが、これまでの上位3位の“常連”は石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境大臣、河野太郎デジタル大臣だった。

しかし今回河野氏を押しのけ、3位に急浮上したのが上川陽子外務大臣だった。

さらに男女別で詳しく分析する。

<男性>

1位 石破茂(22.1%)

2位 小泉進次郎(11.1%)

3位 菅義偉(9.8%)

4位 河野太郎(9.6%)

5位 上川陽子(8.3%)

<女性>

1位 小泉進次郎(17.4%)

2位 石破茂(15.1%)

3位 上川陽子(10.7%)

4位 河野太郎(6.6%)

5位 高市早苗(4.8%)

上川氏はとくに「60代以上の女性」の人気が高く、石破氏(19.9%)に続く2位(15.8%)だった。

上川氏が急浮上した理由は、麻生副総裁の“ルッキズム発言”で注目度があがったからだと見る向きが大勢だ。

「このおばさんやるねと思いながら、こないだニューヨークで会ったけど。少なくともそんなに美しい方とは言わんけれども、間違いなく堂々と話をして、英語ももちろんきちんと話をし、自分で予約から何から、外交官の手を借りなくて、『あー私がやるからいい』と。自分でどんどん会うべき人たちは自分で予約を取っちゃう。そして会うべき人はパッと、1週間の間にニューヨークの国連の総会の後、バタバタとやってるのを見てあーこれは大したものだと、つくづく思いました。あんなことができた外務大臣は今までいません。ぜひそういった意味で、新しいスターが。新しい人が、そこそこ育ちつつあるんだと思いますね」(1月28日・福岡県芦屋町での国政報告会)

麻生氏のこの発言をメディアは一斉に報じ、後日、麻生氏は発言の撤回を余儀なくされた。

この発言の評価はここではいったん置いておいて、麻生氏が「新しいスター」とまで、上川氏を評価したことに注目したい。

ある自民党ベテラン議員は麻生発言を次のように解説する。

「キングメーカーにという思いはあるんだろう。どこまで上川さん推しなのかは分からないけど、総裁候補の一人として保険をかけておく意味はあるんじゃないか」

麻生氏の発言の真意は推し量るしかないが、結果、実に皮肉なことに、上川氏の知名度をあげた。「麻生さんの効果は絶大だった。狙い通りだろう」と分析する声も自民党内から聞こえてくるが、果たして。

ただ麻生氏が“ポスト岸田”の上川氏をこうも持ち上げたことは、「次は岸田を応援しない」との意思表示とも見て取れ、“岸田の乱”以降、ここまで両者との溝が深まったかと感じざるを得なかった。

(JNN世論調査でその他の項目は以下の通り)

●政府の能登半島地震の対応について「評価する」が44%、「評価しない」が43%。

●今後、賃金があがると思うか聞いたところ、「賃金があがる」が35%、「賃金はあがらない」が56%。

●東京地検が安倍派幹部らの立件を見送ったことについて、「納得する」が11%、「納得しない」が78%。

●自民の「中間とりまとめ」について、政治の信頼回復に「つながる」が26%、「つながらない」が67%。

●「連座制」について「導入すべき」が88%、「導入すべきではない」が5%。

●衆院の解散・総選挙の時期について、「出来るだけ早く」が26%、「9月の総裁選より前」が27%、「9月の総裁選の後」が12%、「任期満了まで行う必要がない」が29%。

【調査方法】

JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。

2月3日(土)、4日(日)に全国18歳以上の男女2572人〔固定1021人、携帯1551人〕に調査を行い、そのうち47.4%にあたる1220人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話614人、携帯606人でした。

インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。

より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。

 

TBS NEWSのサイトを見る

【前田敦子】「性暴力と心の傷」という難題に挑む映画公開に…「どんどん奥に入っていける感じ、なかなかない作品」

米・フロリダ州 小型ジェット機が高速道路に墜落 2人死亡

ウクライナ 北東部などにロシア軍が攻撃 10人死亡