裏金、盗人集団・自民党 派閥解消論で誤魔化されたらたまらない(日刊ゲンダイ)
http://www.asyura2.com/24/senkyo293/msg/136.html 2024 年 1 月 19 日


※2024年1月18日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大


紙面抜粋


※2024年1月18日 日刊ゲンダイ2面

※文字起こし


相変わらず当事者感なし(自民「政治刷新本部」、有識者との会合に臨む岸田首相=17日)/(C)日刊ゲンダイ

 自民党派閥の政治資金パーティー収入裏金化事件を受け、岸田首相肝いりとの触れ込みで先週設置された政治刷新本部の会合が17日も開かれた。最高顧問かつ第2派閥領袖の麻生副総裁の訪米を狙いすましたかのように開かれた初回会合、全議員を対象にした第2回に続く第3回は、外部有識者との意見交換という体裁だった。

 出席したのは前東京・三鷹市長の清原慶子杏林大客員教授、元大阪高検検事長の榊原一夫弁護士、クラウドファンディングサービス「レディーフォー」を運営する米良はるか代表、元国税マンの野口光夫税理士、東大大学院の谷口将紀教授(現代日本政治論)、政策提言サイト「PoliPoli」の伊藤和真社長の6人。新潟県津南町の桑原悠町長はリモートで参加した。選挙で自民党の支援を受けていたり、政府の有識者会議のメンバーだったり。自民党寄りの面々がチラホラいるが、派閥解消論や政治資金規正法改正によるパーティー券購入者の公開基準引き下げなどの意見が出たという。

 今後のスケジュールは全議員対象の会合を22日に再度開き、通常国会召集前日の25日に刷新案の中間取りまとめを公表する突貫工事。現職議員が東京地検特捜部に逮捕されるほど悪質なやり方で汚いカネをかき集めてきた最大派閥・安倍派(清和会)の裏金スキームは、森元首相が会長時代の1990年代に立ち上がったとされる。四半世紀にわたる違法な錬金術をテコにカネを配っては議員を寄せ集め、「数は力」を体現してきたのが清和会だ。金額の多寡はあれ、他派閥も手を染めている。それほど根深い問題の解決にあたり、たった2週間でたたき台をつくるなんて、軽率にもほどがある。

派閥も議員も脱税摘発が筋

 そもそも、裏金をめぐる事実関係は判然としない。病巣を把握せずに何をどう刷新するというのか。渦中の安倍派の連中は「捜査中」をタテに説明から逃げ回り続けている。事情をよく知るはずの「5人衆」ら幹部は刷新本部に入っていない。メンバー入りしたのは派閥の作法に唯々諾々と、あるいは喜々として従い、裏金をポッケにいれてきた中堅・若手ばかりだ。

 一方で、雨あられのリーク報道で安倍派を政権中枢から一掃した特捜部は、幹部の立件見送りに傾いているという。司直が腰砕けなのをいいことに、刷新本部の茶番劇で幕引きが図られようとしているが、派閥うんぬん以前になぜ法律違反がお咎めなしなのか。

「全く筋の通らない話です。裏金づくりに関わった派閥、議員ともに無罪放免は許されない。脱税で摘発されなければおかしい」と言うのは、立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏(税法)だ。92年の東京佐川急便事件をめぐり、罰金20万円の略式命令で逃げた金丸信元副総裁を所得税法違反容疑で告発した弁護士らと会見。メディアに配布する説明資料を作成したのが浦野氏だった。その後、金丸は東京地検に逮捕された。

「派閥は法人税法違反、議員は所得税法違反の疑いが濃厚です。政治資金パーティーを主催する政治団体はおおむね『人格なき社団』として取り扱われ、収益事業から生じた所得以外は課税されない。しかし、派閥のパーティーの収益率は9割前後に上り、ほぼ丸儲け。実態からいってイベント興行費に該当しますし、議員の懐に入った裏金は雑所得に区分される。いずれも脱税行為で重加算税を課し、ネコババしたカネの半分を徴収すべきなのです。これは国税庁にしかできない。動かなければ不作為の違法性が問われます」(浦野広明氏=前出)

安倍派を「介錯」したら他派閥へGO

 事実上の前科者集団がルールを話し合うアホらしさ。「派閥」を「政策集団」と言い換えて、いつの間にか議論の本質をすり替える欺瞞。自民党というのは、本当に性懲りもないやからの集まりだ。議員の8割が派閥に所属している。刷新本部の第2回会合後、「安倍派は解散すべきだ。私は派閥に残って、派閥を介錯する、安倍派を介錯するという覚悟を述べた」と威勢が良かった宮沢博行前防衛副大臣にしたって、本気度は極めて怪しい。自民党が政権に返り咲いた2012年に初当選した安倍チルドレンで、選挙は弱い。自前で勝ち抜く地力はない。百歩譲って安倍派の壊滅を見届けたとしても、すぐさま他派閥の門戸を叩くだろう。口先だけ、形だけの派閥解消議論で、盗人集団自民党の犯罪を誤魔化されたらたまらない。

 通常国会で袋叩きに遭うのを回避したい岸田は、規正法改正には踏み込むようだが、内容はショボショボだ。派閥による政治資金パーティー開催を禁止し、パー券購入者の公開基準を現状の20万円超から引き下げる方向で検討しているという。派閥解消は念頭になし。閣僚・党役員人事に合わせて各派から推薦名簿を提出する慣例を見直して党のガバナンスコード(統治指針)に明記し、派閥の会計検査を党で行うことを検討中などと報じられている。「政治とカネ」をめぐる核心とはほど遠い。

資金源を断てば派閥は消滅

 経済界、労働界、学識者の有志でつくる政策提言組織の令和国民会議(令和臨調)は、共同代表4人による声明(11日付)でこう憂慮していた。

〈今般の派閥主導の政治資金パーティーをめぐる疑惑はかつてのリクルート事件としばしば比べられるが、有力政党の政治家や派閥の組織的関与の可能性が指摘されている点で事態はより深刻である。その上更に深刻なのは、支持率が急落しているにもかかわらず、事態の収拾に対する政権与党の側から見るべき方針の提示がなく、政治の機能不全状態が放置されていることである。そして、この与党の危機にもかかわらず、野党が受け皿としての役割を十分に果たしているようには見えないことである〉

 与野党に対し、自民党がリクルート事件発覚後の89年にまとめた「政治改革大綱」を検証した上で、政党改革を含めた「令和版の政治改革大綱」を策定するよう要請。検討するべき課題として、派閥の位置付けや政治資金の監視態勢など「政党のガバナンスコードの確立・強化」、現金による政治資金収受の禁止や政治資金収支報告書のデジタル化といった「政治資金制度の諸改革」のほか、「国会の改革」「選挙制度・選挙運動の点検・評価」の4テーマを挙げている。

 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。

「規正法改正で企業団体献金を全面的に禁じ、派閥による政治資金パーティーの開催を禁止にする。そうすれば、派閥は資金源を断たれ、消滅の道をたどることになる。ここにメスを入れなければ、自民党の悪しき派閥政治は生き永らえてしまいます」

 22年分の政治資金収支報告書によると、6派閥の収入総額は計11億8370万円。内訳で最も多かったのはパー券収入の計9億2143万円で、8割近くを占めた。

「企業団体献金を全面禁止にしても、政党運営に支障はないはずです。共産党を除く国政政党は政党交付金を受け取っている。共同通信の試算によると、24年分の配分は自民党が前年比1億4300万円増の160億5300万円。12年連続トップです。自民党の金権腐敗政治を根絶させなければ歴史は何度でも繰り返します。野党は追及を緩めてはいけないし、それには世論の後押しも必要です」(金子勝氏=前出)

 国会運営をめぐり、自民党は野党に大幅に譲歩。召集日は開会式などを行い、通例の施政方針演説は後回し。裏金疑獄を受けた衆参両院予算委員会の集中審議実施を先行させ、政府4演説は30日にずれ込む異例のスケジュールとなった。だがしかし、日程闘争でちょっと勝ったくらいで野党がイイ気になっていたら、いいようにやられかねない。野党にとっても、通常国会は正念場だ。
 

 

以下コメント略