物流寸断、半導体工場など操業停止…コンビニやスーパーは食料品供給不足の中で営業再開店舗も 2024/01/04

土砂崩れで寸断された道路(3日、石川県輪島市で、読売ヘリから)=佐藤俊和撮影

土砂崩れで寸断された道路(3日、石川県輪島市で、読売ヘリから)=佐藤俊和撮影© 読売新聞

 1日に発生した能登半島地震で、地域の物流網は寸断され、被害を受けたスーパーやコンビニエンスストアといった小売店は相次いで休業した。北陸地方には半導体や電子部品の工場があり、操業できるかが懸念される。政府や金融機関は被災者に対し、支援策を講じている。

■郵便局も

 地震による物流網の寸断は、地域の配送に大きな影響を与えた。

 ヤマト運輸は3日午後5時時点で、石川と富山両県の一部地域で荷物の引き受けや配達を停止している。佐川急便も、石川県の一部地域を発着する荷物の集配を見合わせている。被害が特に大きかった珠洲市や輪島市などでは、影響が長引くことが懸念される。

 日本郵便は3日、石川、新潟両県の一部で、郵便物や宅配便の配達が大幅に遅れているほか、一部の郵便局が窓口業務を休止したと発表した。4日と5日も、石川県輪島市や珠洲市など県内の計7市町にある全ての郵便局で窓口業務を休止する。

■イオン再開

 被害を受けたコンビニエンスストアやスーパーは、食料品の供給もままならない中で、営業を再開した店舗も多い。

 セブン―イレブンは最大約150店舗が休業したが、順次再開し、3日は石川県内の約10店舗が休業を続けている。ローソンは断水などで、石川、富山両県の計9店舗が営業を再開できていない。ファミリーマートは石川県などで35店舗が休業している。

 イオンは震災後、北陸地方の店舗を中心に一部店舗が臨時休業した。避難した人を受け入れた店舗もあったという。2日からは食品スーパーを中心に営業を再開した。営業時間を短くしたり、被害を受けた店舗は仮設の売り場を設けたりして対応している。

 広報担当者は、「被災地のお客様が水やカップ麺といった必需品の買い物に困らないように」と話している。

 農林水産省によると、金沢市中央卸売市場(石川県)では給水管の破損による水漏れなどの被害はあったが、食料品の受け入れや搬送には影響がないという。

■供給網に影響 懸念

 年末年始も操業を続けていた工場の一部は稼働停止を余儀なくされた。余震で工場内の被害が確認できていない例も多い。サプライチェーン(供給網)への影響も心配される。

 東芝は、石川県能美市のパワー半導体の工場で1日の地震発生直後から操業を停止した。建屋の被害はないが、生産設備の被害を確認中で、再開時期は未定だ。日本製鉄もステンレス製品を生産する新潟県上越市の生産拠点で操業を停止中だ。設備の点検を行い、完了し次第、操業を再開するという。

 日野自動車といすゞ自動車が出資するバス生産会社ジェイ・バスの本社・小松工場(石川県小松市)や三菱ふそうバス製造(富山市)では、大きな被害は確認されていない。ただ、部品を供給するメーカーが近くに集積しており、供給網への影響を調べる。

 2007年の新潟県中越沖地震では、自動車部品メーカーのリケンで工場が被災し、国内の自動車各社の生産に影響が出た。北陸地方は、精度の高さが求められる半導体や電子部品の工場も集積しており、製造業全体への影響が懸念される。「余震が続くと生産ラインを動かせず、今後、影響が出る可能性がある」(東芝広報)との声もある。

■企業資金繰りに柔軟対応呼びかけ

 政府などは被災者支援策を打ち出している。財務省と日本銀行は2日、能登半島地震を受け、金融機関に対し、被災者が通帳や印鑑を持っていなくても、本人確認の上で預金の引き出しなどに応じるよう求めたと発表した。

 届け出の印鑑がない場合は母印で応じたり、事情によっては定期預金の期限前の払い戻しにも対応したりすることも求めた。保険会社には、保険証券などを紛失した場合でも、契約内容が確認できれば、保険金の請求案内など、可能な限り便宜を図るよう求めた。

 日本損害保険協会は3日、能登半島地震での被災者の保険料の支払いを7月末まで猶予する特別措置を実施すると発表した。自動車損害賠償責任保険を除く火災保険や自動車保険などの保険料について、最長6か月間支払いが猶予される。

 経済産業省は3日、政府系金融機関に対して、被災した中小企業と小規模事業者の資金繰りについて、柔軟に対応するよう要請した。要請先は日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会で、貸し出しや債務の返済について、各社の実情に応じて対応するよう求めたという。

■ジェットスター 労組がスト中止

 能登半島地震を受け、格安航空会社(LCC)、ジェットスター・ジャパンの労働組合は1日、12月から実施していたストライキの中止を決めた。2日は調整がつかなかった2便が欠航したが、3日に通常の運航に戻った。ジェットスター・ジャパンでは未払い賃金の支払いなどを巡って労使対立が続いていた。ストは1月7日までの予定だった。

■円安一時143円台

 3日の外国為替市場で、円相場は円売り・ドル買いが進み、一時、1ドル=143円台をつけた。東京市場で大方の取引を終えた12月29日午後5時に比べ、1円以上、円安・ドル高となった。米長期金利が上昇し、運用に有利なドルを買う動きが膨らんだ。

 日本銀行は、1月22日と23日に金融政策決定会合を開くことを予定している。市場では地震の影響で、日銀が今年前半にもマイナス金利政策を解除するとの観測が後退したとの見方も出ている。

 東京金融市場は4日から本格的な取引が始まる。

 

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