あおり運転ばかりでパトカー事件が報道されない奇妙さ(植草一秀の『知られざる真実』)
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2019 8 25

 

あおり運転ばかりでパトカー事件が報道されない奇妙さ
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2019
825日 植草一秀の『知られざる真実』

 

道路交通法第38条第1項は次のように定めている。

第六節の二 横断歩行者等の保護のための通行方法
 
(横断歩道等における歩行者等の優先)
 
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。
 
この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
 
他方、緊急自動車の進行については次の定めが置かれている。
 
(緊急自動車等の特例)
 
第四十一条 緊急自動車については、第八条第一項、第十七条第六項、第十八条、第二十条第一項及び第二項、第二十条の二、第二十五条第一項及び第二項、第二十五条の二第二項、第二十六条の二第三項、第二十九条、第三十条、第三十四条第一項、第二項及び第四項、第三十五条第一項並びに第三十八条第一項前段及び第三項の規定は、適用しない。
 
道路交通法第38条は緊急自動車について、
 
「第三十八条第一項前段及び第三項の規定は、適用しない。」としている。
 
第三十八条第一項の前段とは、「車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。」
 
で、緊急自動車については、この規定が除外されるが、後段の「この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」

は適用除外になっていない。8月18日午前10時45分ごろ、東京都千代田区麹町の新宿通りで、警視庁新宿署のパトカーが男児をはねた。4歳の男児は都内の病院に搬送されたが、意識不明の重体だと報道された。時事通信社報道は、「麹町署などによると、現場はJR四ツ谷駅前の交差点。パトカーは赤信号で横断歩道に進入し、青信号で渡ろうとしていた男児をはねた。男児は家族と一緒にいたが、横断歩道を渡る際には1人で歩いていたという。」と伝えた。インターネット上の書き込みに以下のものがあることが指摘されている。「この警察官は児童を跳ね飛ばしたまま走行を続けており、救護義務違反をし、救命措置をしていません。また、全くブレーキをかけていません。ひき逃げした後も走行を続けている悪質警察官。ひき逃げした現場には他のパトカーが到着していますが30分経過しています。緊急走行中でもひき逃げしないで救護義務を履行していればひき逃げされた児童は1分でも早く救命措置が出来ていたはずです。この警察官は厳罰にするべきであり名前公表するべきです。」
 
極めて奇妙であるのが、メディアがこの問題に関する情報を報道していないことだ。
 
あおり運転で男性と女性が逮捕され、大報道が展開されているが、警察車両の事故についてはほとんど報道されていない。事実関係の確認が重要で、インターネット上の書き込みにある「ひき逃げした」「現場に他のパトカーが到着したのが30分後」「男児を跳ねた警察車両の関係者が救護活動をしていなかった」ことが事実であれば極めて重大である。
 
冒頭で紹介した条文は、緊急車両が横断歩道上を歩行していた男児に対して、
 
「当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」という歩行者優先の行動を取る必要があったのかどうかについての法的根拠を示すもの。道路交通法第41条は第38条1項の前段については適用除外としているが、後段を適用除外としていない。つまり、緊急自動車であっても、横断歩道上に歩行者が存在する場合、「当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない」義務がある。
 
緊急自動車がこの義務を果たしたのかどうかが確認されなければならない。
 
また、道路交通法第72条は、「交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」と定めている。
 
重大な犯罪行為が存在した可能性がある。あおり運転報道に目を逸らされることなく、この問題の事実関係を明らかにし、適正な捜査が行われる必要がある。