中小零細はジリ貧…市場が警戒する「マイナンバー倒産」激増

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20151020

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 “マイナンバー倒産”が激増する――。市場関係者が囁き始めた。マイナンバーのスタートは来年1月だが、導入を前にして、すでに廃業を決めた中小企業もあるという。

 

「マイナンバーの利用は『税』『社会保障』『災害対策』の限定ですが、社会保障に関してニッチもサッチもいかなくなる中小・零細が続出しそうなのです。本来、厚生年金に加入しなければならない小規模の事業所が、保険料(従業員と折半)の負担を逃れるため、未加入になっているケースが多い。ところが、マイナンバー導入で加入逃れは難しくなる。収支ギリギリで経営している零細企業にとって保険料負担は重荷です。倒産もチラつくだけに、余力のあるうちに廃業を決めた小売業があります」(証券アナリスト)

 

 国税庁の統計では、厚生年金に加入すべき事業所数は約250万件ある。一方、厚労省統計によると、厚生年金を支払っている事業所数は約175万件。統計の誤差はあるにしても、75万件の開きがあるのだ。

「仮に半数が厚生年金の加入逃れをしていたら30万社以上、1割でも7万5000社です。これだけの企業が負担増を強いられることになります。マイナンバー導入後は加入逃れはできません。もちろん、払うべき保険料ですから、会社側に問題があるのは確かです。とはいえ、倒産件数を急増させかねない不安材料です」(東京商工リサーチ情報本部長の友田信男氏)

 

 市場で危惧される業種は、理容室・美容室、クリーニング店、外食など。

 

「個人経営でありながら、従業員をそれなりに抱えているビジネスが苦しい。臨時雇いの多い建設業も注意が必要」(市場関係者)だ。

 

 マイナンバーは、地道に経営努力を重ねてきた中小零細にも負担を強いる。小規模な会社でもマイナンバーに関わる負担額は20万~30万円といわれ、平均額は100万円強だ。

「倒産に直結するような金額ではなくとも、コスト増は従業員の給与アップを妨げるし、社員の士気にも影響します」(株式評論家の倉多慎之助氏)

 

 マイナンバーの市場規模は1兆円ともいわれる。特需で潤う企業も多いが、一方では「1兆円分の支出」が発生する。その一部を負担しなければならない中小零細企業は体力を奪われるだけだ。

 

 昨年の倒産件数は24年ぶりに1万件を割り込んだが、来年1月以降は間違いなく“マイナンバー倒産”が急増。景気はますます冷え込むことになる。