『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』<福島の現実 捕った魚を出荷できない「宝の海」http://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/2d0f0ab6ed1ad6f118367c2a6b979842

※1回目の紹介

2015-10-13 22:00:00 | 【美味しんぼ】

*『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。1回目の紹介

 

美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲

何度でも言おう。

「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」

これは”風評”ではない。”事実”である。

2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。

「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」

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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介

2 これが福島の現実だ

 出だしがそんなことだったので、私は自分の愛する福島が原発事故にめげず復興していっている様子を描こうと意気込んで、福島取材を始めたのです。

 しかし、実際に福島に入ってみると、その放射線の被害は厳しいものでした。

 新聞、テレビ、雑誌で読んだり見たりするのと、現地で目の前で体験するのとでは大違いです。

 取材を重ねれば重ねるほど、被害の大きさ深さが身にしみてわかってきました。

 捕った魚を出荷できない「宝の海」

 最初に行ったのが、相馬市松川浦でした。

 松川浦は津波で漁港の建物は骨組みだけ残っているものの、周囲の漁協から仕入れた魚介類を加工していた工場すべてが跡形もなく消え去っている、という惨状でした。

 しかし、建物や工場は何とかなる。

 何とかならないのが、目の前の海でした。

 福島で一番価値があったのは、福島から離れた場所ではなく、すぐ目の前で捕れる魚介類でした。

 それを「前浜」とみんなは呼んでおり、福島の前浜で捕れた魚介類は、築地の魚市場でも、特別の売り場が設けられていたそうです。

 福島の海域は、北からは日本海流という寒流、南空は黒潮という暖流がぶつかるところで、世界でも有数の漁場です。

 ところが、原発が流した汚染水によって魚介類が汚染されてしまった。

 放射能汚染された魚介類は捕ることも、売ることも、できません。

 これが、原発周辺だけでなく、福島県沿岸はすべてそうなっている。

 相馬市の漁協「相馬双葉漁協」(相馬と双葉町の漁協が合併して相馬双葉漁協となったのです)では、原発事故以前は、毎日2度入荷があったそうです。

 一度の入荷では、漁協の床が足りず魚がはみだす。それで1日に2回です。

 それも、ヒラメ、アカムツ、キンメなどの価値のある魚が多かったそうです。

 それで、漁協の建物を増築したとたんに、あの大地震でした。

 大地震による津波で施設が破壊されただけならまだしも、肝腎の前浜が放射能汚染で漁業ができなくなった。

 施設の破壊は努力すれば回復することができる。しかし、海の汚染は現在の科学では回復することが難しい。

 現実に、2014年現在、福島の前浜で捕ることができるのは、タコ、ツブ貝などしかなく、あの相馬双葉漁協の繁栄は色あせた昔の夢となってしまっています。

 2012年の11月に訪ねたとき、船だけは津波による賠償で新しくそろいましたが、することといったら、津波によるガレキが海に沈んでいるのを引き上げる、という漁業とは全然関係のない作業しかなく、漁師の皆さんは実に鬱屈していました。

 その時、集まってくれた船頭会の皆さんに「大漁唄い込み」という威勢のいい歌を歌っていただきました。

 これは、事故以前に相馬双葉漁協の皆さんがしょっちゅう歌っていた歌です。福島の前浜は宝の海だから、いつも大漁で、毎日「大漁唄い込み」の日々だったのです。

 このときのことは、『美味しんぼ 福島の真実編2』の第20話に書きました。

 漁もできないのに、私のお願いに答えて「大漁唄い込み」を歌って下さった船頭会の皆さんのあの時の表情を今思い出しても、胸に迫るものがあります。私は、なんという残酷なお願いをしてしまったのでしょうか。

 2014年現在も、相馬双葉漁協の船頭会が「大漁唄い込み」を歌ったという知らせはまだ聞いていません。

 2014年の9月だったか、漁協が試しに網を入れてみたそうです。

 すると、例年の3倍以上の魚が捕れたということです。

 福島の前浜は以前にもまして宝の海なのです。

 しかし、捕れた魚は放射能に汚染されていて、市場には出せません。

 こんな無惨なことがあるでしょうか。

 まるまると肥えて、姿形もよく、食べたら最高の味だとわかっているのに市場に出せない。

 キログラム30ベクレルまで放射能が下がってきた魚もあるが、市場では10ベクレルでも買ってくれないそうです。

 私はそのニュースを呼んで、船頭会の皆さんがどんな思いをしたか、その無念さを察して、本当に口惜しい思いをしました。

※続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/14(水)22:00に投稿予定です。