マイナンバー 自ら法律違反を勧めるマイナンバー担当大臣補佐官
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2015/10/post-6b36.html
2015年10月16日 (金)
『マイナンバー』を担当するとされる内閣府福田峰之大臣補佐官の「私は自分の番号が入ったTシャツを作ろうと思っている。番号を知られても問題がないということを、自ら実践する」とのエコノミスト9月15日号の発言が、話題になっている。
『自治体情報政策研究所のブログ』サイト10月13日付記事のいうとおり、これはもっと大問題になってよい発言である。
福田峰之氏は、同趣旨の発言を、2015年10月2日にも繰り返している。
[マイナンバーが来る!](上)/個人情報漏えいの懸念/国民にリスク説明を
沖縄タイムス2015.10.07
「番号だけ知られたところで悪用されない」。マイナンバーの通知カード発送作業開始を3日後に控えた2日、内閣府の福田峰之大臣補佐官は報道陣を集め、強調した。「番号を書いたTシャツで街を歩いても何もない」と冗談も飛び出した。
どこか1カ所で番号が漏れたら、個人情報が「芋づる式」に漏えいするのではないか-。こんな国民の不安を払拭(ふっしょく)するのが狙いだった。
沖縄タイムス社の記事から転載したが、共同通信の配信記事で秋田魁新報、東奥日報社も同じ記事を掲載している。
自治体情報政策研究所のブログは、同ブログが取り上げた記事では、街中を歩くとの発言がなかったので、慎重に断定を避けているようだが、福田峰之大臣補佐官は、10月2日には、「番号を書いたTシャツで街を歩いても何もない」とまで踏み込んでいる。
これは、完全に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」19条違反だろう。
(特定個人情報の提供の制限)
第十九条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。
ここで提供してはならないとされている、特定個人情報は「個人番号をその内容に含む個人情報」 とされている(2条8項)。
「個人情報」とは、「行政機関個人情報保護法第二条第二項に規定する個人情報であって行政機関が保有するもの、独立行政法人等個人情報保護法第二条第二項に規定する個人情報であって独立行政法人等が保有するもの又は個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)第二条第一項に規定する個人情報であって行政機関及び独立行政法人等以外の者が保有するものをいう。
」(2条3項)
これらの法律にいう「個人情報」とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」である。
結局、平たく言ってしまえば、個人を特定できる情報で個人番号を含むものは、「何人も提供してはならない」ということになる。
(全然、平たくないというお叱りはご尤もである)
問題は、この19条が、本人が自分の特定個人情報を提供する場合まで禁止したものであるのかである。
福田大臣補佐官は、本人が提供する場合には問題が無いと、自信を持っているようだが、同条3号には次の記載がある。
三 本人又はその代理人が個人番号利用事務等実施者に対し、当該本人の個人番号を含む特定個人情報を提供するとき。
これは、特定個人情報の提供の一般的な禁止を解除する条項である。
つまり、本人といえども、特定個人情報(個人識別番号)は、個人番号利用事務等実施者に対して提供する場合を除いて、提供してはならないということである。
これまでの個人情報保護法体系は、あくまでも他人の個人情報の提供を禁止していたのだが、なんと「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」は、本人が自らする場合についても、個人番号の提供を一般的に禁止しているのである。
(その意味では、国民一般に対する義務づけがない、としていた従前のわがブログはやや正確性を欠くかもしれない)
これは、全く新しい範疇の個人情報の創出である。
本人すら思うように扱うことが許されない、個人情報を「特定個人識別番号法」は、作り出している。(こんなものを「マイナンバー」とはよく言ったものである)
いったい、どのような思惑によってそのようなものが作られるのか。
この「秘密」の保有主体は、政府なのか、グローバル企業になるのか、法律自体から見通すことは困難である。
おそらく政府とグローバル企業の醜悪な結合体が、国民本人も自由にできない個人情報を保有し、管理するということになるのだろう。
いずれにしろ、国民は一種の隷属状態に置かれる。
マイナンバー法担当の大臣補佐官ですら、法律を理解せず、自ら法律に違反することを公言する有様である。
こんな法律、守る必要があるのか。
守れ守れと騒いでいるのは、特需に湧く、IT関係、企業法務関係者、人材派遣事業者なんぞであろう。
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担当するトップクラスの人物すら、その本質を理解できない法律が施行されてしまっているのである。
マイナンバー法の廃止の一点でも、野党には、臨時国会の召集を求める理由がある。
(「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。 」(憲法53条第2文)
僕の立場は、社会的な共同関係の崩壊を促進した個人情報保護法の段階から、こうした法制度には反対である。
日弁連が煮え切らぬ声明を出しているのは、多分、利権グループの影響下にあるからだろう。
当連合会は、現行のマイナンバー制度自体が、プライバシー等に対する高い危険性を有しているものであるとして強く反対してきたところである。現状での施行には大きな危惧があるため、本来ならば施行を延期すべきであるが、施行する以上は、上記の諸問題点について速やかに対策を取り、プライバシー等に対する懸念や実務上の問題点の早急な解消を求めるものである。
2015年(平成27年)9月9日
日本弁護士連合会
会長 村 越 進
弁護士業界では、悪法だろうが、何だろうが、飯のタネになればよいと考えるグループの影響が増大している。
TPPなど最たるものである。