東芝3社長、辞任後も車&部屋付きの厚遇 上司に「おかしい」といえぬ社風変わらず…

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産経新聞 921()931分配信

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東芝3社長、辞任後も車&部屋付きの厚遇 上司に「おかしい」といえぬ社風変わらず…

辞任後も厚遇ぶりが話題になった元社長の3人(左から西田厚聡氏、佐々木則夫氏、田中久雄氏)(写真:産経新聞)

 8月下旬、複数の経済誌や週刊誌が東芝の利益水増し問題で引責辞任したはずの西田厚聡氏や佐々木則夫氏、田中久雄氏の歴代3社長が社用車で浜松町の本社に出勤していると報じた。実際、3氏が社内を闊歩する様子も複数の社員に目撃されている。ある週刊誌は西田氏が自宅から社用車に乗り込む姿も掲載。各誌とも問題を引き起こした歴代3社長に、いまだ役員室や社用車を与えていることを批判した。

  この報道について東芝の社員は「3氏に誰もモノが言えず、世間ズレした会社と思われても仕方がない」と嘆く。3氏は問題の責任をとって7月21日付で辞任しており、役職のない身。この“厚待遇”に対して、この社員だけでなく、現役社員やOBからも異論が噴出しているという。

  東芝の広報は3氏の待遇について、「監査法人のヒアリングや、引き継ぎ業務があるため、出勤している」と弁明するが、世間の常識からすれば、理解し難い待遇だ。だが、それよりも大きな問題は、歴代のトップに対し、誰も引導を渡せていないという点だ。

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  一連の利益水増し問題では、歴代3社長が「社長月例」と呼ばれる会議で「チャレンジ」と呼ばれる高い目標を示し、部下に圧力をかけ、組織ぐるみで不正会計を行っていたことが分かっている。

  外部識者らによる第三者委員会(委員長・上田広一元東京高検検事長)は、部下が上司に意見をいえない体質が会社全体に根づき、問題が広がったと調査報告書で結論付けた。

  こうした社内体質を改めることこそが再生の第一歩のはずだが、東芝はかつてのトップに遠慮しているのか、「役員室を出て電車で通ってください」と誰もいえないようだ。それだけ東芝はこれまでのトップが強い権力を持ち、絶対的な存在だったのかもしれない。

  室町正志会長兼社長は8月31日に開いた2015年3月期の連結決算の延期会見で「内部通報が増え、企業風土の改善につながる意識が社員に出てきた」と語ったが、歴代3社長がいまだ社内を闊歩する話を聞く限り、会社が大きく変わったとは言い難い。

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  一方、東芝社内では8月に発表した新たな経営体制についても、本当にこれで再生できるのかとの声が上がっているようだ。経営刷新委員会の議論を踏まえ、東芝は社外取締役の数を従来の4人から7人に増やして、経営監視の強化を再発防止の柱に据えた。

  これらの人事は有力OBで日本郵政社長を務める西室泰三相談役の意向が色濃く反映されている。社長に就任する室町氏は責任を取って辞任する意向だったが、西室氏が強く慰留したため、残留を決めた。

  社外取締役に就任する経済同友会の小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス会長)や、池田弘一アサヒホールディングス相談役、取締役会議長に就く予定の前田新造資生堂相談役も、西室氏の強い要請があったとされる。

  新たな経営陣は、室町氏をはじめ西室氏の意向が通りやすい人物で固められており、「有力OBの関与が強まり、今までと全く変わらない」(東芝元幹部)との指摘もある。

  その西室氏だが、東芝社長のほかに東証社長や日本郵政社長を歴任。今夏も戦後70年談話に関する有識者会議「21世紀構想懇談会」の座長を務めるなど、政財界に顔が利き、東芝社内では「スーパートップ」と呼ばれている。

  西田氏、佐々木氏、田中氏の社長人事も西室氏の了承の上で就任しており、東芝の経営に強い影響力を持っている。今回の問題について、直接関与していないが、「歴代3社長の就任を了承し、創業140年で最大の危機を招いた」(前述の元幹部)と西室氏の責任を問う声も一部に出ている。

  過去のしがらみを抱えたまま、再生を進めても、同じことをまた繰り返すとみている社員やOBも少なくないようだ。

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  9月7日、東芝は2度延期した15年3月期の連結決算を発表した。この日は浜松町の本社で夕方から決算説明会を開催したが、地下の駐車場には、西田氏や佐々木氏、田中氏が使う社用車の姿はなくなっていた。

  東芝広報によれば、3氏は38階にあった役員室をすでに退去し、本社への出勤も減っているという。8月下旬の報道による批判を受けて、自ら退去したのか、それとも誰かが忠告したのか真相はわからない。いずれにしろ、再生に向けて、東芝本社も少し変化の芽が出てきたと信じたい。

  ただ、付け加えておくと、7日夕、本社地下の駐車場には、西室氏の社用車だけがひと際目立つ位置に止まっていた。(黄金崎元)