【原子力空母アンケート】不安と容認が交錯する横須賀~交代配備「知らぬ」半数。情報不足への指摘も

http://ameblo.jp/rain37/entry-12074894814.html

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米海軍横須賀基地への原子力空母の交代配備が102日に迫る中、市民グループ「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」が4カ月間にわたって実施した市民アンケートの結果がまとまった。市民の半数が空母の交代を知らず、原子力への不安も多数を占めた一方で、地元経済などを理由に、配備そのものへの容認論も少なくない。会は「市民は手放しでは歓迎していない」と日米両政府に住民説明会の開催を求めていくが、原発城下町同様、「基地の街」ならではの複雑な住民感情も改めて浮き彫りとなった。

 歓迎はしないが無いと街が困る

 イエス・ノーでは割り切れない。アンケートに寄せられた意見では、〝基地の街〟横須賀の住民たちの複雑な心情が如実に表れた。

40代男性が「地震国日本には危険な原子力空母はいらない」と言えば、10代の男性は「トモダチ作戦に参加したレーガンの母港が横須賀になることを歓迎したい」。横須賀に隣接する三浦市の女性(60代)は「半農半漁で暮らしている。放射能が非常に心配」と書き込んだが、30代の男性は「空母による抑止効果は絶大であり、現時点においては賛成せざるを得ない」と原子力空母配備を容認した。

 「事故やテロ等の際の放射能漏れを制御できるか心配」(70代男性)

 「長年、核持ち込みに反対してきた日本人の思いを全く無視している」(60代男性)

 反対意見はやはり、放射能への不安が多い。「軍港が観光地化されていたりして、市民が原子力空母に対して麻痺している」と指摘した70代の女性もいた。

 一方、賛成意見は安全保障だけでなく、地域経済を挙げる人も少なくなかった。30代男性は「米海軍、空母の街として定着し、横須賀市のシンボルの一つとして成立している」。40代男性は「米軍関係で産業・事業が成り立って助かっている業者は多数ある」と書いた。「観光行政(軍港クルーズ)の目玉の一つとして必要」と賛成した40代男性もいた。

 賛否を明確にできない人も、やはり雇用や地域経済に触れていた。

 「原子力空母の配備に不安はありますが、米軍基地での雇用は大きく、横須賀を支えているのも事実」と書いたのは50代女性。60代女性は「配備を望まないが、基地がある見返りとして国から援助を受けていることを考えると、どちらともいえない」と揺れる心情を書き込んだ。米兵に住宅を貸しているという60代女性は「基地は無い方が良いかもしれないが、それでは生活が成り立たない」と本音を綴った。

 歓迎はしないが無いと街が困る─。原発立地地と同じ構図がここにもある。

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「原子力」への不安は大きいが賛否を問われると

半々…。市民の葛藤が如実に表れたアンケート

 説明会開かぬ行政、情報欲しい住民

 市民アンケートは56日から820日までの4カ月間、横須賀市内の全ての駅頭で聞き取りを実施。それに戸別訪問や郵送、メールなどで寄せされた回答を合わせた計150件を分析した。うち、市外在住者は16.3%だった。

 19日に横須賀市内で開かれた集会で配布された報告書によると、原子力空母が「ワシントン」から「レーガン」に交代することを「知っていた」と答えたのは49.7%、「知らなかった」が50.1%で、ほぼ半数だった。2013年のアンケート(サンプル数1000)では90%が原子力空母の配備を「知っている」と答えていたことから、会では「交代配備に関する情報提供、周知徹底が不足している」と分析する。

 横須賀への原子力空母の配備に対する賛否を尋ねた設問では、「反対」が最も多く49.7%、次いで「どちらともいえない」が36.0%、「賛成」は13.7%にとどまった。「反対」の割合は、男性が44.3%だったのに対し、女性は54.0%と女性が約10ポイント上回った。「どちらともいえない」が3割を超えたことに関して、会の共同代表・新倉裕史さんは「心情は反対だけど、街の経済を考えたり、基地従業員のことを思ったりしてすっきりと反対と言えない。そんな〝横須賀的事情〟が表れている」と話した。「米兵には住宅補助が18万円まで出るので、日本人より高額で住宅を貸せる」(70代女性)という賛成意見もあった。

 米軍や日本政府、横須賀市の安全対策については、46.0%が「不十分」と答えたものの、「わからない」も44.1%に上った。横須賀市は今回、空母交代に関する住民説明会を「同型艦」を理由に開いていない。「市民への周知は全く不十分。万一の事故の時、どこへ逃げれば良いのか、私は知りません」(30代男性)、「情報がまったく入ってこないために分からないことばかり。正しい情報をもっと分かりやすい形で」(20代女性)、「市の危機管理内容を広報紙に記載するなどの努力が足りない」(70代男性)など、行政の周知不足を指摘する意見も少なくなかった。

 「広報よこすか」9月号はマイナンバー制度がトップ項目。原子力空母に関しては、市長や市議会議長が7月、米・ワシントン州で海軍造船所や原子力空母「ニミッツ」を視察した様子が小さく紹介されているだけだ。

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アンケート

猛暑の中、横須賀市内の全ての駅頭で行われた

1万人アンケート。半数が原子力空母の交代を

「知らない」と答えた

 どうなった?船体の放射能汚染

 会は今月17日、吉田雄人横須賀市長にアンケート結果を手渡した。28日には、共同代表の呉東正彦弁護士らが岸田文雄外務大臣やキャロライン・ケネディ駐日米大使宛てに要請書を提出する。

 要請書では、横須賀市民が、決して原子力空母の配備を手放しで歓迎しているわけではないと米側に伝えること、震災直後の「トモダチ作戦」に参加した「ロナルド・レーガン」の現在の放射能レベルがどの程度であるかなど、住民説明会を開くよう米海軍に求めること、原子力艦船に関する事故防災マニュアルについて、原発と同レベルにすることなどを求める。オバマ大統領や米海軍司令部へ手紙を送る意向もあるという。

 主眼となるのはやはり、情報公開と住民説明会の開催。福島原発事故で多量の放射性物質を浴びた「レーガン」の現在の汚染の度合いについても、市民にまったく知らされていない。山城保男市議は「視察で渡米した際は除染の中身や現状について尋ねてくるよう6月議会で吉田市長に求めたが、9月議会での答弁では『質問しなかった』だった」と憤る。同作戦に参加した乗組員のうち3人が亡くなり、200人以上が東電などを相手取って損害賠償を請求。現在も係争中だ。

 外務省は831日、「レーガン」の横須賀入港が102日に予定されていると発表した。「今回の入港を歓迎します」とのコメントも添えたが、地元ではまだ多くの人が交代を知らない。説明会も開かれていない。原子炉が生活空間の近くに存在することへの不安も少なくない。市民グループが猛暑の中で集めた1万を超すアンケートは、決して「歓迎一色」ではないのだ。

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