安保法案可決の参院、振り返れば問題だらけ

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「良識の府」の威厳は完全に失われた


さらに、公述人の水上氏は鴻池委員長の17日の採決について、法律家の立場から疑義を述べている。議事が確認できないため、採決は無効になるのではないか、というのだ。

 

17日の委員会の速記録の未定稿版には、採決の様子が記されている。鴻池委員長の解任動議が否決された後、代理を務めていた自民党側の筆頭理事の佐藤正久参院議員が「速記を止めて下さい」と述べて鴻池委員長と交代。そしてマイクの音声が消されたまま、鴻池委員長の発言は「……」と記録されており、議事録には「発言する者多く、議場騒然、聴取不能」と付記されているのだ。

 

動画もチェックしてみたが、この時は音声が消された状態で、与野党の議員たちが一斉に委員長席に駆け寄っている。その後に音声は復活し、各自の席に付いていた自民党の同委員会の委員たちは何度か立ちあがって万歳したが、鴻池委員長の声は周囲の怒号のためによく聞き取れなかった。

 

つまり、採決が行われたことが記録として残されていないのである。

 

大沼みずほ参院議員が投げ飛ばされた?

 

採決の際には、男女の議員の間で暴力事件もあったようだ。「辞めなさい、暴力」「あなたが叩いたでしょう」というやり取りも聞こえた。報道によると、自民党の大沼みずほ参院議員が民主党議員からはがいじめにされ、投げ飛ばされて負傷したという。

 

安保法案については「成立したからといって、すべてが終わったわけではない。法律を廃案にする立法への取り組みなど、やれることはある。野党にとって正念場は、これからかもしれない」と、楽観視する向きもある。

 

だが「参議院」そのものが負った傷は大きい。衆人環視のもとで、さらした混乱を多くの国民は、冷めた目で見つめていたはずだ。解散がなく6年の任期を与えられる参議院議員は、大局観をもって冷静沈着な議論を行うことを期待されていることは、言うまでもない。にも関わらず、暴力沙汰さえ起こるとは・・・。良識の府であるはずの参院は、完全に威厳を失ったともいえる。この失ったものを取り戻すことは、容易ではないだろう。