この報道番組は財務省の広報なのか?~消費低迷の真の理由を隠す不可解

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GDPのマイナス転落「原因」と「対策」

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消費低迷の真の理由は?

 

46月期のGDP一次速報は年率換算16%減だった。発表当日はNHKでニュース速報として流されるなど話題になった。民放のニュース番組でも取り上げられていたが、日本テレビの『NEWS ZERO』の解説は、その方向と中身が問題だった。

 

エリート官僚の息子である櫻井翔がキャスターとして解説していたが、今回のマイナス成長について、エコノミストはすべて的中していたとの旨を述べ、そのエコノミストの説明を紹介していた。

 

本コラムでは、エコノミストの予想はあてにならないと書いてきた。具体的には、GDP速報発表の3ヵ月前の予想はまったくあてにならない。今回の場合も、3ヵ月前にはプラス予想をしている人も多かった。

 

しかし、8月になって46月期の各種統計が出そろうと、46月期のGDPはほとんど予想できるので、直前の予想は当たるに決まっている。それをわざわざテレビで取り上げたところに呆れた。

 

その解説で、消費と輸出が落ちたという指摘はいい。事実、年率換算16%減は前期比04%減だが、消費減少と純輸出減少の寄与度は、それぞれ04%減と03%減だった。

 

輸出の減少の背景に、中国などの景気後退があるというのもいい。問題は消費減少の理由だ。

 

櫻井翔の解説の後に、財務省出身のメインキャスター村尾信尚が解説したのは、将来不安で消費が伸びないというものだった。消費の低迷の真因は'144月からの消費増税であるのに、消費増税には一言もふれない。その一方で、「将来不安で消費低迷」と、財務省のよく言うセリフそのものを語ったので笑ってしまった。

財務省のわかりやすい魂胆

 

そもそも日本テレビには、'146月に前財務次官で村尾氏と財務省同期の真砂靖氏が日本テレビホールディングスと日本テレビ放送網の社外取締役に就任している。

 

また、「将来不安で消費が伸びない」という言い振りは、'13年秋頃にも多くのエコノミストやマスコミ関係者が語っていた。そのうえで、「将来不安を消すためには消費増税がいい」と推奨。その大合唱の末、'144月からの消費増税が決められ、実行された。

 

その結果、'14年度のGDP成長率は09%減。消費増税を推奨した人たちは増税の影響は軽微と言っていたが、まったくウソだった。

 

財務省が、将来不安で消費が伸びないというのは、'174月からの10%への再増税を目論んでいるから。消費増税で消費が落ち込んだという悪影響を言わずに、再増税への落とし穴になるような解説をテレビで垂れ流すのはあまりに酷いだろう。

 

本コラムでは、'144月からの消費増税の悪影響を予測し、その通りに実体経済が悪くなっていることを書いてきた。消費増税の失敗を取り返すためには財政政策、できれば消費増税の悪影響を除去するためには、消費減税と同じような効果がある減税や給付金政策が望ましいとも言ってきた。

 

財政政策というと財源が気になる人もいるが、心配ない。アベノミクスの円安によって、外債投資をしている外為特会では含み益は20兆円もあるので、それを国民に還元すればいい。そうすれば、増税による可処分所得減少は補われて、消費の落ち込みは避けられ、成長路線に乗るだろう。

 

『週刊現代』201595日号より