2015/04/24 正社員を餌に若者を使い捨てる「ブラック企業」で24歳の若者が過労事故死~株式会社グリーンディスプレイを提訴した母「人間の命を奪うほどの利益優先は許しがたい」

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 ブラック企業による若者の使い捨てが止まらない。

 正社員は安定しているが「長時間労働」。非正規は不安定だが「長時間労働なし」。ブラック企業の登場でこの構図は今、大きく崩れているという。

 2014424日、当時24歳だった渡辺航太さんは、約22時間におよぶ長時間勤務を終えた足での帰宅途中、原付バイクで電柱に衝突。脳挫傷外傷性くも膜下出血で死亡した。

 「求人票に真実が記載されていれば、この会社を選ぶことは絶対になかった」

 航太さんの死亡から1年後の2015424日、航太さんの死亡は長時間労働が原因だとし、母親の渡辺淳子さんが株式会社グリーンディスプレイを相手取り、約1億円の損害賠償を求め、横浜地裁川崎支部に提訴。14時から、弁護士らとともに厚生労働省で記者会見を開いた淳子さんは、涙ながらにこう訴えた。

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▲「亡くなったことが信じられない。今も彼の帰りを毎日待っています」航太さんの母、渡辺淳子さん。厚労省の記者会見で

 記事目次

「正社員募集」に反しアルバイトでの勤務を要求

グリーンディスプレイの求人票はデタラメばかり

求人票の虚偽記載 苦情は8000件近く

NPO法人POSSE・川村氏「ブラック企業の典型的な手口」

 https://www.youtube.com/watch?t=159&v=RlHkPTsYSeI

日時 2015424日(金)14:00

場所 厚生労働記者会(東京・霞ヶ関)

「正社員募集」に反しアルバイトでの勤務を要求

  20133月、東洋大学経営学部を卒業してから、就職難で正社員の職に就けずにいた航太さんは、同年9月、ハローワークで株式会社グリーンディスプレイの求人票を見つけ、これに応募。求人票には「新卒正社員募集・試用期間なし」と書かれていたという。

  正社員での就職にこだわっていた航太さんは、期待に胸を膨らませて面接に臨んだものの、同社は、試用期間として、アルバイト勤務を航太さんに求めた。これを承諾した航太さんは、10月から仕事を開始。しかし、6ヶ月が経ち3月に入っても、正社員の内定を受け取ることはなかった。

  「ずっと非正規就労だったらどうしよう」

  株式会社グリーンディスプレイは、東京を拠点に、百貨店などの草花や観葉植物を装飾している。バレンタインやホワイトデーなど、イベント時には特に忙しくなるといい、早朝にまでおよぶ長時間労働を強いられていた航太さんは、正社員の内定通知が届かないことに不安を募らせていたという。

  20143月半ば、グリーンディスプレイは突然、航太さんに「正社員採用」を口頭で通知。労働契約書が交わされることはなく、長時間労働や深夜勤務が見直されることはなかった。

 グリーンディスプレイの求人票はデタラメばかり

  グリーンディスプレイの求人票はデタラメばかりだった。

  求人票には「マイカー通勤不可」と書かれていたにも関わらず、深夜まで及ぶ長時間労働を強いられていた航太さんは、公共交通機関が止まっている時間帯に帰宅するため、原付バイクで通勤。

  働き始めたばかりの20131021日から翌月17日までの1ヶ月間、航太さんの時間外労働は110時間以上。多い月は130時間を超えていたといい、厚労省の過労死認定基準である「80時間」を大幅に超過していた。

  さらに、亡くなる9日前の415日のタイムカードには「8:00」~「31:00」と打刻され、23時間勤務の実態が記録されている。不規則な長時間労働により、介護職に就く淳子さんとの生活時間もすれ違いがほとんど。話す時間もなくなり、用意した食事にも手をつけなくなったという。明るく前向きな性格の航太さんの表情は疲れ果てていた、と淳子さんは1年前の様子を振り返った。

  そして、424日の朝、勤務途中の電車の中で淳子さんは、航太さんの死を知ることになる。

 求人票の虚偽記載 苦情は8000件近く

  「仕事に向かう移動中の電車で、異常な数の着信が入ったので途中下車をしました。報を聞いた時は、航太は病院から警察に移送されるところでした。『助けてください』『航太はもっともっと生きたいのでお願いします』と携帯電話に向かって叫んでいたのを覚えています。

  とにかく友人の力を借りて葬儀をしました。遺骨になって戻ってきましたが、まだ亡くなったことが信じられません。元気で生きていることを感謝しながら、前向きだった彼の帰りを毎日待っています。

  時間が経つにつれて苦しみは増すばかりです。どうしてこうなったのか。整理しなければいけないと思うようになりました」

IWJ・ぎぎまき)