『頭に来てもアホとは戦うな!』要約まとめ

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日本の成長戦略として「女性の社会進出」が叫ばれているが、管理職に占める女性比率は6.6%と世界的に見ても低く、日本はいまだ男性社会。第一次安倍政権で内閣総理大臣政務官を務めた田村耕太郎氏は、政界の経験から「男の嫉妬より怖いものはない」と語る。会社組織も同じである。ライバルを蹴落とそうとする“アホ”に出くわしたとき、どう対処すべきだろう?

頭に来てもアホとは戦うな! 人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法

頭に来てもアホとは戦うな! 人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法

著者田村耕太郎

価格¥ 1,404(2015/01/02 20:58時点)

出版日2014/07/08

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単行本223ページ

ISBN-104022511982

ISBN-139784022511980

出版社朝日新聞出版

本書が言う「アホ」とは、むやみやたらとあなたの足を引っ張ろうとする人のことを指す。たとえば、会議であなたの発言だけにいちゃもんをつけたり、チームメイトでありながら非協力的であったり、正しい意見であるのに権力でそれを潰そうとしたり、あなたを敵視し、常に妨害しようとする厄介な人である。そんなとき、悔しさで仕事が手につかなかったりするものだが、間違っても「倍返しだ」などと思ってはいけないと著者は忠告する。

元参議院議員の著者は、政界での経験から「男の嫉妬より怖いものはない」ということを学んだ。権力好きが集まった政界は男の嫉妬社会であり、そうした社会では手練手管で権力にすり寄り、ライバルを蹴落とそうとするアホほど出世しやすいという。若き日の著者はそうした先輩や同僚の姿を目の当たりにし、嫌悪感を抱いていた。ときにはアホを論破して成敗しようともした。しかし、真正面から彼らと戦って得られたものは何もなく、かえって一層、難敵となって前途に立ち塞がるだけであることを実感するばかりだった。

そこで気づかされたのが、本来の政治家としての目的だ。たとえどんなに高い志を持っていたとしても、権力の中枢に食い込んで組織を動かしていかなければ、何も実現できない。そう考えたとき、これまで軽蔑していた先輩や同僚が、非難すべき対象ではなく、「清濁併せ呑む」覚悟で目的達成に向けてやるべきことをやっている称賛すべき対象かもしれないと考えるようになった。

アホとの無駄な戦いを繰り広げる人の特徴として、本書では「正義感が強い」「自信にあふれる」「責任感が強い」といった性質が挙げられている。

「正義感が強い人」は、「おてんとうさまは見てくれている」といった時代劇のヒーロー的な勧善懲悪を信じているが、そもそも世の中は不条理なものである。正義は人の数ほどあり、自分の正義が常にまかり通るわけではないのだ。

「自信にあふれる人」は、ついつい相手を論破しようとするものだが、相手から見たとき、これほど屈辱的なことはなく、いらぬ恨みを買うだけでむしろ逆効果である。自信のある人こそ謙虚にすべきだと著者は諭す。

「責任感が強い人」は組織のためを思ってアホと戦いがちだ。しかし、権力にすり寄って生きてきたアホは、権力の中枢に発信力を持っているため、結託されて足を引っ張られることになりかねない。むしろ組織にとって混乱を招くばかりの結果となる。

たとえアホを正そうとしても、すでにいい年になった彼らを正すことは不可能だと著者は指摘する。彼らは若さに対してもっとも嫉妬するのであり、たとえ論破できたとしても、かえってそれが恨みとなり、姑息な手段でリベンジされかねない。そこで著者が薦めるのが、アホの狙いどおり、まんまとやられたフリをして、相手を気持ちよくさせた上で懐に入り込み、自分の目的へと誘導させていこうとする、ある種の政治手腕だ。

アホは周囲に好かれていないことに薄々気づいている。それにめげないくらい彼らの面の皮は厚いが、誰しも心の奥底では人に好かれたいという欲望を持っている。これを利用して、自分の目的を実現させた方がはるかに建設的だとするのが本書の主張だ。著者がこれまでに見てきた成功者は、みな空手ではなく合気道のタイプだったそうだ。正面からの力のぶつかり合いではなく、相手の力を使ってバランスを崩し、自分の有利な体勢に持っていくのである。

人生で一番大事な素養として著者は「忍耐力」を挙げる。たとえ嫌なことがあっても、即座にリアクションを起こさず、まずはじっくり受け止めて、相手の気持ちを理解してみる。すぐにリアクションを起こすと、相手にこちらの「嫌いオーラ」が伝わってしまい、ますます対立関係が深まるばかりだ。まして、すぐに感情的になることは、ビジネス社会では「未熟」として判断され、評価が下がってしまうだけである。

本書の一貫したメッセージは、たった一度の貴重な人生なのだから、無駄な戦いに時間とエネルギーを使うべきではないということ。それよりも、自分が本当にやりたいこと、今、目の前にある仕事に時間とエネルギーを集中投下すべきだとする。孫子の『兵法の兵法』にある有名な一節「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」という非戦の精神を実社会で活かそうという考えだ。

『頭に来てもアホとは戦うな!』3つのポイント

やられたらやり返す「倍返し」は時間とエネルギーの無駄

「嫌いオーラ」を発すると、ますます対立関係が深まる

相手の懐に入り込み、力を利用する合気道の精神

文●大寺