BARの外に出ると、星なんてまるで見当たらない。



さっきまでとは正反対の、ムードの欠片もない酔っ払いだらけが道を行き交う。



隣の彼は足がもつれて歩きにくそうだ。



「やべぇ……。酔っ払った」



俺は彼の腰に手をまわして支えると、耳元で囁く。



「どうしようか」



「なんとかしろよ」



「どうしてほしい?」



「わかってるくせに」



「わかんないから聞いてるんだよ」



「もう一回」



「ふふ」



ビルとビルの間に少しだけすき間がある。



酔っ払いから身を隠すようにそこに入ると、二人密着した形。



BARでの熱はまだ冷めていない。



顔を突き合わせたら、俺の方が背が高い。



俺は彼の背に合わせて、少し身を屈ませた。



「熱いね」



「お前だって」



「唇も熱いのかな」



「試してみただろ」



「身体も熱いのかな」



「試してみろよ」



「もう可愛くないな。ムード足りないよ」



「だって試すの好きだろ?」



「少し歩かない?」