OK Computer

Radiohead「OK Computer」

リリース : 1997年
ジャンル : オルタナティブ・ロック、UKロック

不穏な「Airbag」から始まるレディオヘッドの1997年リリースの3rdアルバム。レディオヘッドがロックを突きつめた作品です。これ以上のものはレディオヘッド自身でも作れないでしょう。このCDは18歳くらいからずっと聴いているアルバムです。このアルバムを聴く前と後ではロックの聴き方が変わりました。ロックの概念を崩されました。ロックの好みが変わりました。実際、イギリスでもブリットポップブームが終わりを向かえた頃にリリースされ、全英1位を記録しました。まぁ、レディオヘッド自体、ブリットポップとは無関係ですが。好き嫌いは別として、UKロックを語るには絶対に避けて通れない作品です。僕のターニングポイントです。

それでは、曲を解説していきましょう。「Airbag」に続く「Paranoid Android」で曲は様々な表情を見せます。演奏も転調ありまくりで複雑。もともと別にあった3曲をひとつにまとめただけあります。歌詞も印象的なものが多いです。「When I am king you will be first against the wall」とか「Kicking and squealing, Gucci little piggy」とか「God loves his children」とか「From a great height」とか。緻密に構成された音もだけど言葉のセンスもずば抜けています。この一曲だけでも満足できちゃうアルバムです。

「Subterranean Homesick Alien」では、ローズピアノとコズミックなギターが印象的。そしてアルバム中最も暗く沈んだ印象の「Exit Music」を経て、曲のラストが最高な「Let Down」へと突入。この「Let Down」は、シングルで出してもいけると思うのは僕だけでしょうか?

そして、あのノエルギャラガーも認めた「Karma Police」。これは歌詞が独特でいいです。誰も思いつかないぜ、こんなの。更にはコンピューターヴォイスによる「Fitter Happier」経て、イギーポップっぽい「Electioneering」へ。

そして「Climbing Up The Walls」では地を這うような絶望が交わり、「No Surprises」では全てを悟ったかのような美しい鉄琴。「Climbing Up The Walls」はリミックスバージョンも好きなんだよなぁ。あのダブっぽい感じ。「No Surprises」はこのアルバムで一番好きな曲です。ちなみに昔ギターで弾き語りしてました。

「Lucky」はこのアルバムじゃ、普通の曲かな。歌詞はポジティヴだけど。そして「The Tourist」ではジョニーの趣味の世界が広がっています(笑)。トムが言うように意識して聴いたらちょっとピンクフロイドっぽくていいと思います。けど最後の最後であのベルの音はいるかなぁ?まぁ、いるんでしょう(笑)。

こうやって見るとバラエティ豊かなように聞こえますが、ちゃんとコンセプチュアルにきれいにまとまっています。当時の矛盾と絶望にまみれた時代とトムヨークの苦悩が詰まったダークな作品です。でもそれだけじゃないんです。その中に優しさや美しさもあります。これこそが人間味溢れる作品じゃないでしょうか。単に同情してメッセージを送るポップソングとはわけが違います。そんなのと比べるだけこの作品に失礼ですが。音のひとつひとつにまで感情がしみ込んでいます。悲しいくらいに。もうどうしようもない運命を背負った言葉がそこにあります。

そういうわけで個々の曲はもちろん、コンセプトアルバムとしても完璧な作品です。ジャケットを含めブックレットのアートワークもいいです。全てが完璧すぎて、レディオヘッドはこのあと、ロックを一度、墓場へと葬りさります(それでも亡霊が付きまとうんですけどね)。それほど完璧なんです。聴いたことない方は是非聴いてみてください。人生変わるかも。だけど、人生ポジティヴでハッピーに生きたい人には、あまりオススメできませんね。