もう、俺には何も残ってなんかいない。
好きだった忍足に「別れよう。」と言われてから
忍跡小説 「さよならなんて言わないで」
少しずつ寒さが肌に染みてくる秋の終わり。
俺は、初めてお前と出会ったあの桜の木の下で、
忍足が来てくれるんじゃないかと思い
降り続く雨の中ずっと待っていた。
だいぶ減ってしまった体重はあれからも加速し続け、
今では細くなった腕が目立つようになっていた。
「俺、跡部の事が好きになってしまったんや・・・。」
日が暮れる前の教室で、初めてお互いの気持ちが通じた日。
そして、忍足の体温が凄く「暖かい」と感じた日。
「俺、景ちゃんが笑ってくれるだけで幸せなんやで。」
そう言って、恥ずかしそうに微笑む忍足の顔が
可笑しくて笑ってしまった日。
それが、今では思い出せないぐらいに歪んでいて。
今思えば、忍足は最初からそのつもりだったのかも知れない。
インサイトを使っていれば、そんなのはとっくに見抜いて
いたはずなのに、何故かそれが出来なかった。
宍戸達に祝福されて有頂天になっていたから、きっと
忍足が飽きて捨てたんだって。
信じたくはないけど、それが現実なんだ。
「・・・・侑士に、会いたい・・。」
雨で冷たくなった手で握り締めていた携帯を開き、
画面を見てみるけれど、着信を知らせる様子も
何もないまま明るく俺を照らすだけだった。
「今すぐ迎えに来て」なんて、もう言えない。
「今すぐ会いたい」なんて、言えない。
それがどれだけ寂しい事なのかを、今になって
実感させられるなんて、思ってもいなかったから。
薄くなっていく意識の中で、あいつの名前すら
呼べないのかと思うと、とても寂しいんだ。
だからせめて。
「夢の中で、名前が呼べるだけで良いから・・・。」
忍足に会わせて欲しいと、祈りながら目を閉じた。
「跡部、何であの桜の木の下に居たのかな・・・。」
涙で濡れた目でポツリと零した言葉は、もう、
跡部には届かない。
雨の中ずっと待ち続けていた跡部は、学校の
庭にある桜の木の下で冷たくなって見つかった。
握り締めていた携帯には、忍足へのメールを
出そうとしていたんだろう内容が書かれていて、
その内容を見た宍戸は、ロビーでずっと泣いていた。
今ここに、忍足が居たらと思う。
けど、忍足は遠い関西にある実家に帰っていて
連絡も出来ないみたいだけど、それでも跡部が
どれだけ苦しんで、どれだけ待ち続けていたのかを
責めてやりたいと言う気持ちでいっぱいだった。
「ジロー・・・。忍足が・・・。」
ロビーに居た宍戸がいつの間にか目の前に居て、
何を言っているのかさえも聞こえなかった。
跡部が死んで、今更になって何しに来たのかも
分からないけど、それでも許す事が出来ない俺は
忍足の居るロビーまで走って行って、思いっきり殴った。
涙で滲む目の前もお構いなしで殴って、跡部の
思いを全部、吐き出してしまいたかったから。
「跡部は、忍足の事が本当に好きだったんだよ!!」
好きなのに、跡部は捨てられた。忍足に。
それがどれだけ悲しくて寂しくて、辛かったのか。
どうして気づいてやれなかったんだろう。
どうしてもっと聞いてやれなかったんだろう。
「堪忍や、ジロー・・。ほんまに堪忍してくれ・・・。」
俺を抱きしめたまま、忍足は謝るだけだった。
みんなにも謝って、それで漸くこの事が終わった。
埋葬された後、みんなが集まった部室で
それぞれが跡部の事を思い出していた。
今でも残されている跡部の遺品は、ダンボールの中。
でも、楽しかった思い出ばかりが浮かんで、
涙は止まる事もなかった。
「跡部、今頃は幸せになってくれてるかな・・・?」
晴れ渡る青空を見上げて、ポツリと言ってみる。
届かないのは分かってるけど、跡部には幸せで居て欲しいから、
今ここで願っているんだよ。
眩しい太陽の下で、跡部が笑っている。
それだけで、俺達は幸せだから。
「・・・ありがと、ジロー。」
そんな声が聞こえた気がして振り向いても、
もう跡部はここに居ないんだ。
前に進む、だけしかないんだ。俺達は。
跡部 景吾と言う、俺達の仲間がここに居た事を
胸に深く刻んで・・・・・・・・・・・・・。
終わり
長くてすみません><:
しかも、訳が分からなくてすみません><:
読んでくれた方、感想をお待ちしております。(無理)
ではでは、今日はこの辺にて。